美麗メダイユ 立体的で精緻な彫刻の芸術品 《ノートル=ダム・ド・ルルド ルルドの無原罪の御宿り 17.0 x 14.8 mm》 白百合と神秘の薔薇の聖母 フランス 1910
- 30年代
突出部分を含むサイズ 縦 17.0 x 横 14.8 mm
ルルドの聖母を主題に製作された美麗小型メダイユ。精緻かつ細密な浮き彫りを、いずれの面にも施しています。およそ九十年前のフランスで制作された品物ですが、たいへん珍しいことに未使用のまま保管され、保存状態は極めて良好です。
一方の面の浮き彫りは、ヴェールを被った少女マリアの横顔を薔薇の花々が取り囲んでいます。
マリアは救い主の母となる特別な女性として、原罪を持たずに母の胎に宿りました。それゆえマリアは無原罪の御宿りと呼ばれます。薔薇は聖母を象徴するもののひとつです。しかるにユダヤ教の象徴体系において、薔薇の棘は罪とその呪い(罪がもたらす結果)を表します。それゆえ罪を持たない聖母は棘の無いロサ・ミスティカ(羅 ROSA MYSTICA 神秘の薔薇)として表されます。本品において薔薇に囲まれるマリアは、ロサ・ミスティカとして図像化されています。
マリアが原罪を引き継がずに宿ったとする考え方には中世以来の伝統がありますが、この考え方には異論も根強く、カトリック教会内でも長いあいだ定説とはなりませんでした。しかるにローマ司教(教皇)ピウス九世は、1854年12月8日、無原罪の御宿りがカトリック教会の教義であることを正式に宣言します。それから三年余り後の
1858年 3月25日、ルルドの聖母は幻視者ベルナデットに名を問われて、無原罪の御宿りを名乗りました。それゆえ少女マリアをロサ・ミスティカとして表した本品は、ノートル=ダム・ド・ルルドのメダイにふさわしいといえます。
マリアを象徴する花としては、薔薇にならんで百合もよく知られています。ヨーロッパ中世の神学者たちは旧約聖書の記述を新約の前表として解釈しました。クレルヴォーの聖ベルナールをはじめとする神学者たちによると、「雅歌」の若者は神、花嫁はマリアを表します。「雅歌」二章一節から六節をノヴァ・ヴルガタと新共同訳により引用します。第二節は若者の歌、それ以外は乙女の歌です。
NOVA VULGATA | 新共同訳 | ||||
1. | Ego flos campi et lilium convallium. |
わたしはシャロンのばら、 野のゆり。 |
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2. | Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. |
おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。 |
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3. | Sicut malus inter ligna silvarum, sic dilectus meus inter filios. Sub umbra illius, quem desideraveram, sedi, et fructus eius dulcis gutturi meo. |
若者たちの中にいるわたしの恋しい人は 森の中に立つりんごの木。 わたしはその木陰を慕って座り 甘い実を口にふくみました。 |
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4. | Introduxit me in cellam vinariam, et vexillum eius super me est caritas. |
その人はわたしを宴の家に伴い わたしの上に愛の旗を掲げてくれました。 |
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5. | Fulcite me uvarum placentis, stipate me malis, quia amore langueo. |
ぶどうのお菓子でわたしを養い りんごで力づけてください。 わたしは恋に病んでいますから。 |
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6. | Laeva eius sub capite meo, et dextera illius amplexatur me. |
あの人が左の腕をわたしの頭の下に伸べ 右の腕でわたしを抱いてくださればよいのに。 |
神の花嫁マリアは上記に引用した第二節において、茨の中に咲きいでたゆりの花、と讃えられています。それゆえ本品メダイの浮き彫りにおいて、薔薇の花々に囲まれる少女マリアはロサ・ミスティカでありつつ、馥郁と香る気高き白百合としても重層的に表されています。
上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。マリアの顔の各部は一ミリメートルに満たないサイズであり、これは百分の一ミリメートルのオーダーで浮き彫りが制作されていることを示します。マリアを囲む薔薇は花、つぼみ、葉とも写実的に表現され、如何なる細部もおろそかにされていません。フランスのアンティーク・メダイユには数多くの美しい作品がありますが、本品はその中でもとりわけ優れた作品のひとつです。
もう一方の面には右腕に長いロザリオを掛けて立つルルドの無原罪の御宿りと、やはり右腕にロザリオを掛けてひざまずくベルナデットが浮き彫りにされています。人物の姿勢と配置は様式化されていますが、いずれの人物像も驚くべき写実性を以て制作されています。
この面にはノートル=ダム・ド・ルルドが「われは無原罪の御宿りなり」と名乗ったときの様子が、定型的図像で表現されています。ベルナデットの証言によると、ルルドの岩場に出現したマリアは十代半ばの少女でした。またマリアの姿はベルナデットにしか見えていませんでした。しかしながら本品メダイの浮き彫りにおいて、マリアは優れた信仰と聖徳を反映するように、気高い雰囲気の成人女性として表されています。
聖母が出現したルルドの岩場には、ジョゼフ=ユーグ・ファビシュ(Joseph-Hugues Fabisch, 1812 - 1886)が制作したノートル=ダム・ド・ルルド像が安置されています。本品メダイの浮き彫りはファビシュの像を写しており、裸足で茨の茂みに立つマリアの足に大輪の薔薇が咲いています。これは無原罪のマリアが茨の棘に象徴される罪に傷つかないこと、マリア自身が棘を持たないロサ・ミスティカであることを表しています。
上の写真に写っている定規のひと目盛は、一ミリメートルです。聖母とベルナデットの顔は高さ一ミリメートル以下ですが、目鼻立ちが整っているばかりか、天に目を向けて名乗る聖母の神々しい表情と、聖母に視線を向けて祈るベルナデットの敬虔さが手に取るように表現されています。ごつごつとした岩肌、衣やヴェールの襞、ロサ・ミスティカなる聖母の足元の薔薇も正確に再現されています。ロザリオのビーズは直径
0.1ミリメートル以下ですが、ひとつひとつが球形に整えられています。
上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。
本品はおよそ九十年前に制作された真正のアンティーク品ですが、これまで大切に保管されてきたために、それほどまでに古いとは信じがたいほど良好な保存状態です。いずれの面の突出部分にも摩耗は見られず、制作されたままの状態を保っています。特筆すべき問題は何もありません。本品は小さなサイズでありながら厚みがあるので、全体が丸みを帯びて愛らしいメダイに仕上がっています。
1910年代から 30年代は第一次世界大戦を挟み、フランスが全面戦争の痛手からようやく立ち直ろうしていた時代です。細部まで心を込めて制作された本品メダイユには、ルルドの聖母に最高の美を捧げようとする当時のフランス人の篤い宗教心が籠められています。
本体価格 11,800円 販売終了 SOLD
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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