美麗な高級品 生命の泉のロサ・ミスティカ 薔薇の聖母の愛と祝福 アール・デコの銀無垢メダイ 17.8 x 11.6 mm


突出無部分を含むサイズ 縦 17.8 x 横 11.6 mm

フランス  1920 - 30年代



 アール・デコ様式によるすっきりとしたシルエットのメダイ。優れた彫金による美麗な作例で、「愛」と「神からの祝福」を象徴する薔薇がマリアの背景を埋め尽くしています。裏面には、無原罪の御宿り(聖母マリア)がルルドに出現したときの様子が再現されています。

 フランスにおいて 800シルバーを表す「イノシシの頭」のポワンソン(ホールマーク 貴金属検質所の印)が、上部に突出した環状部分に刻印されています。





 表(おもて)面には歳若いマリアの端正な横顔が彫られています。カトリックの教義によると、マリアは原罪を持たずに生まれ、ルルドに出現された際にも「われは無原罪の御宿りなり」と名乗り給いました。本品に浮き彫りにされたマリアは十代半ばの少女として表されており、ちょうど大天使ガブリエルに受胎を告知された頃に当たります。祈りの象徴であるヴェールを被ったマリアは、自分が原罪を持たずに生まれて来たことの意味、処女でありながらメシアを産むことの意味を問いかけるように、天を見上げて神と対話しています。

 旧約聖書の時代、子供が生まれることは神の祝福と考えられました。神の特別な祝福により、それまで子供ができなかった女性が妊娠した出来事が、旧約聖書には数多く記録されています。子供が出来ない女性は多くとも、処女はそのなかで最も「子供ができない女性」です。処女が妊娠する可能性はありません。それにもかかわらずマリアが身ごもったのは、旧約時代のあらゆる事例に勝る大きな祝福を、神がマリアに与え給うたからに他なりません。

 本品の浮き彫りにおいて、マリアの背景は薔薇に埋め尽くされています。聖書において、植物の棘は罪と呪いを象徴します。人祖アダムの妻エヴァは原罪を犯しましたが、この罪は茨(薔薇)やあざみの棘にたとえられます。エヴァとともに原罪を犯したアダムに、神が語り掛け給うた言葉(「創世記」 3章 17~19節)を、七十人訳と新共同訳により引用します。

    17 τῷ δὲ Αδαμ εἶπεν ὅτι ἤκουσας τῆς φωνῆς τῆς γυναικός σου καὶ ἔφαγες ἀπὸ τοῦ ξύλου οὗ ἐνετειλάμην σοι τούτου μόνου μὴ φαγεῖν ἀπ᾽ αὐτοῦ ἐπικατάρατος ἡ γῆ ἐν τοῖς ἔργοις σου ἐν λύπαις φάγῃ αὐτὴν πάσας τὰς ἡμέρας τῆς ζωῆς σου      神はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い/取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。  
    18 ἀκάνθας καὶ τριβόλους ἀνατελεῖ σοι καὶ φάγῃ τὸν χόρτον τοῦ ἀγροῦ   お前に対して/土は茨とあざみを生えいでさせる/野の草を食べようとするお前に。
    19 ἐν ἱδρῶτι τοῦ προσώπου σου φάγῃ τὸν ἄρτον σου ἕως τοῦ ἀποστρέψαι σε εἰς τὴν γῆν ἐξ ἧς ἐλήμφθης ὅτι γῆ εἶ καὶ εἰς γῆν ἀπελεύσῃ   お前は顔に汗を流してパンを得る/土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」


 マリアは原罪に傷つくことなく、母アンナの胎内に宿り給いました。そのさまは棘だらけの繁みから生え出でて、棘に傷つくことなく香(かぐわ)しい花を咲かせる薔薇に似ています。それゆえ原罪に傷つかないマリアは棘に傷つかずに咲く薔薇に譬えられ、「ロサ・ミスティカ」(ROSA MYSTICA 神秘の薔薇)と呼ばれます。





 ところでメダイユ彫刻に刻まれる人物像に横顔が多いという事実には、古代以来の貨幣彫刻の伝統を引いていることに加えて、ふたつの理由が考えられます。

 第一は技法的な理由です。浮き彫りという技法の特性として、空間的な奥行きに厳しい制限があります。また絵画と違って色彩を使うことができません。したがって浮き彫り彫刻で人物の目鼻立ちを表す場合、正面向きよりも横顔のほうが適しています。

 第二の理由は、モデルの人柄がありのままの形で現れるのは、正面向きの顔ではなく横顔だという理由です。クアットロチェント(15世紀)のイタリアにおいてピザネッロが始めたメダイユ彫刻は、イタリア本国よりもむしろフランスで栄え、19世紀においてひとつの頂点に達しました。19世紀のフランスでメダイユ彫刻が興隆するきっかけとなったのが、ダヴィッド・ダンジェ (Pierre-Jean David d'Angers, 1788 - 1856) による作品群です。常に変わらないモデルの人柄は、横顔にこそありのままの形で現れる、とダヴィッドは考えました。一時的な感情ではなく、人物の生来の人柄と、それまでの歩みによって形成された人柄を作品に表現するのであれば、横顔を捉えるのが最も適しているというダヴィッドの指摘には、大きな説得力があります。

 このメダイにおいて、彫刻家はマリアの横顔の肩から上のみを制作しています。全身像であれば仕草や服装で表現できることも、この作品においてはマリアの表情だけですべて表現しなくてはなりません。本品においてマリアがヴェールを被っているのは神との対話あるいは祈りの象徴であり、端正な横顔に浮かぶ穏やかな表情、口許の優しい微笑みは、神に選ばれて恩寵の器となった若きマリアの信仰のあらわれです。

 上の写真に写っている定規のひと目盛は一ミリメートルです。マリアの目、鼻、口や、少しだけ覗いた前髪は、いずれも一ミリメートル以下のサイズで彫られており、数分の一ミリメートルでも位置がずれれば横顔の端正さは容易に失われることがわかります。このように小さなサイズであるにもかかわらず少女の若々しく端正な顔立ちを造形し、そればかりか不可視の信仰までも表現するメダイユ彫刻家の腕前には感嘆するしかありません。


 マリアの肖像の下部には水文が彫られています。エヴァは原罪によって死をもたらしましたが、「新しきエヴァ」であるマリアはメシアを生むことによって生命をもたらしました。メダイ最下部に表されているのは生命の水であり、マリアは生命の水が湧き出るです。本品の彫刻は、人間に救いをもたらした「恩寵の器」マリアを「生命の泉」とすることにより、救済史においてマリアの自由意志が果たした役割の重みを視覚化しているのです。





 裏面にはルルドに出現したマリアと、少女ベルナデット・スビルーの姿を浮き彫りにしています。ここに彫られているのは 1858年3月25日、16回目の出現の際の光景で、ベルナデットに四度繰り返して名を問われたマリアは、微笑むのを止め、目を天に向け、下ろしていた両手を胸の前で組んで、「わたしは無原罪の御宿りです」と答えています。

 ベルナデットが目撃したマリアは、ベルナデット自身と同様に十代の少女のような姿でしたが、本品の彫刻においては内面の卓越性を反映し、成人女性の姿で表されています。マリアは茨の繁みに傷つくことなく裸足で立っています。これはマリアが原罪を持たず、現在に傷つかないロサ・ミスティカ、「無原罪の御宿り」であるからです。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は一ミリメートルです。浮き彫りの突出部分は幾分磨滅していますが、一ミリメートルに満たないサイズの顔や手が、大型彫刻と同様に表情を伴って表現されていたことがうかがえます。薔薇(茨)の花の直径は、およそ 0.3ミリメートルです。衣やヴェールの襞も写実的な自然さで表現されています。





 本品は八十年ないし九十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、保存状態は良好で、細部までよく残っています。本品のような銀無垢メダイは素材の点で最も高級な信心具ですが、本品はミニアチュール彫刻の優れた作例であり、工芸品としての出来栄えもたいへん優れています。大きすぎず小さすぎないサイズは、どのような服装にも合う上品なペンダントとして末永くご愛用いただけます。





本体価格 14,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




ロサ・ミスティカ 奇(くす)しき薔薇の聖母のメダイ 商品種別インデックスに戻る

様々なテーマに基づく聖母マリアのメダイ 一覧表示インデックスに戻る


特定のテーマに基づかない聖母マリアのメダイ 商品種別インデックスに移動する

聖母マリアのメダイ 商品種別インデックスに移動する


メダイ 商品種別インデックスに移動する


キリスト教関連品 商品種別表示インデックスに移動する



アンティークアナスタシア ウェブサイトのトップページに移動する




Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS