註1 古典ギリシア語「ガラ」(γάλα, γάλακτος/γάλακος, τό) は中性名詞で、近代語のガラクトース(galactose 乳糖)、ギャラクシー(galaxy 乳の河、銀河)等に入っています。
古典ギリシア語「リトス」(λίθος, ου, ὁ) は男性名詞で、近代語の「リチウム」(lithium リトスの形容詞形リテオス λίθεος
の中性単数主・対格 リテオン λίθεον をラテン語式綴りにしたもの)、「リトグラフ」(lithograph 石版画)等の語源です。
ドイツ語は大抵の鉱物名や物質名を中性名詞とするので、ガラリートが中性名詞であるのは自然です。フランス語のガラリトが女性名詞である正確な理由は私にはわかりませんが、おそらく女性名詞「ピエール」(pierre 石、岩)に合わせたのでしょう。ギリシア語「リトス」は上述のように男性名詞ですが、フランス語「ピエール」と、その語源であるギリシア語「ペトラ」(πέτρα,
ἡ) はともに女性名詞です。
なおギリシア語 γάλα は、ラテン語 LAC, LACTIS n. と同根です。
註2 「エリノイド」の語源について筆者ははっきりと知りませんが、おそらくギリシア語で「羊毛」を表す「エリオン」(ἔριον, ου, τό)、あるいはその形容詞「エリネオス」(ἐρίνεος,
α, ον) に、接尾辞「オイド」を付けた造語で、「羊毛に似た物」という意味でしょう。カゼインとケラチンは蛋白質の系統が異なりますが、カゼイン樹脂を「クンストホルン」と言えるのであれば、これと同様に、広い意味で「羊毛に似ている」と言うことも可能です。
註3 1893年、オーギュスト・トリラはホルムアルデヒドとフェノールから新しい樹脂(フェノール樹脂)を合成しました。レオ・ベークランド (Leo
Henricus Arthur Baekeland, 1863 - 1944) はこれを発展させて工業化に成功し、ベークライトが生まれました。
註4 当時は紙が高価であったので、どこの国の学校でも子供が書き取りや計算を練習するのにはスレート(粘板岩)の薄板と蝋石(ろうせき)が使われていました。
註5 フェアアイニクテン・グミヴァーレンファブリーケン (Vereinigten Gummiwarenfabriken) はハルブルク(Harburg ハンブルク南西部)に本社があるゴムと合成樹脂のメーカーで、現在のフェニックス社
(Phoenix AG) の前身です。
フェアアイニクテン・グミヴァーレンファブリーケンはハルブルクとヴィンパシンク(Wimpassing im Schwarzatale オーストリア、ニーダーエスターライヒ州)の工場でガラリートを生産しました。またフランス・ガラリト社 (la Compagnie Française de Galalithe) はパリ近郊ルヴァロワ=ペレ (Levallois-Perret) の工場でガラリトを生産しました。
この二社は 1904年に合併し、国際ガラリート社 (die Internationale Galalith Gesellschaft Hoff und Co, Harburg) となり、乾燥したカゼインを原料とする製法が開発されて、アール・デコ期に隆盛を見ました。
註6 ジェットの模造石の製法を例に挙げます。ジェット(jet 黒玉)は漆黒の化石木で、モーニング・ジュエリー(mourning jewellery 服喪用ジュエリー)をはじめ、ヴィクトリア時代のセンティメンタル・ジュエリーに多用されました。ジェットの模造石となるガラリスの製法は、牛乳に2パーセントの煤(すす)と酢酸鉛を加え、沈澱したカゼインを取り出します。これを水中で破砕洗浄した後に成型し、布の上でゆっくりと乾燥させます。表面にクラック(割れ目)が生じるのを防ぐため、乾燥には数カ月を要します。乾燥して得られた暗灰色の塊をホルムアルデヒドに浸漬した後、ふたたび乾燥し、研磨すると、艶やかな漆黒のガラリス製品となります。
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