稀少品 生命のペリドットと意志的愛のアメシスト 《愛に燃える生命の座 エクス・ヴォートー型ロザリオ入れ》 イエスと聖母とキリスト者を重ね合わせた作例 23.6
x 11.5 x 2.0センチメートル
突出部分を含む全体のサイズ 縦 236 x 横 115 mm
重量 160g
蓋を閉じて測った心臓型本体の厚さ 最大 20 mm
真鍮板の厚さ 0.7 - 0.8 mm
フランス 二十世紀
非常な手間を掛けて制作されたエクス・ヴォートー型のロザリオ入れ。蓋が開閉する真鍮製の心臓に、ロザリオを入れることができます。数十年前にフランスで作られた作品ですが、意匠は近世から十九世紀頃までの様式に従っています。
本品はしっかりとした厚みのある真鍮板を打ち抜いて制作されています。真鍮の表面は透明ニスが塗装され、錆と変色を防止しています。
ロザリオを収納する本体部分は心臓を模ります。心臓型本体の蓋は金型を用いて立体的にプレスされ、一か所の蝶番(ちょうつがい)で自由に開閉します。開閉の際に手掛かりとなる小さな突起が、蝶番の向かい側に溶接されています。蓋の表(おもて)面は艶消し処理が、裏面は艶出し研磨処理が、それぞれ施されています。
心臓の全周を取り巻いて深皿状の台座が溶接され、シングル・ラウンド・カットのペリドットを模したストラス(ガラス製の模造宝石)が爪留めされています。
大プリニウスは「ナートゥーラーリス・ヒストリア」(羅 "NATURALIS HISTORIA" 博物誌)のなかでペリドットに最大限の賛辞を贈っていますが、実際ペリドットは若葉を思わせる美しい色をしています。原石の断口やカット宝石に見られる光沢は、樹脂光沢、ガラス光沢、金剛光沢の三種に大別されます。古代から中世にかけての人々は宝石の光沢ではなく色彩を楽しみましたが、ペリドットは光沢の面でも最も柔らかな樹脂光沢で、陽光に照らされた若葉の、生命の輝きを思わせます。
現在では鉱物学用語の橄欖石(かんらんせき)をオリヴィン(英仏 olivine)、橄欖石の中でも特に宝石質のものをペリドット、ペリド(英仏 péridot)と呼ぶのが普通ですが、昔は宝石質のペリドットも含めて、オリヴィンの名称が広く使われていました。オリヴィンという名称はオリーヴ色に由来します。したがって本品のペリドット模造石は若葉の緑色によって生命を表す一方で、オリーヴと共通の象徴性を有すると考えられます。
本品の心臓は上部から愛の炎を噴き出し、激しく燃えています。炎は高温ゆえに紫色を呈し、炎の先端は鮮やかなピンクに輝いています。紫の炎にはアメシストを模したストラスが、炎の先端にはピンク・トルマリンを模したストラスが、それぞれ爪留めされています。
近代語アメシストは古典ギリシア語アメテュストス(ἀμέθυστος, ἡ)に由来しますが、アメテュストスは「酔わない」という意味で、酒に酔わないという意味に加え、精神的陶酔に陥らないという意味にも解せます。無償・無条件の愛は一時の熱狂的感情ではなく、冷静な持続的意志の営為です。したがってアメテュストス(アメシスト)は愛の炎を彩るのに最も相応しい宝石といえます。
ペリドット模造石を嵌め込む台座は、ひとつひとつ独立した深皿状の部品を本体に溶接しています。この溶接は厳重であるうえに、台座の裏側にはさらに針金を溶接し、しっかりと補強されています。それゆえ台座が本体から脱落することは決してありません。
愛の炎を噴き上げる本品の心臓は、まず第一にイエス・キリストの聖心、第二に聖母マリアの聖心、第三にマリアに倣うキリスト者の心臓を、重層的に象(かたど)っています。
まず第一に、本品はイエス・キリストの聖心を象徴します。旧約時代のイスラエルの諸王は、オリーヴ油を注がれることにより、王の地位を与えられました。オリーヴ油はこの権能ゆえに、新約時代においては聖霊を象徴します。救世主と訳されるギリシア語クリストス(希
χριστός)は動詞クリーオー(希 χρίω 塗油する)の完了分詞で、オリーヴ油を注がれて性別された王のことです。ヨルダン川で洗礼を受け給うたイエスの上には、聖霊が降(くだ)り給いました。本品を取り囲むオリヴィン(ペリドット)の模造石は、第一に、これが油を注がれた王キリストの心臓、聖霊が降ったイエスの心臓であることを示します。
イエスは最後の晩餐のあと、弟子たちとともにオリーヴ山へ出掛けて祈り給うたとの記述がすべての福音書に見られます。これに因み、オリーヴは犠牲の象徴ともされます。イエス・オリーヴが象徴するキリストの受難は、燃える聖心が象徴する無償の愛ゆえであり、この受難によって救世、すなわちオリーヴが象徴する神との和解(「創世記」八章)が達成されました。それゆえオリヴィン(ペリドット)はイエス・キリストの心臓を彩るのに最もふさわしい宝石です。
第二に、本品は聖母の汚れなき御心を象徴します。イエスの聖心と聖母の聖心は同じ形をしていますが、イエスの聖心が罪びとを愛するアガペー(希 ἀγάπη 無償の愛)を象徴するのに対して、聖母の聖心はその反映、すなわち神とキリストに向かう愛を象徴します。イエスの聖心を囲むオリヴィンがイエスがもたらす神との和解を表すのに対し、聖母の聖心を囲むオリヴィンは救世主によってもたらされた神との和解、及び神との和解の結果として生命の座なる心臓に降(くだ)った聖霊を表します。
第三に、本品は聖母に倣うキリスト者の、神とキリストに向かう愛を象徴します。オリヴィンが象徴する神との和解は、無原罪である聖母よりもむしろ一般の罪びとに必要なものです。また聖母は神への愛と信仰においてキリスト者の鑑(かがみ 手本)ですから、神からの愛は聖母の心に点火したのとまったく同様に、他のキリスト者の心にも点火し、心臓の上部に噴き上がる愛の炎を出現させます。
本品が有するロザリオ入れとしての機能は、この点で示唆的です。ロザリオで唱える天使祝詞を前半と後半に分けて考えるならば、まず祈りの前半には、神と救世主への愛が籠められています。ロザリオは神と救世主への愛が形象化した信心具であり、それが心臓型容器に収納されている状態は、神と救世主への愛が霊の座に抱かれているさまを象徴します。
天使祝詞はもともと前半部分だけが唱えられていました。後半部分が付加されたのは十四世紀頃のことです。天使祝詞の後半は、デイー・ゲニトリクス(羅
DEI GENITRIX テオトコス、神の母)に執り成しを願う祈りとなっています。エクス・ヴォートーを模る本品の形態は、アウクシリウム・クリスティアノールム(羅 AUXILIUM CHRISTIANORUM キリスト者の援け手)なる聖母に執り成しを願うロザリオの在り処として、如何にも相応しいデザインといえます。
通常のロザリオ入れに比べると本品は大きなサイズです。蓋の深さ(高さ)は二センチメートル弱ですので、極端に大きなロザリオを入れることはできませんが、通常サイズのロザリオであれば大抵のものを収納できます。
上の写真は本品に収納可能なロザリオで、いずれも当店の商品です。いちばん上のウラリン製ロザリオは売約済みです。収納のサンプルとなっているロザリオは、写真をクリックするとそれぞれの商品説明ページが開きます。リンク先からこのページに戻るには、新たに開いたロザリオの商品説明ページを閉じてください。
本品ロザリオ入れは数十年前にフランスで制作されたヴィンテージ品ですが、未使用のまま残っていたために、新品時と変わらない保存状態です。可動部分にぐらつき等の不具合は無く、十分に実用できます。本品はエクス・ヴォートーを模りますが、心臓型本体の蓋はきちんと閉まりますので、巡礼地のエクス・ヴォートーと同様に壁に掛けることが可能です。実用上、美観上とも特筆すべき問題は何も無く、お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。
本体価格 54,000円
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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