「無原罪のマリアの子らの会」(Association des Enfants de Marie Immaculée) の美麗なアンティーク・メダイ。この会は、1830年にパリに出現した不思議のメダイの聖母の命を受けて 1835年に設立された若い女性のための信心会で、メダイの基本デザインは、不思議メダイと同一です。ただ、不思議のメダイは数が多く、入手も容易ですが、この信心会の名前が刻まれた物を目にすることはほとんど無く、たいへん稀少な品といえます。
球体の上で蛇を踏みつける無原罪の御宿りは、罪びとを優しく抱き寄せるかのように両腕を開き、掌を正面に向けて立っています。両手からは神の恩寵の光が降り注いでいます。
創世記 3:15 において、神は蛇に向かって次のように言っています。
お前と女、お前の子孫と女の子孫の間に / わたしは敵意を置く。/ 彼はお前の頭を砕き、/お前は彼のかかとを砕く。(新共同訳)
神のこの言葉ゆえに、聖母は蛇の支配を受けず、その身に罪を帯びない「無原罪の御宿り」であると考えられ、蛇を踏みつける姿で描かれます。
聖母の顔立ちは美しく整い、丸みを帯びた女性らしい体つきが柔らかな衣越しに巧みに表現され、あたかも聖母が目の前におられるかのような錯覚を起させるとともに、全てを赦して執り成し給う母なるマリアの優しさを、余すところなく表現しています。聖母を取り囲むように、次の言葉がフランス語で記されています。
Ô Marie conçue sans péché, priez pour nous qui avons recours à vous. 罪無くして宿り給えるマリアよ、御身を頼みとする我等のために祈りたまえ。
「無原罪のマリアの子らの会」はもともと少女たちのための信心会として創立されました。信心会のこの特徴は、無原罪の御宿りを取り巻く文言にも表れていますし、美しく繊細な浮き彫りの作風にも反映しています。少女たちの信心会のメダイならではの愛らしさと華やぎを感じさせてくれます。球体の下には
"1830" の年号が刻まれています。
メダイのもう一方の面には、マリアを表すMと十字架のモノグラムを、教会すなわち全キリスト教徒を表す十二使徒の星が取り囲んでいます。モノグラムの下には茨の冠に取り巻かれ、人への愛に燃えるキリストの聖心と、悲しみの剣に刺し貫かれ、神への愛に燃えるマリアの聖心が刻まれています。「マリアの子らの会」(Association des Enfants de Marie) という文字が、これを取り巻いています。
メダイの材質はブロンズに銀めっきを施したものと思われますが、めっきの剥落はほとんどありません。およそ百年も前に製作された品物としては、たいへん良好なコンディションです。