稀少品 聖テレ―ズとイエスの聖顔 列聖直後に制作された「悔悛のガリア」のメダイ 直径 16.5 mm


突出部分を除く直径 16.5 mm

フランス  1920年代後半



 一方の面にリジューの聖テレーズの肖像を、もう一方の面に「ラ・サント・ファス」(仏 la Sainte Face イエスの聖顔)を、それぞれ浮き彫りにしたメダイ。テレーズ列聖からあまり時間の経たない1920年代後半頃にフランスで制作されたもので、ペンダントとして使いやすい形とサイズです。

 テレーズのメダイは数多く、筆者(広川)はこれまでに数多くの作例を見てきましたが、テレーズを「聖顔」と組み合わせたものは本品でようやく三例目です。テレーズと聖顔を組み合わせたメダイは、テレーズ列聖の直後、限られた時代のみに作られており、滅多に手に入らない稀少品です。





 表(おもて)面にはカルメル会の修道衣を着たテレーズの上半身を浮き彫りで表し、周囲にラテン語で「幼きイエズスの聖テレーズ」(SANCTA THERESIA A JESU INFANTE) と記しています。





 テレーズはクルシフィクスを胸に抱き、天に眼差しを注いでいます。聖女の胸に咲きこぼれる薔薇は、十字架上での受難において極点に達した神の愛の象徴であり、神の愛の反映である聖女の愛、すなわちテレーズが神を愛する愛の形象化でもあります。





 裏面には、イエスの聖顔を写した布が十字架に掛けられ、まばゆい愛の光が発出して世を照らしています。十字架の基部からは薔薇が生え出ています。本来五枚の花弁を有する薔薇は、キリストが受難し給うた際の五つの傷を象徴し、ひいては人智を絶する神の愛を象徴します。浮き彫りを取り囲むように、テレーズの言葉がフランス語で記されています。

  Mon Dieu, je Vous aime.  わが神よ、御身を愛します。


 伝承によると、十字架を担いでゴルゴタへの道をたどるイエズスに、聖女ヴェロニカが布を差し出し、イエスがその布で汗を拭いたところ、イエスの聖顔(ラ・サント・ファス la Sainte Face)が奇蹟によって布に転写されたといわれています。聖遺物「ヴェロニカの布」または「マンディリオン(Mandylion)は、ヴァティカンのサン・ピエトロのバシリカをはじめ、数か所の聖堂や修道院に伝えられています。

 イエスを十字架で苦しめたことへの償い、贖罪の業を行う信心会等において、「聖顔」への信心は大きな意味を持ちます。


(下・参考画像) Hans Memling, "Diptychon mit Johannes dem Täufer und der Heilige Veronika, rechter Flügel", um 1470, Öl auf Holz, 32 × 24 cm, The National Gallery of Art, Washington D. C.




 リジューの聖テレーズは無原罪の御宿り(聖母マリア)、ジャンヌ・ダルクとならんで、フランスの守護聖人であるゆえに、メダイも多数制作されています。しかしながらそのほとんどは「私は地上に善を為すために天での時を過ごしましょう」(Je veux passer mon ciel à faire du bien sur la terre.)、あるいは「私は天から薔薇の雨を降らせましょう」(Je ferai tomber une pluie de roses.) という聖女の言葉をテーマにしています。「聖顔のテレーズ」のメダイはテレーズが列聖された直後の時代に制作されたものがほとんどで、数が少なく、めったに見かけることがありません。

 この時代に「聖顔のテレーズ」のメダイが制作されたのは、第一次世界大戦後の荒廃期であったからです。19世紀後半以来、フランスでは「悔悛のガリア」の運動が盛んに行われていました。信仰深い人たちにとって、フランス革命とコミューンの内戦による荒廃、普仏戦争での敗戦、第一次大戦による荒廃は、マルグリット=マリを介して示された啓示をフランスが無視した報いと思われたのです。


(下・参考画像) キリストに身を投げかける悔悛のガリア。背景は 1914年9月4日のドイツ軍による空襲で炎上するランス司教座聖堂ノートル=ダム。当店の商品。




 「聖顔のテレジア」のメダイは、国土が戦場となった第一次世界大戦の荒廃からフランスがいまだ立ち直りきれず、戦争の記憶も生々しい時期に制作されました。その背景には、フランスの不信仰を神に謝罪して悔い改めようとする「悔悛のガリア」運動があります。フランスの守護聖人であるリジューの聖テレーズは、主イエス・キリストをひたすら愛しましたが、第一次大戦を生き延びたフランス人たちは、その聖女の功徳に縋(すが)ろうとしたのです。





 本品はおよそ九十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品です。その風合いはアンティーク品にふさわしく、優しい印象の円形と大きすぎないサイズは、日々ご愛用いただくペンダントにぴったりです。商品写真は大きく拡大して撮影しますので、小さな疵(きず)や突出部分の摩滅がよく判別できますが、メダイの実物を肉眼で見ると写真よりもずっと綺麗です。銀めっきの硫化による古色が、古い物ならではの趣を醸(かも)しています。硫化銀の黒ずみがお気に召さない場合は、家庭用の練り歯磨きを付けて軽くこすれば、ご自宅で容易にクリーニングできます。





本体価格 8,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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