金の光に立ち昇る祈り 《キリストに愛される魂のシャプレ》 フィルマン・ピエール・ラセールによる繊細な浮き彫り 刳型装飾のある十字架 全長 46 cm



全長 46 cm   環状部分の周の長さ 63 cm


突出部分を除くクールの直径 11.3 mm

ビーズの長径と短径 7 x 4 mm


突出部分を含むクルシフィクスのサイズ 38.6 x 23.4 mm


重量 13.9 g



フランス  1920 - 30年代



 いまから八十年前ないし九十年前、1920年代から 1930年代頃のフランスで制作された美麗なシャプレ(数珠、ロザリオ)。初聖体を記念する美しい品物で、繊細な浮き彫り彫刻のクルシフィクスと、高名なメダイユ彫刻家によるクール(センター・メダル)を有します。キリストとマリアを表裏に刻んだクールの意匠は、キリストに愛される魂を象徴しています。





 本品のクルシフィクスは、十字架の縦木上下端及び横木左右端に、カドリロブ(仏 quadrilobe 四つ葉)と正方形を重ね合わせ、ゴシックの刳型(くりがた)を模したメダイヨンを有します。縦木上端のメダイヨンにはイエス・キリスト御自身から聖体を授かる子供の姿が、縦木下端のメダイヨンにはマドンナ・システィナの右側(向かって左側)のケルブが、横木右端(向かって左端)のメダイヨンにはイエス・キリストの横顔が、横木左端(向かって右端)のメダイヨンには聖母マリアの横顔が、それぞれ浮き彫りにされています。





 縦木と横木はケルト風の組紐文もしくは唐草文に飾られています。交差部にあるコルプス(羅 CORPUS キリスト像)頭部の光背は、カドリロブ(四つ葉型)と十字架を組み合わせた装飾意匠を有します。打ち出し細工によるコルプスは、十字架にしっかりと鑞付け(ろうづけ 溶接)されています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。縦木上端のメダイヨンに彫られたキリストの頭部は直径およそ一ミリメートルの極小サイズですが、それでもキリストであることが分かります。他のメダイヨンに関しても、浮き彫りのモチーフは容易に同定されます。交差部の後光のミル打ちを模した点や、縦木に刻まれた植物文様等の細部も、驚くべき精度で手を抜かずに制作されています。





 シャプレ(ロザリオ)のセンター・メダルを、フランス語でクール(仏 cœur)といいます。本品のクールは高名なメダイユ彫刻家フィルマン・ピエール・ラセールによる美しい小品で、一方の面にイエス・キリストの横顔を、もう一方の面に聖母マリアの横顔を、いずれも丁寧な浮彫で表します。

 フィルマン・ピエール・ラセール(Firmin Pierre Lasserre, 1870 - 1943)は、1870年6月6日、ピレネーの西端近くの小村バロート=カミュ(Barraute-Camu アキテーヌ地域圏ピレネー=アトランティック県)に生まれました。画家、彫刻家でもあったメダイユ彫刻家エメ・ミレ(Aimé Millet, 1819 - 1891)、及び画家アルベール・ブレオテ(Albert Bréauté, 1853 - 1939)に師事し、1921年のサロン展で銅メダル、1923年のサロン展で銀メダル、1927年のサロン展で金メダルを受賞しました。またレジオン・ドヌール章シュヴァリエを贈られています。





 拡大写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。キリストと聖母の横顔は極小サイズのミニアチュール彫刻で、いずれも直径五ミリメートルの円内に収まりますが、大型の浮き彫り作品に勝るとも劣らない精密さで制作されています。

 クールに彫られた救い主は受難を覚悟し、前方を見据えておられます。本品は初聖体のシャプレですが、聖体は繰り返して受難し給うキリストの御体(羅 CORPUS CHRISTI)に他なりません。本品クールの救い主は、初聖体を受ける子供を愛するあまり、ご自身を神の子羊として祭壇に捧げられたのです。

 クールに彫られた若きマリアは受胎を告知される少女の姿であり、薄絹のヴェールを被る神の花嫁として表されています。魂はラテン語でアニマ(羅 ANIMA)、フランス語でアーム(仏 l'âme)といいますが、これはいずれも女性名詞です。それゆえキリスト教神秘主義の文学において、魂は神に愛される女性、神の花嫁として表象されます。中世ヨーロッパの神学者たちは旧約聖書の内容を新約の前表として読み解き、「雅歌」の若者を神、乙女を人間の魂と解釈しました。本品のクールに彫られた神の花嫁マリアも、神に愛される魂を象徴しています。





 先に述べたように、フランス語のクール(仏 cœur)は心臓、ハートのことです。古来心臓は生命と愛の座と考えられました。それゆえクールをキリストの心臓、クールに刻まれた神の花嫁マリアを魂の象(かたど)りと解釈すれば、クールの表裏にキリストとマリアを刻んだ本品の意匠は、神とキリストが人の魂を愛し給うこと、またキリストの愛こそが魂の生命であることを、美しいミニアチュール彫刻によって可視化していることがわかります。

 シャプレのクールはキリスト者の心臓でもあります。クールに可視化された神の愛のミステリウム(奥義)は、人の内に反射して神に向かう愛となり、祈りに生命を与えます。シャプレ(ロザリオ)のクールは玄義と玄義の境目に位置し、円環を為す祈りの通過点となっています。シャプレのクールは、循環器系における心臓と、奇しくも同じ位置にあるのです。血液循環を発見したウィリアム・ハーヴェイは、心臓を単なるポンプとは考えず、血液に活力を吹き込む生命の座、ミクロコスモスにおける太陽と考えていました。それと同様に本品においても、環状部分の要(かなめ)に位置するクール(心臓)はシャプレ(ロザリオ)の祈りに生命を吹き込み、神への愛を活かし続けます。





 本品のビーズはエリオリット(仏 heliolite サン・ストーン)を模したガラス製です。ビーズの表面を透過した光を細粒状のインクルージョンが反射し、光の粉を撒き散らしたような煌めきを見せています。

 五十九個のビーズのシャプレは、天使祝詞(アヴェ・マリア)を唱える時に使用します。しかるに「アヴェ」(羅 AVE)と訳されたギリシア語「カイレ」(希 Χαῖρε)は、救い主の出現を喜び祝う言葉に他なりません。本品のビーズが煌めくときに見える無数の光の点は、全ての人の魂がまことの光(救い主)に照らされる様子(「ヨハネによる福音書」一章九節)を思い起こさせます。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。本品は子供の初聖体またはコミュニオン・ソラネルを記念するシャプレであり、細めに作られてはいますが、四十六センチメートルの長さは大人用と変わりません。女性が本品の実物をご覧になれば、写真よりもひと回り大きなサイズに感じられます。

 本品は八十年前ないし九十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は極めて良好です。クルシフィクス、クール、ビーズのいずれにも特筆すべき瑕疵(かし 欠点、疵)は無く、チェーンの強度にも問題はありません。シャプレは銀色の作例が多いですが、本品の金属部分には金めっきが施されています。めっきの摩滅によって生じた金色の濃淡がアンティーク品ならではの趣きとなって、柔らかな光のうちに温かみを感じさせます。





18,900円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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