ロカマドゥールの聖母
Notre-Dame de Rocamadour





 ロカマドゥール(Rocamadour)はフランス南西部、ラングドック=ルシヨン=ミディ=ピレネー地域圏のロト県にある人口六百人ほどの小村です。ロカマドゥールとは「アマドゥールの岩山」という意味で、1166年にこの地で聖アマドゥールの聖遺物(遺体)が見つかったことが地名の由来となっています。

 ロカマドゥールはドルドーニュ川の支流であるアルズー(Alzou)川の峡谷に面した風光明媚な地で、山羊のチーズ、ロカマドゥールの産地でもありますが、何よりもまず、中世以来の伝統がある黒い聖母の巡礼地として知られます。


【ロカマドゥールの教会群と黒い聖母】

 ロカマドゥールの岩山はノートル=ダム教会(聖母教会)、サン・ミシェル教会(聖ミカエル教会)、サン・ソヴール(St. Sauveur)教会(救世主教会)、サン・アマドゥール教会(聖アマドゥール教会)を含む七つつの教会群、現在は使われていない十二の教会、頂上にあって教会を守護する城砦で成り立っています。

 教会群の中心をなすのが、1479年に現在の形になったノートル=ダム教会です。岩山を穿ったこの教会には、聖アマドゥール自身の手によると伝えられる高さ七十六センチメートルのクルミ製聖母子像「ノートル=ダム・ド・ロカマドゥール」が安置されています。この像はフランスでも最も有名な黒い聖母のひとつで、サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路のひとつがここを経由することもあって、あらゆる階層の巡礼者を集めてきました。


 ロカマドゥールの聖母


 「ルカによる福音書」十九章一節から十節に、エリコの徴税人ザアカイが登場します。1172年頃に成立したと考えられる「ロカマドゥールの聖母奇跡譚」によると、388年から死去の年の418年までオセール司教を勤めたとされる聖アマドゥール(St. Amadour/Amator/Amatre)はザアカイと同一人物とされ、この聖アマドゥールまたはザアカイが聖地ロカマドゥールを開いたことになっています。

 「ロカマドゥールの聖母奇跡譚」によると、ザアカイはキリストの顔が写し取られた奇跡の布で知られる聖ヴェロニカの夫でした。ザアカイ、ヴェロニカ夫妻は迫害を受けて小船でパレスティナを脱出し、天使に導かれてアキテーヌに上陸します。そこでアキテーヌの使徒と呼ばれる初代リモージュ司教聖マルシアル(St. Martial de Limoges)と合流し、ローマに移動してペテロとパウロの殉教を見届けます。夫妻がフランスに戻った後、妻のヴェロニカが亡くなり、夫ザアカイあるいは聖アマドゥールは山奥のロカマドゥールに移って聖母に捧げた教会堂を建て、しばらくしてその地で亡くなりました。

 「ロカマドゥールの聖母奇跡譚」の成立以前に聖アマドゥールに関する記録が見当たらないこと、聖マルシアルは実在の人物ではあっても三世紀の人であること等から、上の奇跡譚が虚構であることは明らかです。しかしながら聖地ロカマドゥールの起こりに関して、史実はいまだ明らかになっていません。


(下) 聖アマドゥールの墓所 二十世紀初頭の絵葉書 当店の商品です。




 ロカマドゥールへの巡礼は、十二世紀以来、中世を通じて盛んでしたが、1562年にプロテスタントによる破壊行為で聖地が大きな損害を蒙り、その後長らく下火となっていました。ロカマドゥールの聖地はフランス革命の際にも損害を蒙りましたが、十九世紀半ばに大規模な修復が行われて、昔日の繁栄を取り戻しました。

 ロカマドゥールの聖地には巡礼者による捧げ物(ex voto エクス・ヴォートー)が多くあり、牢から解放された人が奉献した鉄鎖や、難破を免れた船乗りが奉献した船の模型、感謝の言葉を刻んだ多数の銘板などが見られます。特に船乗りたちのロカマドゥールの聖母に対する崇敬は篤く、フランス国内外のいくつもの教会がこの聖母に捧げられています。


(下) ブルターニュ地方圏フィニステール県のカマレ=シュル=メール(Camaret-sur-Mer)にあるノートル=ダム・ド・ロカマドゥール(Notre-Dame de Rocamadour)




(下) カナダ、ケベックにあるノートル=ダム・ド・ロカマドゥール(Notre-Dame-de-Roc-Amadour)





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