高級品 ルルド巡礼の大型クルシフィクス 真珠母製十字架に銀無垢のコルプス 80.4 x 43.3 x 11.4 mm


銀製キャップを含む十字架のサイズ 縦 80.4 x 横 43.3 mm

コルプスを含む最大の厚さ 11.4 mm


重量 13.0 g


フランス  十九世紀後半から二十世紀初頭




 十九世紀後半から二十世紀初頭のフランスで制作された立派なクルシフィクス。縦八センチメートル、横四センチメートルの大きな真珠母(しんじゅも マザー・オヴ・パール)から太い円柱状のラテン十字を削り出し、銀製のコルプスとティトゥルスを鋲留めしています。十字架の先端四か所には、銀製キャップを取り付けています。

 最上部の銀製キャップから突出する環に「ラ・テト・ド・サングリエ」(仏 a tête de sanglier 猪の頭)、コルプスの腰布に「ル・クラブ」(仏 le crabe 蟹)が刻印されています。「猪の頭」と「蟹」は、いずれもフランスにおいて八百パーミル(八十パーセント)の銀を表すポワンソン(仏 poinçon ホールマーク、貴金属の検質印)です。





 「真珠母」(しんじゅも)とは真珠貝の貝殻から削り出した装飾材料のことです。写真では分かりませんが、肉眼で実物を見ると、真珠貝の殻に特有のラブラドレッセンス様(よう)のシーン(英 sheen 光沢)があり、深みのある七色の輝きを放っています。本品の十字架は分厚い一枚の真珠母から削り出してあり、継ぎ目はありません。





 コルプス(羅 CORPUS キリスト像)とティトゥルス(羅 TITULUS 罪状書き)は、クロスに鋲留めされています。ティトゥルスとは、"INRI"(Iesus Nazarenus Rex Iudæorum ラテン語で「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」の意)と書かれた札のことです。





 クルシフィクスのコルプスは金属の薄板を曲げて凹凸を付け、彫刻のように見せる「打ち出し細工」による場合がほとんどです。しかるに本品のコルプスは中空ではない銀無垢(ぎんむく)製であり、また打刻や打ち出しによらず、手間をかけて立体的に鋳造されています。コルプスにもティトゥルスにも破損は無く、それぞれしっかりと十字架に鋲留めされています。コルプスが纏(まと)う腰布上部、向かって左側にある鰭(ひれ)状の突出部分に、蟹のポワンソンが打刻されています。





 十字架の先端四か所には銀製のキャップを被せています。キャップの固定は膠(にかわ)によると思われますが、真珠母の十字架にしっかりと固着しており、緩みは全くありません。十字架末端のキャップは真珠母を衝撃から保護するとともに、コルプスと同じ色がアクセントとなり、クルシフィクス全体を視覚的に引き締めています。最上部のキャップから突出する環に、猪の頭が打刻されています。





 真珠母製の十字架は視覚的に美しいだけでなく、象徴的意味を有します。真珠母(しんじゅも)は真珠貝の貝殻です。しかるに真珠貝が生み出す真珠は、イエス・キリストを象徴します。「マタイによる福音書」十三章四十五節から四十六節に記録されているキリストのたとえ話を、新共同訳によって引用します。

  また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。

 アレクサンドリアのオリゲネス (Ὠριγένης, c. 184 – c. 253) は、このたとえ話の「真珠」がキリストを意味すると解釈しています(「マタイ福音書注解」十巻九節)。真珠がキリストであるならば、真珠を生み出す貝は、聖母マリアに他なりません。したがって真珠母でできた本品の十字架は、受難のイエスを抱く聖母マリアの姿に他なりません。




(上) ein Vesperbild, 14. Jahrhundert, Kunstmuseum Bonn 菩提樹材のピエタ 高さ九十センチメートル ドイツ 十四世紀


 受難のイエスを抱く聖母像は、「ピエタ」と呼ばれます。「ピエタ」(伊 pietà)とは、イタリア語で「信仰心」という意味です。真珠母の白さは「恋人よ、あなたはなにもかも美しく、傷(羅 MACULA 汚れ)はひとつもない」(「雅歌」四章七節)という「無原罪の御宿り」(IMMACULATA CONCEPTIO) の清浄さを表しています。

 「イエスの母」「無原罪の御宿り」という身分は聖母マリアにのみ当てはまる事柄ですが、その一方で聖母は「キリスト者の鑑(かがみ 手本)」でもあります。聖母は受難のキリストを腕の中に抱きとめましたが、罪あるキリスト者一人一人は聖母に倣ってキリストを抱擁し、心に受け容れて信仰を持ちます。したがって真珠母製十字架が受難のキリストを抱く本品の意匠は、「十字架降架」や「ピエタ」の図像と同様に、キリストを心に受け容れる「信仰」を象徴的に表します。





 十字架の裏側には「ルルドの記念」(Souvenir de Lourdes)の文字がフランス語で刻まれています。

 本品は十九世紀後半から二十世紀初頭のフランスで制作されたものです。フランスをはじめこの時代のヨーロッパでは、富の大半が富裕層に集中していました。たとえば 1910年のフランスにおいて、上位一パーセントの富裕層が富の七十パーセント近くを所有していました。富裕層の範囲を上位十パーセントに広げると、この階層が富の九割を独占し、残りの一割を九十パーセントの国民が分け合う状況でした。「一部の富裕層以外は、全員が下層階級」というように、社会が極端に二極分化していたのです。このような時代に作られた銀無垢製品は、大多数の人々にとって、めったなことでは手に入らない高価な品物でした。本品もそのようなもののひとつであり、本品の元の持ち主にとって、ルルドへの巡礼が人生の大きな節目となる出来事であったことを示しています。





 上の写真は男性店主の手に載せて撮影しています。本品の実物を女性がご覧になれば、写真で見るよりも一回り大きなサイズに感じられます。

 本品は百年ないし百数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にかかわらずたいへん良好な保存状態です。銀製部品にも真珠母製十字架にも破損は無く、鋲やキャップの緩みもありません。特筆すべき問題は何もありません。





35,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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