"Missel des litanies de la Sainte Vierge", No. 481

Droguet et Ardant, Éditeurs, Limoges, 1934


「聖母の連祷のミサ」


15 x 9 cm  厚さ 2.5 cm  304ページ 総革装 小口と天地に金

リモージュ、ドロゲ・エ・アルダン社  1954年頃



 パリのすぐ南、ヴィニュー(Vigneux イール・ド・フランス地域圏エソンヌ県)に住むベルナールという名の少年が 1954年にコミュニオン・ソラネルを迎えたとき、祖父母から記念に贈られた美しい祈祷書。明るめの上品な色調のモロッコ革を背と表紙に使い、金線と型押しを施しています。小口と天地は鍍金されています。







 巻頭及び巻末の見返しには、マーブル(大理石)文様の紙が使用されています。マーブル文様は印刷されている場合が多いですが、本品に使われているのは伝統的技法による真正のマーブル紙です。絵具を流した水面に紙を浮かべて転写したもので、同じ文様は世界に二つとありません。





 表題紙には聖母の横顔が描かれています。若きマリアは「神の花嫁」の真っ白なヴェールを被り、口許に微かなほほえみを浮かべています。

 マリアの前にある白百合は、「純潔」「摂理への信頼」「神に選ばれた身分」を表します。これら三つの属性は、いずれもマリアに対して卓越的に当てはまります。すなわち受胎告知の際、処女マリアは「聖霊によって身ごもった」ことをガブリエルから告げられ、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」と答えて救いを受け容れました。マリアはアブラハムにも勝る信仰、神の摂理への信頼ゆえに、救い主の母として神に選ばれたのでした。

 扉の下部には、祈祷書の書名が「聖母の連祷のミサ」(Missel des litanies de la Sainte Vierge) と書かれています。その下には祈祷書の出版元、リモージュのドロゲ・エ・アルダン社 (Droguet et Ardant, Éditeurs, Limoges) の名前があります。フランス南西部に位置するリモージュ(Limoges リムーザン地域圏オート=ヴィエンヌ県)は、エマイユと磁器の他、出版業によっても知られています。





 表題紙の次ページから巻末までは見開きになっています。上の写真は表題紙の次ページで、左側にリモージュ司教総代理 J. ビュジャドゥ師 (Mgr. J. Bujadoux, vicaire général de Limoges) による 1934年 12月 19日付の印刷許可が印字されています。

 ベルナール少年に贈る言葉が、祖母の手によって青色ボールペンで書き込まれています。内容は次の通りです。

     Souvenir de mes Chers Grands Parents, Pépère et Mémère Godefroy    大好きなゴドフロワおじいちゃんとおばあちゃんからもらった本。
         
      Pour le beau jour de ta première communion solenelle faite en l'église de St. Pierre de Vigneux le 20 juin 1954    1954年 6月 20日、ヴィニューのサン・ピエール教会で、コミュニオン・ソラネルの良い日に。
     Cher petit Bernard prie le bon Diex pour tous ceux qui te sont chers.    かわいいベルナール。大切だと思う人たちのために、神さまにお祈りしなさい。
     ta Mémère    おばあちゃんより。


 最初の部分は祖母による「代筆」です。この祈祷書を誰から貰ったのかを子供が忘れてしまわないように、祖母が書き留めたのでしょう。"Pour le beau jour" 以下は祖父母の立場から書かれています。1954年に孫が十二歳になっていたのであれば、祖父母は十九世紀生まれでしょう。おばあさんは持ち慣れないペンを使って一生懸命に書いているのですが、最後の一節の綴りがめちゃくちゃで、微笑ましく感じられます。





 上の写真は次の見開きです。聖母の絵の下部には、前ページの「マーテル・クリスティー」(MATER CHRISTI ラテン語で「キリストの御母」)、「マーテル・プーリッシマ」(MATER PURISSIMA いと清き御母)に続いて、「アーテル・アマービリス」(MATER AMABILIS 情愛深き御母)、「マーテル・クレアートーリス」(MATER CREATORIS 創造主の御母)と書かれています。





 次の見開きには「プリエール・デュ・マタン」(PRIÈRES DU MATIN フランス語で「朝の祈り」の意)と書かれ、フランス語による幾つかの祈りが続きます。




(上) A. ヴァランのグラヴュールによるカニヴェ 「揺るぎなき信仰の乙女」 原図はアウグスブルクのクラウバー兄弟のもの。113 x 74 mm フランス 1850年代 当店の商品です。


 聖母の絵の下には「ウィルゴー・フィデーリス」(VIRGO FIDELIS 恃むべきおとめ)「ロサ・ミスティカ」(神秘の薔薇)と書かれています。挿絵の下に書かれているこれらの言葉は、すべてロレトの連祷における聖母の称号です。





 次の見開きにはラテン語による祈りが書かれています。本品は第二ヴァティカン公会議よりも以前に出版された祈祷書ですので、フランス語を主としつつも、ラテン語で書かれている部分が多くあります。この見開きページにあるのは「主の祈り」「天使祝詞」「使徒信経」「告解の祈り」で、すべてラテン語によります。

 左側の挿絵には「サルース・イーンフィールモールム」(SALUS INFORMORUM 病者の癒し)と記され、横たわる少女と松葉杖の少年に、聖母が優しく手を差し伸べています。遠景にはルルドのバシリカが見えます。右側の挿絵には「レーギーナ・アンゲロールム」(REGINA ANGELORUM 天使たちの女王)とあり、天使たちに崇敬される聖母の姿が描かれています。祈祷書の本文は巻末に至るまで、以上八種類の挿絵に囲まれています。

 巻末には「1949年第三四半期に法定納本」(Dépôt légal en 1949, 3e trimestre) との記載があり、この祈祷書が第二次大戦期を挟んで長く出版されたことがわかります。







 祈祷書にはコミュニオン・ソラネルを記念する三点の小聖画が挟まれています。小聖画の裏面にはつけペンまたは万年筆で少年たちの名前と日付が書かれています。上の写真の左端はベルナール少年自身のコミュニオン・ソラネルを記念する小聖画です。ベルナール少年は名前と教会名と日付を自分で書いています。右隣は四歳年下の友人が 1958年にコミュニオン・ソラネルを迎えたときのもので、ベルナール少年が覚え書きを記しています。右端も年下の友人のものです。文字は母親が書いたのでしょう。





 古い年代の祈祷書には、ほとんど使われないまま新品のような状態で残っているものがよくありますが、この祈祷書を贈られたベルナール少年は、家族と一緒に真面目に教会に通い、祈りを捧げていた様子が見て取れます。本品は六十年以上前のものですが、表紙の摩耗により角部分の革に小さな破れがある程度で、全体的に良好な保存状態です。祖父母から贈られた祈祷書を少年が大切に扱い、祖母に教えられたとおり、大切な人たちのために祈っていたことがわかります。





12,800円

電話 (078-855-2502) またはメールにてご注文くださいませ。




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