マリアンヌ
Marianne
【上】 Eugene Delacroix,
La Liberté Guidant Le Peuple, 1830, huile sur toile, 325 x 260 cm, Musée du Louvre, Paris
マリアンヌ (Marianne) は共和制国家たるフランスと自由、平等、博愛の価値観を擬人化したもので、ボネ・フリジアン(bonnet Phrygien フリジア帽)を被った若い女性の姿で表されます。ボネ・フリジアンとは上のドラクロワの絵において自由の女神が被っている赤い帽子で、隷属からの解放を象徴します。
【マリアンヌの歴史】
マリアンヌはもともとフランス革命の時代に女性の姿で描かれた「理性」と、やはり女性の姿で描かれた「自由」が融合してできた人物です。1792年9月には、槍を持って立つ女性とボネ・フリジアンを組み合わせた図柄をフランスの新しい国章に定めることが、国民公会において宣言されました。さらに七月王政が倒されて第二共和政が成立した1848年には、フランス共和国の象徴となる図像が公募され、自由、革命、共和政の象徴としてのマリアンヌが確立しました。第三共和政時代の1880年、パリ・コミューンでの焼失後に再建された
パリ市役所にボネ・フリジアンをかぶったマリアンヌ像が設置されると、各地の市役所はこれに倣いました。
マリアンヌという名前は、女性の姿をしたこのシンボルが考案された時代である18世紀末に、とりわけブルジョワ家の家庭で家政婦として雇われることが多かった田舎出身のフランス女性によく見られた名前、マリとアンヌを縮約したものです。マリアンヌが自由、博愛、平等の精神を体現する女性の名前として使われた最初の例は、ギュイヨーム・ラヴァーブル(Guillaume
Lavabre)という靴職人が、1792年10月、第一共和政成立の十日前に作ったオック語の革命歌「マリアンヌの快復」("
la Garisou de Marianno") です。
マリアンヌのボネ・フリジアンにはル・コック・ゴーロワ(Le coq Gaulois)すなわちガリアの雄鶏と呼ばれるニワトリが留まっています。ル・コック・ゴーロワはフランスの国土、民族、歴史の象徴であり、共和政体を象徴するマリアンヌと相補う関係にあります。
【上】 1999年以来、フランス政府の刊行物などに使用されているロゴマーク。マリアンヌがデザインされています。
【下】 ラ・ポスト(フランス郵便)の切手に見られるマリアンヌ。現代フランスのエングレーヴァー、イヴ・ボジャール(Yves Beaujard,
1939 - )の作品です。
【下】 2013年のラ・ポスト(フランス郵便)に採用されたマリアンヌ・ド・ラ・ジュネス(la Marianne de la jeunesse 若きマリアンヌ)。三つの候補の中から、海外領土を含むフランス全土の高校生が選んだ図柄です。
【下】 大手電機メーカー、セブ(SEB)の広告に描かれたボネ・フリジアン。女性誌
「モード・エ・トラヴォー」 808号(1968年4月号)より。当店の商品です。
【マリアンヌのボネ・フリジアンと、ミネルヴァの兜(かぶと)】
ボネ・フリジアンはボネ・ド・ラ・リベルテ(bonnet de la Liberté 自由の帽子)、または単にボネ・ルージュ(bonnet rouge 赤い帽子)とも呼ばれています。
フランス革命期においてボネ・フリジアンが最初に使用された記録は 1789年に遡りますが、自由の象徴として広く使われ始めたのは翌年春のことでした。当初ボネ・フリジアンは自由の女神とフランスの女神の被り物でした。この二人の女神が後に融合して、マリアンヌが誕生します。1792年にはボネ・フリジアンはサン=キュロットに着用されるようになり、同年8月10日にチュイルリー宮を襲撃した民衆は、国王ルイ十六世にボネ・フリジアンを被らせました。またパリ大司教に職務を停止させた際も、民衆はミトラ(司教帽)に代えてボネ・フリジアンを大司教に被らせました。国王の処刑後、ボネ・フリジアンのシンボルはいっそう広く使われるようになり、パリ市会の議員は
1793年までにボネ・フリジアンの着用を義務付けられました。国民公会は国章の
フルール=ド=リス(百合紋またはアヤメ紋)をボネ・フリジアンに置き換えました。
革命期に広まったボネ・フリジアンは、急進派のシンボルと看做され、社会的な安定期にはその使用が控えられました。1799年11月9日、ブリュメールのクーデターによってナポレオン等の執政政府が成立すると、ボネ・フリジアンは公共の場から姿を消し、アテナあるいはミネルヴァの兜がこれに取って代わりました。
【下】 ボネ・フリジアンの代わりにアテナあるいはミネルヴァの兜を被ったマリアンヌ。
当店の商品です。
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