アンティークアナスタシア　神戸北野町　美術工芸品のレファレンス　メダイユ彫刻　ジャン＝バティスト・ダニエル＝デュピュイ　Jean-Baptiste Daniel-Dupuis, 1849

ジャン＝バティスト・ダニエル＝デュピュイ
Jean-Baptiste Daniel-Dupuis, 1849 - 1899

　ジャン＝バティスト・ダニエル＝デュピュイ　1898年頃に撮影された写真

　ジャン＝バティスト・ダニエル＝デュピュイ (Jean-Baptiste Daniel-Dupuis, 1849 - 1899) は、メダイユ彫刻のほか、インタリオ、立体彫刻、絵画から紙幣の透かしに至るまで、さまざまな分野の美術品、工芸品を手掛けた才能豊かな芸術家です。1880年代から90年代にかけて、フランス共和国から委託を受けて数々のメダイユを制作したほか、コインや紙幣の制作にも携わっています。

　ダニエル＝デュピュイはジュール＝クレマン・シャプラン、オスカル・ロティとともに、19世紀後半のフランスにおいてメダイユ彫刻の黄金時代を築いた最も重要な彫刻家のひとりと看做されています。オスカル・ロティとはまったくの同世代で、ローマ賞でも競い合っています。

【ジャン＝バティスト・ダニエル＝デュピュイの経歴】

　ジャン＝バティスト・ダニエル＝デュピュイは、1849年2月15日、ブロワ（Blois　サントル地域圏ロワール＝エ＝シェール県）に、画家エチエンヌ＝ドニ・デュピュイ (Etienne-Denis Dupuis, 1805 - 1863) の息子、画家ピエール・デュピュイ (Pierre Dupuis, 1833 - 1915) の弟として生まれました。16歳のとき、父の勧めでパリの高等美術学校 ( École Nationale Supérieure des Beaux-arts, ENSB-A) に入学し、ジュール・カヴァリエ (Pierre-Jules Cavelier, 1814 - 1894)、ジャン＝バティスト・ファロション (Jean-Baptiste Eugène Farochon, 1812 - 1871)、ユベール・ポンカルム (François Joseph Hubert Ponscarme, 1827 - 1903) の下で、彫刻とメダイユ彫刻を学びました。1868年、ダニエル＝デュピュイは弱冠19歳でローマ賞メダイユ彫刻部門二等、翌1869年にはプルミエ・グラン・プリに次ぐ一等に入賞しています。ちなみに同年の二等はオスカル・ロティでした。またこの年、ダニエル＝デュピュイはサロン展に胸像を初出品しています。

　1872年、ダニエル＝デュピュイはローマ賞メダイユ彫刻部門プルミエ・グラン・プリを獲得しました。ローマから帰国後の1877年にはサロン展で三等、1878年のパリ万博でも三等を取っています。1879年、パリ市はフランス共和国のメダイユのためにコンクールを開催しましたが、ダニエル＝デュピュイはここで一等となり、1889年、パリ万博記念メダイユのコンクールでは金賞を獲得しています。1881年にはレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ、1897年には同オフィシエを受けました。

　ダニエル＝デュピュイは、1899年11月、パリにおいて、精神を病んだ自身の妻により、午睡中に射殺されました。その時点で制作中であったメダイユは、友人であったアルフォンス＝ウジェーヌ・ルシュヴレル (Alphonse-Eugène Lechevrel, 1850 - 1924) の手で完成されました。

　ダニエル＝デュピュイの遺体はパリ16区のパシー墓地に埋葬されています。

【ダニエル＝デュピュイと貨幣】

　ダニエル＝デュピュイはフランス及び諸外国の紙幣デザインも手掛けています。フランスに関して言えば、1884年に発行された50フラン青色紙幣、1889年に発行された青とピンクの50フラン紙幣、1888年に発行された青とピンクの100フラン紙幣、同年の青とピンクの500フラン紙幣は、いずれもダニエル＝デュピュイのグラヴュール（エングレーヴィング）によります。1898年の 1, 2, 5, 10サンチーム小額紙幣、及び1895年のインドシナの1サンチーム貨も、ダニエル＝デュピュイによります。

【美術館】

　ダニエル＝デュピュイの作品は、出身地ブロワの市立美術館 (Musée des Beaux-Arts de la ville de Blois) のほか、パリ市立近代美術館 (Musée d'art moderne de la Ville de Paris)、パリ造幣局美術館 (Musée de la Monnaie de Paris)、プチ・パレ美術館 (Petit Palais)、オルセー美術館 (Musée d'Orsay)、ポワチエのサント＝クロワ美術館 (Musée Sainte-Croix)、ブレーメン美術館 (Kunsthalle Bremen)、コペンハーゲンのニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館 (Ny Carlsberg Glyptotek) 等、フランス国内外の多数の美術館に収蔵されています。

　ダニエル＝デュピュイはパリ市役所にも浮き彫りを製作しています。