1830年、パリ、バック通りの愛徳姉妹会礼拝堂で聖母を幻視し、「不思議のメダイ」の制作を命じられたことで知られるカトリーヌ・ラブレ (Ste. Catherine Labouré, 1806 - 1876) のメダイ。カトリーヌ・ラブレは 1947年に列聖され、現在では聖人の列に加わっていますが、本品はカトリーヌが列福された 1933年頃に制作されたものであり、「福者カトリーヌ・ラブレ」の稀少な作例です。
メダイの一方の面には、1830年7月19日未明、修道院礼拝堂において、聖母の膝に寄り掛かりつつ甘美な時を過ごす修練女カトリーヌの姿が浮き彫りにされています。バック通りの愛徳姉妹会の外壁にもこれと同様の彫刻か設置されています。聖母とカトリーヌを取り巻くように、次の言葉がフランス語で記されています。
J'ai été etablie gardienne. 神はわたしを守り手と為(な)し給いました。
メダイ最下部にはフランス語で「福者カトリーヌ・ラブレ」(Bienheureuse Catherine Labouré) と記されています。
もう一方の面は、「不思議のメダイ」の裏面と同様の意匠です。「無原罪のマリア」(羅 MARIA IMMACULATA 仏 Marie Immaculée)を示す "M I" と十字架のモノグラム(組み合わせ文字)を、全キリスト教徒の象徴である十二の星が取り囲んでいます。下部の向かって左側には茨の冠に囲まれて血を流しつつ、人への愛の炎を噴き上げるキリストの聖心が、向かって右側には悲しみの剣で刺し貫かれて血を流しつつ、神とキリストへの愛の炎を噴き上げる聖母の汚れなき御心が、それぞれ浮き彫りにされています。
本品はおよそ80年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、非常に良好な保存状態です。突出部分もまったくと言って良いほど磨滅しておらず、聖母とカトリーヌの顔や手、衣の襞、背景の細部まで、制作当時のままの状態で残っています。1933年に行われたカトリーヌ・ラブレの列福を記念し、限られた期間、機会にのみ制作された稀少な作品です。