リジューのテレーズ 幼きイエスの聖テレジア 《神の恵みと祝福のロザリオ型ブレスレット 有効長 18 cm》 薔薇のメダイを連ねた作例 フランス 1925年頃


最初のメダイのサイズ 縦 22.8 x 横 12.3 mm  ※ 突出部分を含む

薔薇のサイズ 縦 11.6 x 横 9.3 mm


適合する手首回りのサイズ 概ね 18センチメートル以下



 フランスのカルメル会修道女リジューの聖テレーズ(幼きイエスの聖テレジア)は、1925年5月11日、ピウス十一世によって列聖されました。本品はテレーズの列聖を記念して制作されたロザリオ型ブレスレットで、薔薇の花環に囲まれたテレーズのメダイを末端に取り付け、クラウン部分に薔薇のメダイを連ねています。重量は 15.0グラムで、五百円硬貨二枚分強に相当します。





 本品ロザリオの最初には、クルシフィクスの代わりにメダイが取り付けられています。メダイは直径九ミリメートルの小円盤にテレーズの半身像を浮き彫りにし、薔薇の花環が取り囲む紡錘状の透かし細工としています。メダイ上部の環にフランス(FRANCE)の文字が読み取れます。

 メダイ中央の小円盤に彫られている聖女像は、マリ=ベルナール修道士が 1922年に制作した聖女の丸彫り像を浮き彫りに写しています。幼きイエスの聖テレジア(羅 SANCTA TERESIA A JESU INFANTE)というラテン語の銘が、聖女の周囲を取り巻いています。

 小円盤を囲む花綱は、浮き彫りのテレーズが胸に抱く薔薇の花束に一致します。テレーズが自伝("L'Histoire d'une âme" 或る魂の物語)に書いた「私は天から薔薇の雨を降らせましょう」という言葉はよく知られていて、薔薇の花はこの聖女によく結びつけられます。その一方で薔薇の花綱はロゼール(仏 rosaire ロザリオ)をも象(かたど)っています。本品ブレスレット自体も十の薔薇を連ねることにより、ディゼニエ(仏 un dizainier)すなわち一連のロザリオとなっています。




(上) 《ロサ・ミスティカ 神秘の薔薇なる聖母》 エティエンヌ・アザンブルによるフランスの小聖画 118 x 75 mm 中性紙にコロタイプ 1910年代中頃 当店の商品


  本品の薔薇は環を除く概寸が 11 x 9ミリメートルと小さなサイズですが、花弁と葉の脈管、鋸歯状の葉縁が精巧且つ写実的に作られ、あたかも本物の花のような立体感とリアリティを有します。それにもかかわらず本品の薔薇には棘がありません。キリスト教において植物の棘は原罪を表しますから、棘が無い薔薇は無原罪の御宿りすなわち聖母マリアの象徴です。それゆえ本品に彫刻された棘が無い薔薇は、聖母マリアをロサ・ミスティカ(羅 ROSA MYSTICA 神秘の薔薇)として表現したものであることがわかります。

 五世紀のラテン詩人セドゥーリウス (Cœlius/Cælius Sedulius, 5th century) は、よく知られた作品「カルメン・パスカーレ」("CARMEN PASCHALE" 「復活祭の歌」)第二巻で人祖の妻エヴァと聖母マリアを対比し、聖母を薔薇に喩えています。セドゥーリウスによると、薔薇の花芽は棘のある繁みから生まれますが、棘に傷つくことなく美しい花を咲かせます。ちょうどそれと同じように、薔薇の花たる聖母マリアは、薔薇の棘たるエヴァが犯した罪に傷つくことなく、かえってエヴァの罪を清めます。

 「かの言葉「アヴェ」をガブリエルの口から与えられし御身よ、エヴァという名をアヴェに変え、平和のうちに我らを憩わせたまえ」(羅 SUMENS ILLUD AVE GABRIELIS ORE, FUNDA NOS IN PACE, MUTANS EVAE NOMEN.)というアヴェ、マリス・ステーッラ(羅 AVE, MARIS STELLA めでたし、海の星よ)の一節は、単なる言葉遊びにとどまらない深い意味を持っています。人祖アダムの妻エヴァは、原罪を犯すことによって人間に死と罪の呪い(あらゆる不幸)をもたらしました。これに対して「新しきエヴァ」すなわちマリアは、救いを受け容れて救世主を産み、人間に生命と救いをもたらしたのです。





 キリスト教には聖徒の交わり(羅 SANCTORUM COMMUNIO)という考え方があります。エクレーシア(希 ἐκκλησία 教会)はキリストの神秘体(羅 CORPUS MYSTICUM CHRISTI)であり、物故、存命に関わらず、すべてのキリスト者を含む有機的結合であると考えるのです。ここから聖人による執り成しの思想が生まれます。自力では天国に直行できない不徳の魂が、煉獄を回避して天国に行けるように、聖人による執り成し、すなわち聖人の徳の回向(付け替え)を願うのです。

 キリスト教にはたくさんの聖人がいますが、そのうちで最も地位が高いのは聖母マリアです。聖母は恩寵の器、すなわち義なる神に罪びとを執り成し、神の恵みと祝福を地上に取り次ぎ給う方と考えられています。ロザリオは天使祝詞を唱えて聖母に執り成しを願う祈りで、現行の天使祝詞が十五世紀に成立したことにより、カルトゥジオ会において成立しました。しかしながらロザリオの祈りは原型を十世紀に遡ります。本品ブレスレットは小さな品物ですし、信心具というよりもむしろビジュ(仏 bijou ジュエリー)ですが、その意匠は千数百年の歴史を背景にしています。





 薔薇の裏面には最初のメダイと同様のテレーズ像を浮き彫りにし、幼きイエスの聖テレジア(羅 SANCTA TERESIA A JESU INFANTE)というラテン語の銘で囲んでいます。

 フランスを守る守護聖人には二つの階級があります。フランスの主要守護聖人(仏 la patronne principale)は、被昇天の聖母(仏 la Bienheureuse Vierge Marie dans son Assomption)です。フランスの二級守護聖人(仏 patronnes secondaires)としてローマ教皇庁から正式に認められているのは、ジャンヌ・ダルクとリジューのテレーズです。詳しく言うとジャンヌ・ダルクはピウス十一世の 1922年3月2日付教皇書簡によって、リジューの聖テレーズはピウス十二世の 1944年3月2日付教皇書簡によって、それぞれフランスを守護する第二の聖人と宣言されました。

 本品が制作された 1925年の時点では、リジューのテレーズはフランスの守護聖人と正式に認められていませんでしたが、フランスの守護聖人に準ずる聖人とは見做されていました。実際のところローマ教皇庁の正式な認可は無くとも、次の七人すなわちアウレリア・ペトロニッラ(Sainte Pétronille 一世紀の殉教聖女)、トゥールのマルタンルイ九世ポワチエのラドゴンド、ランスのレミ(Saint Remi de Reims, c. 437 - 533 クローヴィスに洗礼を授けたランス司教)、パリのドニ(Saint Denis de Paris, + 250 - 272 ルテティアの初代司教)、大天使ミカエルは、いずれもフランスの守護聖人と考えられています。

 しかるにその一方で、リジューの聖テレーズはフランス人のみにとっての聖女ではなく、全キリスト教徒にとっての聖女です。それゆえ本品ロザリオ型ブレスレットは如何にもフランスにふさわしい信心具兼ジュエリーであるとともに、あらゆる時代、あらゆる国の人々の信心具兼ジュエリーともなっています。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと周り大きなサイズに感じられます。





 本品の引き環をメダイ上部に繋がる最も大きな環に掛けると、有効長(適合する手首回り)は 18センチメートルとなり、ゆったりとしたサイズです。このサイズが大きすぎる場合、薔薇同士を繋ぐ環に引き環を掛けて使うことで、サイズを調整できます。なお引き環は元々付いていた物に不具合があったので、新品に交換済です。

 本品は百年近く前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にも関わらず、極めて良好な保存状態です。美観上、実用上とも特筆すべき問題は何も無く、日々ご愛用いただけます。





本体価格 18,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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