スティール・エングレーヴィング 「ブールジュ司教座聖堂サン=テチエンヌ」
Cathédrale Saint-Étienne de Bourges
原画の作者 トーマス・アロム (Thomas Allom, 1804 - 1872)
版の作者 ル・キュ (John H. Le Keux, 1783 - 1846)
画面サイズ 縦 127 mm 横 191 mm
イギリス 1860年代
六角形のフランス国土のちょうど中心付近、パリから約200km南に、フランスでもっとも古い町のひとつであるブールジュ(Bourges)があります。この町にはシャルトル司教座聖堂とならぶ盛期ゴシック建築の傑作、ブールジュ司教座聖堂サン=テチエンヌ (Cathedrale Saint-Etienne de Bourges)
があります。
現在の司教座聖堂の建設が始まったのは1195年で、少しずつ手を加えながら 1542年に現在の姿に完成しました。聖堂建築はロマネスク様式、ゴシック様式とも上空から見ると東向きの十字架型プランになっているのが普通で、十字架の縦の部分を身廊、身廊の両側に身廊に沿って平行に設けられた部分を側廊、十字架の横木にあたる部分を翼廊(袖廊)というのですが、ブールジュ司教座聖堂には翼廊が無く、身廊と二重側廊のみの長方形プランになっています。さらにアーケード(身廊と側廊の境界部分)が高さ20メートルとたいへん高く、これらの特異な構造が、他の盛期ゴシック聖堂には見られない独特の広がりと一体感を聖堂内部の空間に与えています。
エングレーヴィングに描かれているのは聖堂西側正面の入り口です。聖堂の内部空間が5つの部分(身廊とその両側の二重側廊)で構成されているのに合わせて入り口も5つに分かれ、間を6つの控え壁が支えている様子が分かります。中央の入り口は最後の審判の入り口、その右隣は聖堂の守護聖人であるサン=テチエンヌ(聖ステファヌス)に捧げられた入り口、左隣は聖母マリアに捧げられた入り口です。最後の審判の入り口上部のタンパン(出入り口のアーチと扉上部で囲まれた三角形の平面)が3層に分かれているのが見えます。これらの3層には上から順に《天使と聖母と聖ヨハネに囲まれた審判者キリスト》《大天使ミカエルと選ばれた者たち、悪魔と地獄に落ちる者たち》《蘇る死者たち》の精緻なレリーフが刻まれています。
この聖堂のステンドグラスはシャルトル司教座聖堂のステンドグラスとほぼ同時代に製作されたもので、盛期ゴシックの傑作であり、聖堂内部に天上の光を投げかけています。
威容を誇るサン=テチエンヌに比べると、周りの建物がいかに小さく見えることでしょうか。数百年の年月をかけて人力だけで築き上げられたゴシック大聖堂がいかに驚くべき建築物であり、人類の遺産と呼ぶべきものであるかがよく分かります。
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