ヴェルメイユによる高級品 少女のためのコミュニオン・ソラネル 《巻貝に入れた真珠母のシャプレ 全長 38センチメートル》 一点もののフランス製アンティーク 1920 - 30年代


シャプレ(ロザリオ)の全長 38 cm  シャプレの重量 10.9 g

環状部分の周の長さ 51 cm


突出部分を含むクルシフィクスのサイズ 縦 28.2 x 横 15.6 mm   コルプスを含む最大の厚さ 3.2 mm

突出部分を含むクールのサイズ 縦 14.1 x 横 9.8 mm


珠の長径と短径 5 x 4 mm


貝の小箱の長径と短径 48 x 34 mm  高さ 26 mm  小箱の重量 16.7 g




 艶消しの金色と柔らかな白の取り合わせが、無垢と華やぎを表す美しいシャプレ(ロザリオ)。初聖体あるいはコミュニオン・ソラネルを受ける少女のために、戦間期のフランスで作られた品物です。少女の手に優しくなじむ小さめの珠は真珠母(しんじゅも マザー・オヴ・パール)でできており、この素材特有の優しい光を反射しています。





 幅広の十字架は幅広のラテン十字で、単純なシルエットながらも稜線は丁寧に面取りされています。キリストは十字架に架かる際、両手と足の計三か所に釘を打たれました。本品の別作のコルプス(羅 CORPUS キリスト像)は打ち出しによるクリストゥス・ドレーンス(羅 CHRISTUS DOLENS 苦しむキリスト像)で、実際のキリストと同じく両手及び重ねた足の計三か所を鋲留めされています。ティトゥルス(羅 TITULUS 罪状書き)は省略されています。


 クルシフィクスとクールは銀に金を被せたヴェルメイユ製で、半艶消しの金色がたいへん上品です。純度 800パーミル(800/1000 80パーセント)の銀を示す蟹の検質印、並びにフランスの銀製品工房のマークが、十字架上部の環に刻印されています。クールの刻印は突出部分二か所に見られます。

 フランスの金製品及び金めっき製品は、他の国のものに比べて赤みが強いのが特徴です。本品クルシフィクスとクールのめっきはイエロー・ゴールドですが、フランス製シャプレにふさわしく、少しローズ(ピンク)がかった色をしています。





 本品が制作された 1920年代から 1930年代のフランスではアール・デコ様式が流行しており、シャプレ(ロザリオ)を初めとする信心具もその影響を受けました。シャプレのセンター・メダルをフランス語でクール(仏 cœur 心臓)と言い、多くの古い作例では文字通り心臓を模りますが、本品のクールはアール・デコの影響を受けて丸みを失い、ハート形が五角形に変化しています。クールには聖母の横顔が浮き彫りにされています。

 ロザリオのことを、フランス語でロゼール(仏 rosaire)またはシャプレ(仏 chapelet)といいます。ロゼールは特に十五連のロザリオを指す語で、語形から明らかなように、ラテン語ロサーリウム(羅 ROSARIUM)に由来します。シャプレは五連のロザリオを指しますが、この語は本来被り物を表すシャペル(仏 chapelle)に縮小辞が付いたものであり、やはり花の冠を表します。ドイツ語ではロザリオをローゼンクランツ(独 Rosenkranz)といいますが、これは文字通り、薔薇の花環という意味です。





 聖母マリアは人祖アダムの妻エヴァと同様に女性でありながら、エヴァが犯した罪ゆえの原罪に傷つくことなく母アンナの胎内に宿りました。それは棘だらけの繁みから伸びた薔薇の花芽が、棘に傷つくことなく美しい花を咲かせるのにも似ています。それゆえ薔薇は聖母の象徴であり、聖母は棘の無いロサ・ミスティカ(羅 ROSA MYSTICA 神秘の薔薇)とも呼ばれます。

 汚れなき白の珠を連ねた本品シャプレ(ロザリオ)は、無原罪の聖母に捧げるにふさわしい白薔薇の花環、あるいは白薔薇の花の冠です。ルネサンス期から十九世紀前半までの聖母は青いマントを着た姿で描かれましたが、1853年にローマ司教(教皇)が無原罪の御宿りをカトリックの正式な教義と宣言して以来、聖母は純白の衣を着た姿で表現されることが多くなりました。本品は真っ白な薔薇を連ねた花環または冠の象(かたど)りであって、無原罪の聖母に祈りを捧げるにるのにふさわしいシャプレ(ロザリオ)となっています。





 ロザリオは天使祝詞を唱えて聖母に執り成しを願う信心具です。聖母はキリスト者の鑑(かがみ 手本)であり、ロザリオのクールは聖母の汚れ無き御心、すなわち聖母が神とイエスを愛する愛を象徴します。ロザリオを祈るキリスト者は、聖母と心を一つにして神を愛し、キリストを愛するのです。

 五連のシャプレにおいて、祈りはクールを何度も通過します。これは心臓を通って血液が循環するさまを思わせます。近世までの伝統的思想において、心臓は単なるポンプではなく生命と愛の座であり、血液を賦活する「ミクロコスモスの太陽」(羅 SOL MICROCOSMI)と考えられてきました。したがってクール(心臓)に彫られた聖母象は、聖母と心(心臓)をひとつにし、神とキリストを愛してこそ、信仰に生命が吹き込まれることを示しています。




(上) パリから南西に数キロメートル離れた郊外の町、ショワジ=ル=ロワ(Choisy-le-Roi)でのコミュニオン・ソラネル。1946年に撮影された写真。


 本品はコミュニオン・ソラネルを受ける少女のために制作され、巻貝を加工した特別な容器に入っています。コミュニオン・ソラネルに参加する少女は、ウェディング・ドレスを身に着けてキリストの花嫁となります。本品の白はウェディング・ドレスの白であり、少女の無垢を表すとともに、愛嬢が汚れなき聖母に倣う女性であってほしいと願う両親の愛を反映しています。

 コミュニオン・ソラネルのシャプレには白や無色のガラス・ビーズも使われますが、本品の珠は天然の真珠母(しんじゅも 真珠貝の殻)でできています。真珠母もまた聖母の象徴です。真珠母製の珠は貝に特有の深みがあるシラー(独 Schiller 艶)を有します。真珠母内部から照り返す柔らかな光は、包み込むような聖母の愛を視覚化しています。











 本品シャプレは貝の小箱に入っています。小箱はヤコウガイ(Turbo marmoratus)の殻から体層を切り離し、両端に真鍮の口金とスライド式の蓋を取り付けています。貝殻の滑層部分は切除され、外側の表層も酸で剥離されていますが、真珠層の表面にはヤコウガイ特有の螺肋が確認できます。貝殻の外側表面は丁寧に研磨され、写真で再現できない真珠光沢を放っています。

 螺鈿の箱といえば普通は二枚貝の殻を使い、木や金属の表面にタイル状の真珠母を並べたり埋め込んだりしたものを思い浮かべます。巻貝は曲率が大きいので貝ボタンに使うことが多く、螺鈿細工に貼り付けることはあまりありません。しかしながら本品はヤコウガイの形状をそのまま利用して、一点ものの小箱としています。筆者(広川)は日頃から数多くのアンティーク工芸品に接しますが、このような品物は初めて目にしました。







 真鍮の蓋は体層両端の二か所に取り付けられており、いずれも良好な状態です。緩みやゆがみ、隙間等の問題は無く、きちんと閉まります。殻口に近い部分は直径が大きいので、シャプレの十字架が引っかからず、楽に出し入れできます。殻口から遠い方は直径が小さいですが、本品シャプレはこちらから入れることもできます。







 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。

 本品は八十年ないし九十年前のフランスで製作された真正のアンティーク品ですが、保存状態は極めて良好です。シャプレ(ロザリオ)にも貝の小箱にも、特筆すべき問題は何もありません。天然の貝殻をそのまま活かして制作した小箱はまったくの一点もので、この時代のフランス製品を数多く取り扱う筆者自身、類品を目にしたことがないユニークな手工芸品です。シャプレ、小箱とも実物は写真よりはるかに美しく、お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。





本体価格 44,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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