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A. ヴァラン作 「揺るぎなき信仰の乙女」 「依り恃(たの)むべき乙女」 上智の座なるマリアのカニヴェ (P.-J. カミュ 図版番号不明)

"ELLE a été fidèle jusqu'à la mort - VIERGE FIDÈLE" A. Varin sculpsit, P.-J. Camus, numéro inconnu


113 x 74 mm

フランス  1850年代



 マリアの「フィデリテ」(fidélité) を主題にし、マリアの揺るぎなき信仰に倣うとともに、マリアに依り恃(たの)むべきことを説くカニヴェ。いずれも著名なグラヴール(版画家)であるピエール=アメデ・ヴァラン (Pierre-Amédée Varin, 1818 - 1883) あるいはピエール=アドルフ・ヴァラン (Pierre-Adolphe Varin, 1821 - 1897) が彫った版により、パリの版元ペ・ジ・カミュ (P.-J. Camus) が制作した小聖画です。わが国で言えば江戸時代末期、1850年代頃の作品です。





 カニヴェ表(おもて)面の上半分には、ふたりのケルビム(シェリュバン、プッティ、アンジュロ)に見守られる聖母子を、クール(cœur 心臓、ハート形)の中に描きます。表(おもて)面の最上部には、次の言葉がフランス語で記されています。

  Son cœur est le sanctuaire de la fidélité.  マリアの心はフィデリテの聖所である。


 西ヨーロッパにおける中世以前の聖母子像においては、幼子イエスは聖母の左膝(向かって右側の膝)に座るのが普通です。これは天上に挙げられた聖母が「イエスの右の座」に着いていることを表します。下の写真はフランス南西部ルスキュル=ダルビジョワにあるロマネスクの聖母子像、ノートル=ダム・ド・ラ・ドレシュ (Notre-Dame de la Drèche) のカニヴェで、幼子イエスは聖母の左膝に座っています。


(下・参考画像) ノートル=ダム・ド・ラ・ドレシュのカニヴェ 当店の商品です。




 しかしながら本品の聖画において、幼子イエスは母の膝の真ん中に座り、その様子はあたかも玉座にある王そのものです。幼いながらも王にふさわしい威厳を具えたイエスは、「グロブス・クルーキゲル」(GLOBUS CRUCIGER ラテン語で「十字架付の球体」)、すなわち天地の支配権を象(かたど)る「世界球」を持っています。聖母の両腕は玉座の肘掛のようであり、イエスが座る聖母の膝にはクッションが敷かれているようにさえ見えます。この聖画に描かれた聖母は、イエスという「知恵」を膝に抱く「セーデース・サピエンティアエ」(SEDES SAPIENTIAE ラテン語で「知恵の座」「上智の座」)に他なりません。

 ポントス(黒海南岸)の都市ネオカイサレアの司教であった聖グレゴリウス・タウマトゥルグス (Γρηγόριος ὁ Θαυματουργός, Γρηγόριος Νεοκαισαρείας St. Gregory Thaumaturgus of Neocaesarea, c. 213 - c. 270) は、聖母を「まことのケルビムの座」と呼びました。ケルビム(智天使)は「知恵」の象徴です。本品において、聖母子像の向かって右上に描き添えられたふたりのシェリュバンすなわちケルビムも、本品の聖母が「まことのケルビムの座」、すなわち「まことの知恵の座」「上智の座」であることを示しています。





  「箴言」 8章から 9章、「集会書」 24章において、イエスは「知恵」(SAPIENTIA) そのものとされています。新約聖書では、使徒パウロが次のように書いています。

   知恵と知識の宝はすべて、キリストの内に隠れています。 (「コロサイの信徒への手紙」 2章 3節 新共同訳)

 本品の聖画に描かれたクールは、聖母の心臓です。昔の人は、心臓を「心の座」と考えていました。聖母子像のイエスを「知恵」として、また聖母を「知恵の座」として心臓の中に描いた本品の構図は、聖母の心がイエスという「まことの知恵」に満たされ、イエスという「まことの知恵」にのみ支配されていることを表します。聖母の心はイエスに満たされ、支配されているゆえに、その信仰が揺らぐことはありません。







 金属版インタリオにはグラヴュール(gravure エングレーヴィング)とオー・フォルト(eau forte エッチング)があり、前者よりも後者のほうが格段に楽に制作できます。グラヴュールはたいへんな労力がかかる反面、非常に精緻な表現が可能ですが、カニヴェは画面が小さいゆえに、オー・フォルトを用いても十分に細かい表現が可能です。それゆえカニヴェにおいてはオー・フォルトが多用されます。しかしながら本品においては大面積の部分にグラヴュールが用いられているため、ミニアチュールの精密さがいっそう際立ちます。人物の髪と肌、天使の翼、聖母のヴェール、イエスの衣は、温かみのあるオー・フォルトとポワンティエ(pointillé スティプリング、点描法)が選択されています。

 上の写真において、定規のひと目盛は 1ミリメートルです。人物の顔はいずれも美しく均整がとれており、優しく穏やかな表情に神への信頼が形象化されています。目、鼻、口はいずれも 1ミリメートル未満のサイズで制作されています。


 画面下半分の中央には、18世紀風のロカイユ(rocaille 貝殻状装飾)に囲まれた聖画があり、ゴルゴタの丘に立つ悲しみの聖母(マーテル・ドローローサ)が描かれています。「ヨハネによる福音書」 19章 25節によると、イエスの十字架の許には三人のマリア、すなわち聖母マリア、ヤコブとヨセフの母マリア、マグダラのマリアが立っていましたが、本品の聖画においては聖母ひとりが描かれ、その悲しみを強調しています。聖画の下には次の言葉がフランス語で記されています。

  Elle a été fidèle jusqu'à la mort.  マリアの信仰は死に至っても揺るがなかった。

 その下には、この聖画の主題を示す「ヴィエルジュ・フィデール」(仏 VIERGE FIDÈLE)の文字が刻まれています。「ヴィエルジュ・フィデール」はロレトの連祷にある聖母の称号のひとつで、「信実なる童貞」、すなわち「忠実なる乙女」「揺るぎなき信仰の乙女」という意味です。

 聖画との関連で言えば、ここでいう「死」はイエスの死を指します。ヨハネ以外の弟子たちは、イエスの許から逃げ去りましたが、聖母、ヤコブとヨセフの母マリア、マグダラのマリア、ヨハネはイエスの側(そば)を最後まで離れませんでした。また裏面の祈り (Ah! daignez nous obtenir être toujours à Jésus!) との関連で言えば、キリスト者の鑑(かがみ 手本)であるマリアの信仰は、マリア自身の死に至るまで揺るがなかった、という意味をも表していることがわかります。


 なおフランス語「ヴィエルジュ・フィデール」(Vierge fidèle) は、ラテン語「ウィルゴー・フィデーリス」(VIRGO FIDELIS) を訳したものです。「ヴィエルジュ・フィデール」というフランス語は「忠実なる乙女」「揺るぎなき信仰の乙女」という意味に取れますが、「ウィルゴー・フィデーリス」というラテン語は、「依り恃(たの)むべき乙女」(頼りがいのある乙女)というのが第一義です。日本語の公教会祈祷文は、「ロレトの連祷」の「ウィルゴー・フィデーリス」を、「信実なる童貞」と訳していますが、これは「フィデール」の近代語における意味によって牽引された解釈といえましょう。「頼りがい」と「忠実さ」は無関係ではないので、公教会祈祷文の日本語訳は決して的外れな誤訳ではありませんが、古典ラテン語の本来的意味に忠実に解釈するならば、「ウィルゴー・フィデーリス」は「依り恃(たの)むべき乙女」という意味です。

 「フィデーリス」というラテン語の形容詞は、語根 "FID-" に幹母音 "-E-" と語尾 "-LIS" が付いたものですが、この語の語根 "FID-" は、サンスクリット語 "bandh-"(結合する)、あるいは "bindh-"(望む)に対応すると考えられています。ラテン語 "FID-" がサンスクリット語 "bandh-"(結合する)に対応するとすれば、「フィデーリス」はラテン語「ファスキス」(FASCIS 束棹)や「フォエドゥス」(FOEDUS 同盟、協約、規則)と語根を共有することになります。ラテン語 "FID-" がサンスクリット語 "bindh-"(望む)に対応するとすれば、「フィデーリス」は、いずれも「(時が来るのを)待つ」「留まる」「望む」を意味するゴート語「ベイダン」(beidan)、古高ドイツ語「ビータン」(bītan)、古英語「ビーダン」(bīdan 現代英語 bide)と語根を共有することになります。つまり、「フィデーリス」の語根に関するいずれの説が正しいとしても、「結びついて頼るべき乙女」、「期待して頼るべき乙女」というのが、ラテン語「ウィルゴー・フィデーリス」の原意です。ラテン語におけるこの原意を理解すれば、カニヴェ裏面に書かれた祈りの内容がよくわかります。





 聖画の解釈に戻ります。カニヴェ下半分の中央に描かれたゴルゴタの光景は、神とイエスに対する聖母の忠実さ、信仰の堅固さの象徴でした。これに対して両隣には、ラテン語「フィデーリス」の原意を反映し、地上を歩む人々にとって、聖母が如何に頼れる存在であるかを象徴的に表す絵が描かれています。

 ゴルゴタの絵の隣、向かって左側に描かれているのは、「聖書」のシーンではなく、テーセウス (Θησεύς) とアリアドネー (Ἀριάδνη) の姿です。 アテーナイ (Ἀθῆναι) と敵対するクレタ島の王ミノース (Μίνως) は、アテーナイとの講和の条件として、アテナイが7人の少年と7人の少女を、怪物ミーノータウロス (Μῑνώταυρος) の生贄としてクレタに送ることを要求します。テーセウスはミーノータウロスの生贄としてクレタに送られた7人の少年の一人でしたが、ミノースの娘アリアドネーはテーセウスを愛し、ミーノータウロスが棲むラビュリントス(λαβύρινθος 迷宮)から帰還できるように、糸の玉を渡します。ミーノータウロスを退治したテーセウスは、アリアドネーの糸玉のおかげで、ラビュリントスから外の世界に無事帰ることができました。

 ゴルゴタの絵の隣、向かって右側には、「サムエル記上」19章において、ダヴィデを窓から逃がすミカルが描かれています。イスラエルの王サウルは、部下である若者ダヴィデが全国民の人気を一身に集めるのを見て疎ましく思い、脅威にも感じて、ダヴィデ暗殺を試みます。イスラエルの敵ペリシテ人との戦闘においてダヴィデを戦死させる試みが失敗した後、サウルは自宅で就寝中のダヴィデを使者に見張らせ、朝に殺させようとしましたが、ダヴィデを愛してその妻となっていたサウルの娘ミカルは、夜のうちにダヴィデを窓から逃がしました。

 これら二つの絵が指し示すのは、地上を旅するキリスト者の助け手なる聖母の姿です。アリアドネーはテーセウスに糸玉を渡して導き、テーセウスはラビュリントスから無事生還できました。それと同様に、キリスト者が陥穽(かんせい 落とし穴)に満ちた地上を歩むとき、聖母はキリスト者を導いて、永遠の命に至らせ給います。怒れるサウロに殺されるはずのダヴィデを、ミカルは窓から逃がしました。それと同様に、裁かれるはずの罪びとを、聖母は神とキリストの義なる怒りの前に執り成し給います。

 このように見ると、カニヴェ下半分の三つの絵は、中心の聖画が「神とイエスに忠実なる聖母」を、両隣の聖画が「依り恃(たの)むべき聖母」を、それぞれ表していることがわかります。聖母に見られるこれらふたつの属性は「フィデール」(fidèle) という言葉のうちで一体になっており、三つの聖画は「ヴィエルジュ・フィデール」(Vierge fidèle) という共通の画題を与えられています。




(上・参考画像) ピエール・オーギュスト・コット 「ル・プランタン」(「春」) ピエール=アメデ・ヴァランによるグラヴュール


 聖画の左下に「A. ヴァラン S」(A. Varin s) の署名があります。A. ヴァランはグラヴール(graveur エングレーヴァー、版画家)の名前、"s" は「スクルプシット」(SCULPSIT) の略記です。「彫る」という動詞は、ラテン語辞典の見出しに載っている語形(直説法現在能動相一人称単数形)で「スクルポー」(SCULPO) といいますが、「スクルプシット」はその完了形(直説法完了能動相三人称単数形)で、「彫った」という意味です。版画作品にグラヴールの名前を示す場合、グラヴールの名前の後ろに "s.", "sc.", "sculpt", "del."(DELINEAVIT の略)を添えます。

 ヴァラン家は 15世紀から続くフランスの版画家の家系です。本品を制作した「A. ヴァラン」(A. Varin) は、ピエール=アメデ・ヴァラン (Pierre-Amédée Varin, 1818 - 1883) またはピエール=アドルフ・ヴァラン (Pierre-Adolphe Varin, 1821 - 1897) のいずれかです。この二人と末の弟ウジェーヌ・ヴァラン (Eugène Varin, 1831 - 1911) は、いずれも 19世紀フランスにおける第一級のグラヴールです。


 聖画の右下には「パリ、ペ・ジ・カミュ」(Paris, P.-J. Camus) と記されています。「ペ・ジ・カミュ」(Librairie Catholique de P.-J. Camus, rue Cassette 20, Paris) は、カトリック系の出版及びメダイユの発行を手掛けていたパリのエディトゥールです。


(下・参考画像) ペ・ジ・カミュによるメダイ 「御身は民の誉れにてまします」 無原罪の御宿り オーストラリアからの奉献の初穂 1854年12月8日 29.6 x 21.1 mm 当店の販売済み商品




 本品の制作年代は 1850年代頃ですが、ゴルゴタの絵は 18世紀風のロカイユに囲まれており、年代的なずれを生じています。これは本品の版画が 18世紀の作品を複製しているからです。すなわち、ヨーゼフ・セバスティアン・クラウバー (Joseph Sebastian Klauber, c. 1700 - 1768) とヨハン・バプティスト・クラウバー (Johann Baptist Klauber, 1712 - c. 1787) の兄弟は、優れた版画家であるとともに、18世紀のアウグスブルクにおける最大の出版業者でもありましたが、クラウバー兄弟の作品のひとつに「ウィルゴー・フィデーリス」(VIRGO FIDELIS ラテン語で「依り恃むべき乙女」)という作品があり、A. ヴァランによる本品は、クラウバー兄弟の作品を彫りなおしたものなのです。下にクラウバー兄弟の「ウィルゴー・フィデーリス」を示します。





 同じ作品をわざわざ彫りなおした背景には、カニヴェの位置づけの変化があります。カニヴェ制作はもともと修道女の信心業でしたが、1830年代に版画と型による裁断を使用する方法が考案されると、カニヴェ制作はプロのエディトゥール(版元)の仕事になり、フランス社会に広まりました。高く評価されたクラウバー兄弟の「ウィルゴー・フィデーリス」をフランスに移し、半ば規格化されたカニヴェのサイズに刷ろうとすれば、版から彫りなおすしかなかったのです。

 これに加えて、版の材質の問題もあります。クラウバー兄弟の「ウィルゴー・フィデーリス」はコッパー・エングレーヴィングであり、版の材質が柔らかい銅板であるために、版は既に磨滅して、19世紀の時点では保存されていなかったと思われます。その後、1821年になって、イギリスのエングレーヴァー、チャールズ・ウォレン (Charles Warren, c. 1766 - 1823) が、理想的なインタリオ用スティール・プレートの開発に成功し、これ以降の金属版エングレーヴィングには鋼板が使われるようになります。したがって 1850年代頃にA. ヴァランが制作したこの作品は、コッパー・エングレーヴィングではなく、耐久性に優れた鋼板によるスティール・エングレーヴィングなのです。





 裏面には聖母に執り成しを求める祈りがフランス語で記されています。内容は次の通りです。日本語訳は筆者(広川)によります。フランス語テキストの正確な内容を、こなれた日本語に直したため、逐語訳にはなっていません。

     Oh! que ce titre de Vierge fidèle caractérise bien celle qui fut toujour si fidèle au Seigneur, si fidèle à tous ses devoirs, à la grâce, à la volonté du ciel, jusque dans une de ces circonstances extrêmes où l'on serait naturellement porté à pardonner au cœur d'une mère de succomber à la douleur !
   あぁ。「揺るぎなき信仰の乙女」というこの呼び名が、如何にふさわしいことであろうか。母の心が悲しみに負けても仕方がない、と自然に思われる極端な状況のひとつに至っても、主にかくも忠実であった御方には。また、自らの義務と、恩寵と、天の意思にかくも忠実であった御方には!
     O Marie, vous avez toujours montré envers Dieu sur la terre une fidélité parfaite. Vous l'avez toujours montré de même du haut du ciel, envers les hommes qui, depuis plus de dix-huit siècles, n'ont cessé de trouver en vous, après Dieu, le plus doux et le plus sûr asile.
   マリアさま。御身は地にある神に対して、完全なる忠実さを常に示し給いました。また同様に、御身は人々に対して、18世紀以上の長きに亙り、天の高き所から、変わらぬ頼りがいを示し給いました。人々は、最も甘美であり、最も確かな避け所を、神に次いで御身のうちに、常に見出してきたのです。
     Oui, vous leur êtes fidèle d'une maniére incomparablement supérieure à toute obligeance humaine, à tout dévouement humain : à peine est-il permis de se souvenir, devant vous, de la fidélité de Rahab qui sauva les envoyés d'Israël, ou de Michol qui, pour sauver son époux, ne craignit pas de s'exposer au ressentiment de son père.    御身は人々にとって、常に依り恃むべき御方であり給う。その頼りがいは、人の為し得る如何なる厚意にも、如何なる献身にも勝ります。ラハブはイスラエルの使者たちを救いました。ミカルは夫を救って、父の怒りに身を曝すことを恐れませんでした。しかし彼女らの忠実さと頼りがいを思い浮かべても、御身を前にすれば、比べるべくもありません。
     Ah ! daignez nous obtenir d'être toujours à Jésus.    あぁ。我らが常にイエスのものであることを、畏くも得させ給え。
         
     VIERGE FIDÈLE, PRIEZ POUR NOUS !   神とキリストに常に従う乙女、また依り恃むべき乙女よ。我らのために祈り給え。
         
    P. -J. CAMUS, rue Cassette, 20.    ペ・ジ・カミュ カセット通り 20番地



 ラテン語「フィデーリス」の第一義は「頼りになる」という意味であって、「忠実な」という意味は本来の中心義でないことを先ほど示しました。フランス語「フィデール」においては、人に対して「忠実な」、という意味がむしろ中心義となっていますが、「頼りになる」というラテン語の原義は、フランス語「フィデール」にも残っています。すなわち測定結果が「フィデール」である、といえば、信頼性が高いという意味ですし、「オート・フィデリテ haute fidélité」(英 ハイ・フィデリティ high fidelity)といえば、高度な信頼性・正確さという意味です。

 フランス語「フィデール」には、「神と人に対する忠実さ」と「頼りがい」という二つの意味が一体となって含まれています。このカニヴェの主題を正しく理解するためには、ラテン語「フィデーリス」(FIDELIS) の原意と、フランス語「フィデール」(fidèle)、「フィデリテ」(fidélité) が持つ意味の広がりを知る必要があります。

 フランス語「フィデール」(fidèle)、「フィデリテ」(fidélité) が表すふたつの観念、「忠実さ」と「頼りがい」を、日本語において一語で表すことは難しいので、上の訳文では止むを得ず、必要に応じて二つの訳語を併記しました。





 本品が制作された 1850年代のフランスでは、皇帝ナポレオン三世の下で政治的安定期に入り、カトリック信仰が復興しました。表(おもて)面においてキリストを「知恵」、聖母を「上智の座」とし、裏面の祈りにおいて「常に変わらぬ忠実なる聖母」に救いを求めるカニヴェの内容は、信仰深いキリスト者にとっていつの時代にも変わらぬ指針を示すとともに、この時代のフランスらしい保守的心情、安定を求める志向をも反映しています。

 本品はおよそ 160年前に制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず良好な保存状態です。下の方に水濡れ跡がありますが、目立つ汚れではありません。聖画部分に傷みは無く、カニヴェを取り巻く切り紙細工にも傷み、破損はありません。良質の中性紙に刷られているため、酸性紙のような変質、崩壊は今後も起こりません。インタリオの名手 A. ヴァランが19世紀に甦らせたクラウバーの版画は優れた出来栄えで、美術品の水準に達しています。

 なお上の写真は額装の一例で、マットにはベルベットを張っています。この額は木製で、価格は 6,800円(マット、ベルベット、工賃、税込)です。サイズは縦 18センチメートル、横 14センチメートル、縁の厚さ 1.6センチメートルです。





カニヴェの価格 21,800円 (税込、額装別) 販売終了 SOLD

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