嫋やかな十三歳の少女マリア メダイユ・ミラキュルーズ 不思議のメダイ 信仰が活きていたフランスの美しい作例 25.4 x 14.0 mm


突出部分を含むサイズ 25.4 x 14.0 mm

フランス  1920年代頃



  1910年代または 1920年代にフランスで制作された不思議のメダイ。本品の聖母マリアは、あどけなさが残る愛らしい少女の姿で表されています。





 メダイ表(おもて)面には、蛇を踏みつけて球体の上に立つ無原罪の御宿りをあしらいます。足元の雲は聖母が天上なるレーギーナ・カエリー(羅 REGINA CAELI 天の元后)すなわち勝利の聖母であることを表しています。聖母の両手に嵌めた指輪からは恩寵の光が発出し、雲を貫いて地上を照らしています。聖母に執り成しを求めるフランス語の祈りが浮彫を取り囲んでいます。

  Ô Marie conçue sans péché, priez pour nous qui avons recours .à vous.  罪無くして宿りたまえるマリアよ、御身に頼るわれらのために祈りたまえ。




(上) フレデリック・ヴェルノン作プラケット 「エヴァ」 79.3 x 29.9 mm 最大の厚さ 5.2 mm 重量 75.0 g フランス 1976年 (1905年の復刻) 当店の商品です。


 悪魔は蛇の姿を取ってエヴァを誘惑し、善悪を知る木の実を食べさせました。このことを知った神は、蛇に向かって次のように言っておられます。

  お前と女、お前の子孫と女の子孫の間に / わたしは敵意を置く。/ 彼はお前の頭を砕き、/お前は彼のかかとを砕く。(「創世記」 三章十五節 新共同訳)


 神のこの言葉を踏まえ、蛇の支配を受けず、その身に罪を帯びない無原罪の御宿りは、蛇を踏みつける姿で描かれます。本品においても聖母は被造的世界を表す球体上に立ち、足下に蛇を踏みつけています。

 神がお創りになった被造的世界の完全性はエヴァの罪によって破られましたが、マリアはメシアを産むことで、世界の完全性を回復しました。「エヴァ」(ハワ)はヘブライ語で「生命」という意味です。聖母は生命を与える「新しいエヴァ」です。「アヴェ、マリス・ステーッラ」(羅 AVE, MARIS STELLA 「めでたし、海の星よ」)では、「かの言葉『アヴェ』ガブリエルの口から与えられし御身よ。エヴァという名をアヴェに変え、平和のうちに我らを憩わせたまえ」(羅 SUMENS ILLUD AVE GABRIELIS ORE, FUNDA NOS IN PACE, MUTANS EVAE NOMEN)と謳われています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。マリアの顔は直径一ミリメートル強の円内に収まりますが、目鼻立ちは美しく整い、綻(ほころ)ぶ口元には、心からの喜びが花咲くような微笑みとなって浮かんでいます。薄絹の衣を通して見えるマリアの胸、腹、太腿は、女性らしい体の丸みが露わになっています。顔にはあどけなさが残るマリアですが、心と身体は若いながらも成熟し、救い主の母となる準備が整っています。


 十六世紀後半から十七世紀前半にかけて活躍したマニエリスムの画家フランシスコ・パチェコ(Francisco Pacheco del Río, 1564 - 1644)は、ベラスケス(Diego Velázquez, 1599 - 1660)とアロンソ・カノ(Alonzo Cano, 1601 - 1667)の師にあたります。 パチェコの娘フアナ(Juana Pacheco, 1602 - 1660)はベラスケスと結婚しています。パチェコの著書「絵画の技術 ― 古来の方法とその卓越性」("Arte de la pintura, su antigüedad y su grandeza", Sevilla: Simón Fajardo, 1649)は画家の没後にセビジャで出版されましたが、絵画に描かれる「無原罪の御宿リ」の容姿や年齢について、パチェコは同書で次のように述べています。日本語訳は筆者(広川)によります。文意を通じやすくするために補った語は、ブラケット [ ] で囲みました。

      Sin poner a pleito la pintura del Niño en los brazos, para quien tuviere devoción de pintarla así, nos conformaremos con la pintura que no tiene Niño, porque ésta es la más común...     両腕に幼子を抱く聖母を我々が描くのは、抱かれる幼子への信心ゆえである。[それゆえ聖母とともに]幼子を描くことに、我々は反対するわけではない。聖母は幼子を抱いて描かれる場合が最も多い。
      Esta pintura, como saben los doctos, es tomada de la misteriosa mujer que vio San Juan en el cielo, con todas aquellas señales; y, así, la pintura que sigo es la más conforme a esta sagrada revelación del Evangelista, y aprobada de la Iglesia Católica, la autoridad de los santos y sagrados intérpretes y, allí, no solo se halla sin el Niño en los brazos, más aún sin haberle parido, y nosotros, acaba de concebir, le damos hijo...     [しかしながら]学識ある人々が知っているように、[単身の聖母を描いた]この絵は、福音記者聖ヨハネが天国で見(まみ)え、彼(か)のあらゆる印を有する神秘的な女性を描いたものである。それゆえ私が範とする絵は、福音記者に示されたこの聖なる啓示に最も合致しており、カトリック教会、諸聖人の権威、及び聖なる学者たちに是認されているのであって、両腕に幼子を抱いていないのみならず、未だ幼子を産んでいない。この女性は懐妊したばかりであり、我々は彼女に一人の息子を与えるのである。
      Hase de pintar, pues, en este aseadísimo misterio, esta Señora en la flor de su edad, de doce a trece años, hermosísima niña, lindos y graves ojos, nariz y boca perfectísima y rosadas mejillas, los bellísimos cabellos tendidos, de color de oro; en fin, cuanto fuere posible al humano pincel.     それゆえに、いとも清らかなるこの神秘のうちにあって、最も美しい年齢である十三歳の聖母を描くことが必要なのである。十三歳の聖母は誰よりも美しい少女であり、その眼は澄んでいて軽はずみなところが無く、鼻と口は完璧な形である。頬は薔薇色で、最高に美しい髪は長く、金色であり、つまりは人間の筆で描ける限り[の美しさでなければならない]。
         
     「絵画の技術 ― 古来の方法とその卓越性」 セビジャ、シモン・ファハルド書店 1649年    "Arte de la pintura, su antigüedad y su grandeza", Sevilla: Simón Fajardo, 1649


 聖母像はマリアの精神的成熟を反映し、ほとんどの場合、実際よりもはるかに大人びた姿に描かれます。しかしながら本品のメダユール(仏 médailleur メダイユ彫刻家)は古い伝統に回帰し、マリア像に愛らしい少女の表情を与えています。





 裏面には "M I" と十字架のモノグラム(組み合わせ文字)を大きく刻み、その下にイエスの聖心聖母の聖心を浮き彫りにしています。"M I" は「マリア・インマクラータ」(MARIA IMMACULATA 無原罪のマリア)のイニシアルです。イエスの聖心はの冠に囲まれて血を流しつつ、人に対する愛の炎を燃やしています。ロサーリウム(薔薇の花輪)に取り巻かれた聖母の聖心は、悲しみの剣で貫かれて血を流しながら、神とイエスに対する愛の炎に燃えています。これらの図像全体を、十二個の星が取り囲んでいます。

 本品の制作年代は第一次世界大戦を間に挟んだ 1910年代末から 20年代頃ですが、これは第一次世界大戦直後の時期に当たります。優しい眼差しをフランスに注ぐ聖母のメダイユには、平和を願う真摯な気持ちが籠められています。





 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真よりもひと回り大きなサイズに感じられます。

 「不思議のメダイ」はさまざまな彫刻家やメダイユ工房によって、これまでに数多くの種類が制作されています。本品の特徴は少女マリアの愛らしい表情と、生身の女性を目の当たりにするような身体表現です。マリアがまとう薄い衣の下には、信心具の彫刻とは思えない嫋(たお)やかで艶(なま)めかしい曲線が隠れています。本品の浮き彫りを制作した芸術家は、いったん作品を作るとなれば、できる限り美しく作らざるを得なかったのでしょう。

 小さな工芸品であれ、実用性を有する信心具であれ、大型の芸術作品と同様の出来栄えを目指すのが、彫刻家の良心です。「無原罪の御宿リ像は、人間の筆で描ける限りの美しさでなければならない」というパチェコの考えは、本品の浮き彫りにそのまま形象化しています。そのような意味で、本品は芸術の国フランスに如何にもふさわしいメダイであると言えましょう。





 本品はおよそ九十年前にフランスで制作された真正のアンティーク品です。九十年前のフランスでは、日常生活の中に信仰が活きていました。そのような時代に作られた本品は、真摯な祈りが籠められた工芸品であり、制作する人と身に着ける人の信仰心に裏付けられて、高い芸術性を有します。

 古い年代にもかかわらず、保存状態は良好です。特筆すべき問題は何もありません。





9,500円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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