不思議のメダイ
la médaille miraculeuse
(上) 無原罪の御宿りの伝統的図像に近いバック通りの聖母。球体上のマリアは体側から斜め下に伸ばした腕を開き、蛇を踏みつけて立っている。指輪から地上に向けて恩寵の光が降り注ぐさまは、不空大灌頂光真言において大日如来から発する五色の光を思い起こさせる。
【カトリーヌ・ラブレによる幻視】
1830年7月18日の夜、パリのリュ・デュ・バック(バック街)にある愛徳姉妹会修道院 (Maison des Filles de la Charité
de Saint-Vincent-de-Paul) の修練女、カトリーヌ・ラブレ (Ste Catherine Labouré, 1806.5.2
- 1876.12.31) に聖母マリアが出現しました。
カトリーヌ・ラブレは生涯に幻視あるいは出現を何度も体験しました。その内容は次の通りです。
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出現したもの |
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日時 |
場所 |
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聖ヴァンサン・ド・ポールの心臓 |
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1830年4月25日から5月2日 |
愛徳姉妹会修道院の礼拝堂 |
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キリスト |
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日付は不明
聖体拝領のとき |
愛徳姉妹会修道院の礼拝堂 |
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キリスト |
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1830年6月6日
聖体拝領のとき |
愛徳姉妹会修道院の礼拝堂 |
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聖母マリア (一度目) |
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1830年7月18日の深夜 |
愛徳姉妹会修道院の礼拝堂 |
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聖母マリア (二度目) |
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1830年11月27日 17:30頃
他の修道女たちと一緒に祈っているとき |
愛徳姉妹会修道院の礼拝堂 |
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聖母マリア (三度目) |
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1830年12月のある日 17:30頃
他の修道女たちと一緒に祈っているとき |
愛徳姉妹会修道院の礼拝堂 |
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十字架 |
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1848年7月30日 |
不明 |
聖母マリアが最初に出現した1830年7月18日には、深夜、白い服を着た幼児がカトリーヌを呼び起こしました。カトリーヌが幼児に導かれて礼拝堂に連れて行くと、主祭壇の前の椅子に聖母が座っていました。カトリーヌは聖母の膝に手を置いて、慰めと助言の言葉を受けました。
二度目と三度目の聖母出現は、カトリーヌを含む修道女たちが礼拝堂に集まって、夕べの祈りを捧げているときに起こりました。聖母の姿を見、声を聞いたのはカトリーヌだけでした。聖母はこの2回の出現の際に不思議のメダイのデザインを示し、これを製作して広めるようにカトリーヌに命じました。
【不思議のメダイの形態的特徴】
(上) 不思議のメダイ
当店の商品です。
不思議のメダイの聖母は
無原罪の御宿りの伝統的図像に近い姿勢で、地上界を表す球体の上に立っています。創世記において人類の始祖アダムの妻エヴァは蛇に誘惑され、人類に死と滅びをもたらしましたが、聖母はキリストを生んで人類に永遠の生命と救いをもたらしました。それゆえ聖母は創世記のエヴァと対照を為す「新しきエヴァ」であり、不思議のメダイにおいては死に対する勝利を表すように、足元の蛇を踏みつけています。聖母の両手には多数のリングがはめられていて、その多くからは恩寵の光が降り注いでいます。聖母の周りには楕円形の枠があり、「罪無くして宿り給えるマリアよ、御身を頼みとする我等のために祈りたまえ」
(O Marie, conçue sans péché, priez pour nous qui avons recours à vous.)
という言葉が刻まれています。
メダイの裏面は、マリアを表すMと十字架のモノグラムを、教会すなわち全キリスト教徒を表す十二使徒の星が取り囲んでいます。モノグラムの下には茨の冠をかぶった
キリストの聖心と、剣に刺し貫かれた
マリアの聖心が刻まれています。
通常、カトリックの信心具は単なる道具であって、それ自体に不思議な力が宿っているわけではありません。たとえばロザリオを身に着けていたからといって、悪や罪から自動的に守られるとは考えられていません。信心具が効果を発揮するためには、身に付ける人自身が信仰を持っていなければならず、信心具は信仰の助けとなる道具であるに過ぎないのです。
しかしこのメダルは身に着けるだけで恵みを与えてくれると言われています。当時パリに流行していたコレラの終息や
ユダヤ人アルフォンス・ラティスボンヌの改宗を始めさまざまな奇跡を起こしたことから「不思議のメダイ」 (la médaille miraculeuse) と呼ばれており、贈り物としてもたいへん人気があります。メダイとはフランス語のメダイユのことで、英語のメダルと同じ意味です。
不思議のメダイは1832年6月30日、パリの金銀細工工房ヴァシェット (Vachette) から最初の500枚が発行されました。
【ウィルゴー・ポテーンス型の聖母と、無原罪の御宿リ型の聖母】
不思議のメダイが上述の意匠になるにあたっては、伝統的図像からの逸脱を嫌う教会の意向が働いています。カトリーヌが幻視したのは
ウィルゴー・ポテーンス(羅 VIRGO POTENS 力ある処女)型の聖母で、
グロブス・クルーキゲル(世界球)を両手で包み込むように胸の前に持っていました。
(下) カトリーヌ・ラブレに出現した聖母 1878年のリトグラフ
不思議のメダイに刻まれた「無原罪の御宿り」型の石膏製聖母像が、カトリーヌに出現した聖母の像としてバック街の愛徳姉妹会修道院礼拝堂に設置されたのは
1849年のことで、1856年には大理石製の像がこれに取って替わりました。
しかるに両手で球体を包み込むウィルゴー・ポテーンス型聖母像の設置には紆余曲折があり、教皇庁から条件付の許可が出て石膏製の像が設置されたのは
1885年のことでした。この像は 1930年に大理石製のものに替わりました。バック街の愛徳姉妹会の礼拝堂には、現在ふたつの聖母像が安置されています。
【ヨーロッパ連合の旗と聖母マリア】
ヨーロッパ連合の旗(仏 le drapeau européen)は、青を背景に十二の星が輝いています。この意匠はアルセーヌ・ハイツ(Arsène Heitz, 1908 - 1989)が考案したものです。
ハイツによると、旗の地の色である青は
ブリュ・マリアル(仏 bleu marial マリアの青)です。また青を背景に輝く星は、不思議のメダイにおいてインマクラータ・マリア(羅 IMMACULATA MARIA 無原罪のマリア)のモノグラムを囲む十二個の星です。
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