(上) 一方の面

(下) もう一方の面















未使用品 生命あふれる緑のエマイユ 《鳩が象る愛と和解 テゼの十字架 21 x 21 mm》 修道士が手作りした美しい作品 革紐付 フランス 現代



 テゼ(Taizé ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏ソーヌ=エ=ロワール県)はフランス東部の小さな集落で、クリュニーから北におよそ十キロメートル、パレ=ル=モニアルから東北東におよそ五十キロメートルの距離にあります。この村の北半分に広がっているのが、ラ・コミュノテ・ド・テゼ(仏 La Communauté de Taizé テゼ共同体)と呼ばれる修道会あるいは宗教的共同体です。テゼ共同体はエキュメニカルな修道会で、キリスト教のあらゆる教派から年間五万人以上が訪れ、創立以来の訪問者は三百万人を超えます。





 テゼ共同体は修道士が制作する工芸品や絵画、陶器、本、クッキーなどを販売することで維持されています。本品十字架型ペンダントはそのような物品のひとつで、鳩を模(かたど)る金属片に不透明色ガラスのフリットを載せ、高温の窯で焼成しています。ペンダントは修道士によりひとつひとつ手作りされています。

 エマイユは両面に分厚く施されています。同色のエマイユは融点も同じであるゆえに両面に施すのが難しいですが、本品は両面とも綺麗に仕上がっています。それぞれの面で釉薬の配合を僅かに変えているのかもしれません。エマイユの胎は銅ですが、表面はガラスですので、金色の環を紐に取り換えるなどすれば、金属アレルギーがある方にも本品は問題なくお使いいただけます。


 本品エマイユのは植物の色であるゆえに、世界のあらゆる民族において生命力を象徴します。日本語のみどりは元々色名ではなく、植物の新芽のことです。フランス語ヴェール(仏 vert 緑)はラテン語ウィリディス(羅 VIRIDIS, E 緑の)に由来しますが、ウィリドゥスには「若々しい、元気な」という意味もあります。「ヨハネの黙示録」 4章 2 - 3節では、ヨハネが幻視した神を取り囲むように、「エメラルドのような虹」が輝いています。この記述は西ヨーロッパ中世の聖杯伝説に影響を与え、グラアル(Graal 聖杯)はエメラルドあるいは緑のガラスでできていると考えられるようになりました。聖杯に入れられるキリストの血は「契約の血」(マタイ 26: 28)であり、「生命をもたらすもの」です。緑に輝くグラアルは、キリストの血によって人間に与えられる生命そのものを象徴します。





 情愛深い鳥である鳩は、仲良く嘴を交わして、くぅくぅと鳴きながら寄り添う姿がよく見られます。それゆえユダヤの伝統において、は愛を象徴します。モーセ五書に並んで鳩が多く登場するのは「ソロモンの雅歌」ですが、ここでは鳩は愛しい恋人である美しい女性の象徴です。新共同訳により、いくつかの章句を「雅歌」から引用します。

      恋人よ、あなたは美しい。あなたは美しく、その目は鳩のよう。    (1: 15)
      岩の裂け目、崖の穴にひそむわたしの鳩よ。姿を見せ、声を聞かせておくれ。お前の声は快く、お前の姿は愛らしい。    (2: 14)
      恋人よ、あなたは美しい。あなたは美しく、その目は鳩のよう。ベールの奥にひそんでいる。髪はギレアドの山を駆け下る山羊の群れ。    (4: 1)
      眠っていても、わたしの心は目覚めていました。恋しい人の声がする、戸をたたいています。「わたしの妹、恋人よ、開けておくれ。わたしの鳩、清らかなおとめよ。わたしの頭は露に、髪は夜の露にぬれてしまった。」    (5: 2)
      わたしの鳩、清らかなおとめはひとり。その母のただひとりの娘。産みの親のかけがえのない娘。彼女を見ておとめたちは祝福し、王妃も側女も彼女をたたえる。    (6: 9)






 「創世記」八章にノアと鳩の話が記録されています。八節から十二節を新共同訳により引用します。

      ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーヴの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。
     「創世記」 八章 八節から十二節 新共同訳


 この物語において、鳩は神の怒りが収まったことを表します。それゆえ鳩は神との和解、神との平和を表し、さらにあらゆる和解と平和の象徴となりました。テゼは愛と赦しの共同体です。ドイツは第二次世界大戦でフランスに対する加害国となりましたが、テゼの聖堂であるレグリース・ド・ラ・レコンシリアシオン(仏 L'église de la Réconciliation 和解の教会)は、ドイツとフランスの和解を示すため、ドイツの若者たちの勤労奉仕により、1961年から 1962年にかけて建設されました。愛と平和、赦し、和解の象徴である鳩は、テゼのペンダントにふさわしいモチーフです。





 「新約聖書」に目を向ければ、鳩は三位一体の第三のペルソナ(羅 PERSONA 位格)、聖霊なる神を象徴します。これはイエスが洗礼者ヨハネから受洗し給うた際の記事(マタイ 3: 16、マルコ 1: 10、ルカ 3: 22、ヨハネ 1: 32)によります。「マルコによる福音書」 一章九節から十一節を新共同訳により引用いたします。

      そのころ、イエスはガリラヤのナザレから来て、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられた。水の中から上がるとすぐ、天が裂けて“霊”が鳩のように御自分に降って来るのを、御覧になった。すると、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が、天から聞こえた。
     「マルコによる福音書」 一章九節から十一節 新共同訳





 ヒッポのアウグスティヌス(Aurelius Augustinus Hipponensis, 354 - 430)はその三位一体論において、父なる神を「認識の主体としての神」、子なる神を父なる神による「認識の客体としての神」、聖霊なる神を認識する神とされる神のあいだに成り立つ「愛」であると論じました。アウグスティヌスは鳩に言及していませんが、図像における鳩が聖霊の象徴であるならば、鳩は神の愛の象徴とも言えることになります。

 「ルカによる福音書」が伝える受胎告知の記事に鳩は登場しませんが、十五世紀までの受胎告知画には聖霊の鳩を描く作例が多くみられます。上に引いた「ソロモンの雅歌」の古典的解釈において、若者は神、おとめはマリアを指すと考えられました。そうであるならば聖霊すなわち神の愛の形象化である鳩は、神の花嫁マリアとともに描かれるにふさわしいと思えます。





 さらに地中海文明圏において鳩はアフロディーテーの鳥とされ、愛を象徴しました。アフロディーテーは性愛の女神ですが、やはりアフロディーテーの花であった薔薇の場合と同様に、鳩の表す愛はやがて性愛から昇華され、神の愛を表すようになります。ユダヤ教、キリスト教、古代の異教のいずれにおいても、鳩は愛の象徴であることがおわかりいただけます。


 いっぽう十字架は醜悪な敬具であり、最悪のアルマ・クリスティですが、まさにその事実ゆえに、人智を超えた神と救い主の愛を可視化します。一見したところ、鳩と十字架は対極にあって最も結びつき難いものと思えます。しかしながら救い主が十字架上に刑死するという想像を絶する方法で救世が達成されたとき、神との和解を象徴する鳩は、十字架と同じ意味を持つに至ります。

 鳩を模る十字架はたいへん特異な形態で、筆者(広川)はテゼ以外でこのような意匠を見たことがありません。しかしながら鳩と十字架の象徴性は、救い主イエスにおいて一致します。したがって本品は、愛と平和を象徴する鳩と、悪意と危害そのもののような十字架を一体化させることで、至高の愛を可視化した美しいペンダントであるといえます。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。







 本品はテゼの修道士による完全な手作り品です。テゼ共同体自身はペンダントの意匠について詳しい説明をしていませんが、ユダヤ教と古代多神教からキリスト教に引き継がれた象徴性を考えるとき、本品は数千年にわたる思想史と美術史を前提に、二十一世紀に至って産み出された美しい品物であることがわかります。

 本品エマイユの胎(下地となる金属)はおそらく銅ですが、表面はガラスですので、金色の環を革紐などに取り換えれば、金属アレルギー体質の方にも問題なくお使いいただけます。上に示した着用例の写真では金色の環をそのまま使用していますが、モデルはチェーンではなく革紐で本品を着用しています。この革紐は本品に無料で付属します。





本体価格 5,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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