薔薇のシンボリズム
la symbolique de la rose


 Pierre-Joseph Redouté, "Rosa Gallica flore giganteo", de "les Roses" vol. II, 1821


 最も美しく芳(かぐわ)しい花のひとつである薔薇は、西ヨーロッパ文化圏において「至高の愛」「無原罪の御宿り」「秘密」等を意味します。アジアの蓮にも比すべき豊かな象徴性を有する花といえます。


【キリスト教における薔薇】

 薔薇は本来五枚の花弁を有します。それゆえ赤い薔薇は、キリストが受難の際に負い給うた五つの傷、すなわち両手、両足、脇腹の傷を象徴します。キリスト受難の象徴であるということは、神の愛の象徴であるということでもあります。

 薔薇は聖母マリアの象徴でもあります。ロレトの連祷において、マリアは「ロサ・ミスティカ」(ROSA MYSTICA ラテン語で「奇(くす)しき薔薇」)と呼ばれています。


【ダンテのカンディダ・ローザ】

 ダンテ (Dante, 1265 - 1321) は「神曲」天国篇第三十一歌で、至高の第十天を謳っています。ダンテは第十天を「カンディダ・ローザ」(la candida rosa イタリア語で「白い薔薇」)と名付けています。天国篇第三十二歌によると、「カンディダ・ローザ」は円形劇場のようになっていて、最も高い所に聖母マリアがおり、その周囲を旧約、新約、キリスト教時代の諸聖人が取り巻いています。




(上) カンディダ・ローザ 神戸倶楽部に咲いていた花です。


 「神曲」天国篇第三十一歌の冒頭から第十五行までを引用します。日本語訳は筆者(広川)によります。ダンテの原文は三行ずつが連を為す韻文ですが、筆者の訳はイタリア語の意味をできるだけ忠実に和訳することを主眼としたため、韻文になっていません。


1 . In forma dunque di candida rosa そして白い薔薇の形を取って
2 mi si mostrava la milizia santa 聖人たちの群れが見えた。
3 che nel suo sangue Cristo fece sposa; キリストが御自身の血を以って花嫁と為し給うた人々である。
.
4 ma l'altra, che volando vede e canta また別の群れは、空を飛びつつ見て謳う。
5 la gloria di colui che la 'nnamora 彼らを愛し給うた御方の栄光を。
6 e la bontà che la fece cotanta, 彼らをかくも幸福なる者と為し給うた善き御方を。
.
7 sì come schiera d'ape che s'infiora 花に降り立つ蜜蜂の群れにもまったく似て、
8 una fïata e una si ritorna 彼らは次々に戻って行く。
9 là dove suo laboro s'insapora, その仕事に喜びを与えてくれる、あちらの場所へと。
.
10 nel gran fior discendeva che s'addorna 彼らはたくさんの花弁に飾られた
11 di tante foglie, e quindi risaliva 大きな花へと降りて行き、
12 là dove 'l süo amor sempre soggiorna. その愛の常に留まるところへと戻って行った。
.
13 Le facce tutte avean di fiamma viva 彼ら皆の顔は活ける火に輝き、
14 e l'ali d'oro, e l'altro tanto bianco, その翼は黄金で、他の部分はあまりにも白く、
15 che nulla neve a quel termine arriva. どのような雪もその白さには届かない。


【「薔薇」を含む成句】

 西ヨーロッパの諸言語において、薔薇は「秘密」の象徴でもあります。"SUB ROSA"(直訳「バラの下で」)というラテン語の成句、"under the rose" という英語の成句、"unter der Rose" というドイツ語の成句は、いずれも「内緒で、内密に」という意味です。フランス語で "découvrir le pot aux roses"(直訳「バラの壷を見つける」)というと「秘密を探り出す」という意味です。


(下) ポルテール (Jean François Portaels, 1818 - 1895) 「薔薇」 1880年代のフォトグラヴュア 当店の商品です。






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