極稀少品 クロワ・デュ=ピュイ ル・ピュイ=アン=ヴレのクルシフィクス オーヴェルニュ特有のビジュ・レジオナル 76.2 x 51.4 mm フランス 1820 - 40年代


全幅 51.4ミリメートル (両端の装飾を含む十字架横木の長さ)

全高 76.2ミリメートル (自然に吊り下げたときの、下部の垂れ飾りを含む高さ)


クルシフィクスの最大の厚さ 6.5ミリメートル


重量 4.4グラム


フランス  1820 - 40年代頃



 ビジュ・レジオノのひとつである十字架型ペンダント、クロワ・デュ・ピュイ(仏 une croix du Puy ル・ピュイ十字)。ル・ピュイすなわちル・ピュイ・アン・ヴレ(le Puy-en-Velay オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏オート=ロワール県)はフランス南部マッシフ・サントラル(le Massif Central 中央山塊)に位置する古い町で、サンティアゴ・コンポステラに至る起点の一つであり、ブーローニュ=シュル=メールと並んで中世フランスで最も繁栄した聖母マリアの巡礼地のひとつでもあります。







 ル・ピュイ十字の特徴は、幅広のラテン十字にコルプスが打ち出されていること、横木両端と縦木下端の計三か所にひょうたん型の垂れ飾りがあること、しばしばエマイユが施されることです。クレルモン・フェランやリモージュ、ブルゴーニュやサヴォワの十字架型ペンダントにも垂れ飾りを有する作例が見られますが、十字架自体の形がル・ピュイ・アン・ヴレのものとは異なるほか、垂れ飾りの位置や形状、サイズにも差があります。本品はル・ピュイ十字の典型的な作例です。

 本品の十字架は、各面の意匠を打ち出した十字架型の金板二枚を、膨らみを持たせるように背中合わせに鑞付け(ろうづけ 溶接)しています。十字架の各末端部及び交差部にはフルール・ド・リス型装飾を鑞付けし、横木の両端と縦木の下端にはひょうたん型垂れ飾りを取り付けています。







 本品は金、すなわち十四金あるいは十八金でできています。

 クルシフィクス本体、すなわち十字架及び十字架上に打ち出された像は、金でできています。十字架末端の大きなフルール・ド・リス、及び交差部の小さなフルール・ド・リスも金製です。三つの垂れさがりもすべて金でできています。上部に取り付けられた大きな環も金属の薄板を膨らみを持つように曲げて作ったもので、環を鑞(ろう)で閉じた部分に硫化銀の暗灰色が見えますが、環そのものは金でできています。

 クルシフィクス、下げ飾りとも中空ですので、重量は百円硬貨と同程度の 4.4グラムであり、見た目の大きさにもかかわらず軽量です。中空に作られているのは金を節約するためで、ル・ピュイ十字はすべてこのような構造になっています。

 本品を自然に吊り下げたときの上下の長さは 76.2ミリメートル、最大の幅は 51.4ミリメートルで、現代のペンダントよりも大きめです。最も分厚いのは十字架交差部で、6.5ミリメートルの厚みがあります。





 本品の十字架には、一方の面にコルプス(羅 CORPUS キリスト像)が、もう一方の面に聖母マリアが打ち出されています。聖母マリアは胸の前で手を合わせ、あるいは交叉させた腕を胸に当てて、祈りの姿勢を執っています。聖母が上に立つ球体は、被造的世界(神に創造された宇宙)を象徴します。球体上に立つ聖母の姿は、無原罪の御宿リの伝統的図像表現です。

 十字架交叉部のフルール・ド・リス(仏 fleur de lys 百合の花)は、白色不透明ガラスのフリットが基部に融着しており、一部に彩色の痕跡が残っています。四つのフルール・ド・リスは、クロワ・ユグノト(仏 croix huguenote ユグノー十字)のフルール・ド・リスと同様に横長に引き延ばされ、十字架に打ち出されたキリスト像とマリア像の光背を形作っています。

 ひょうたん型垂れ飾りは、十字架と同様に、打ち出し細工の金板二枚を背中合わせに鑞付けして膨らませたものです。丸くて愛らしい垂れ飾りは、ペンダントのわずかな動きに伴ってゆらゆらと動きます。





 本品は 1820年代から 1840年代の間に制作されたものです。

 アンシアン・レジーム期以来、ル・ピュイではジュエリー制作が盛んでした。ル・ピュイのジュエリーは金製が最も多く、銀製、銅製は僅かです。圧倒的多数を占める金製ジュエリーは、ほとんどすべての作例において、打ち出し細工の金板二枚を鑞付け(ろうづけ)し、中空に作ってあります。





 ル・ピュイの打ち出し細工は型を用いて行われます。しかるにジュエリーの型は、同じものが長年に亙って使い続けられます。それゆえル・ピュイのジュエリーは、その作品が実際に制作された年代が、意匠から推測できるよりも新しい場合が多く見られます。

 本品は縦木上端の装飾部分に、フルール・ド・リスのポワンソン(ホールマーク、貴金属の刻印)が刻印されています。もしもアンシアン・レジーム期の作例であれば、ポワンソンのフルール・ド・リスには文字が組み合わされます。しかしながら本品の場合、フルール・ド・リスの下端が不鮮明ですが、文字が伴われていないように見えます。したがって本品は、アンシアン・レジーム期に制作されたル・ピュイ・アン・ヴレ十字と同じ意匠ではありますが、フランス革命以後の作例と考えられます。

 革命期には金製品の所持が厳しく禁じられ、見つかった場合には死刑になる可能性がありました。したがって本品がアンシアン・レジーム期のものでないとすれば、王政復古期(1814 - 1830年)以降に作られたはずです。一方フランスのビジュ・レジオノは、パリやニオールのクロワ・ジャネットを例外として、1850年代以降にはほとんど作られなくなります。したがって本品は 1820年代から 1840年代の作例であることがわかります。





 本品は二百年近く前にオーヴェルニュで制作されたアンティーク品です。ル・ピュイ十字をはじめ、垂れ飾りのあるビジュ・レジオノに最もよく見られる瑕疵は、垂れ飾りの逸失です。しかしながら本品の垂れ飾りは三つとも揃っており、膨らんだ状態を保っています。エマイユはほとんど剥落し、打ち出し細工の突出部分も数か所が凹んでいますが、本品が使い続けられた長い歳月を考えると、十分に良い保存状態です。

 現代まで伝わるル・ピュイ十字の作例はたいへん少なく、本品は稀少品です。博物館に納入しても良い水準の品物です。





158,000円

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