神と対話する少女 《デヴォシオン DÉVOTION 敬神》 十九世紀の石版画 42 x 32 cm フランス


聖画の概寸 横 32 x 縦 42センチメートル

フレームの概寸 横 42 x 縦 53.5センチメートル  厚さ 5センチメートル


フランス  19世紀後半



 祈る少女を描いた石版画を中心に、ロザリオとスカプラリオ各一点で構成したルリケール(仏 reliquaire)。石版画は第二帝政期(1862 - 1870年)頃のフランスで製作されたもので、横 32センチメートル、縦 42センチメートルと、この時代の石版画には異例の大きなサイズです。おそらく修道女による手仕事の装飾が、聖画の周囲を飾っています。





 聖画には純白の衣を身に纏って神に祈る少女が描かれています。少女を囲む楕円の枠は、あたかもゴシック聖堂の薔薇窓のように、トラスリ(仏 tracerie トレイサリー、石の透かし細工)に支えられています。薄い木片を糸でかがった装飾が聖画を囲み、四隅にはリボンが結ばれています。

 木片の装飾と四隅のリボンは歳月の経過で傷んでいます。聖画の艶出しに塗られていたニスも、古い時代の油絵と同様に、歳月によって細かくひび割れています。しかしながら聖画が刷られた紙は良質の中性紙であり、酸性紙に見られるような劣化は一切ありません。





 少女は天上から降り注ぐ金色の光に包まれています。純白の衣を着て金色の十字架型ペンダントを下げたその姿は、初聖体を受けるコミュニアント(仏 communiante)のようにも見えます。しかしながら少女はコミュニアントのヴェールと手袋を身に着けていません。聖画の最下部、木片装飾で隠れている部分に、フランス語(DÉVOTION)、スペイン語(DEVOCIÓN)、ドイツ語(FRÖMMIGKEIT)、イタリア語(DEVOZIONE)によって「敬神」(信心)と書かれています。これらはすべて女性名詞ですから、少女は特定の人物ではなくて、「敬神」(信心)の寓意と考えられます。





 聖画にはロザリオ一点とスカプラリオ一点、青色のヴェルヴェットを使用して額装しています。ロザリオとスカプラリオは当店で付加したもので、いずれも聖画と同時代に製作されたフランスのアンティーク品です。

 ロザリオはガラス製ビーズを使用し、金属部分はブロンズでできています。ガラス製ビーズはアメシスト色を模した美しい紫色で、8.5ミリメートル前後の直径があります。は天の青と地の赤の中間色であるゆえに、「天と地を繋ぐ祈り」を優れて象徴する色です。またブロンズは十九世紀のメダイやロザリオによく使われた素材ですが、ブロンズの金色は天の栄光を象徴する色であり、聖画の少女に降り注ぐ天上の光と同じ色です。このロザリオは五十九個のビーズで構成する「聖母のシャプレ」で、クール(cœur センター・メダル)はマリアの頭文字エム(M)を模ります。ブロンズの "M" は美しい透かし細工で、二十世紀のものと比べると上下が逆になっています。





 大きめのガラスビーズ、倒立したクール、透かし細工の "M" は、いずれも十九世紀のフランスで製作されたロザリオの特徴です。上の写真は本品と同時代のロザリオで、当店の商品です。ビーズがウラリンであることを除けば、本品と良く似ています。




(上) マリアの汚れなき御心 ブアス=ルベルによるカニヴェ 108 x 68 mm フランス 1860年代後半 当店の商品です。


 スカプラリオは修道女、あるいは第三会会員が丁寧な手作業で作ったもので、黒い布に青い小花を刺繍し、一方の布には十字架を、もう一方の布にはマリアの汚れなき御心をあしらっています。マリアの汚れなき御心を取り巻く薔薇の冠(ロサーリウム、ロザリオ)は「エックス」(X)の形で表現されています。同じ形が十字架の交差部にも刺繍されていますので、十字架に薔薇がかかっていることがわかります。十字架と薔薇はよく見られる組み合わせです。ロザリオはまさに十字架と薔薇を組み合わせた信心具ですし、メダイや聖画にも十字架と薔薇が頻出します。





 上の写真は本品と同時代のスカプラリオで、当店の商品です。黒い布に刺繍を施してあり、本品と良く似ています。





 本品は額装済で、額を含めた大きさは横 42センチメートル、縦 53.5センチメートル、厚さ 5センチメートルと見応えのあるサイズです。額は新品ですが、材質は昔ながらの木材で、パーティクルボードやファイバーボードではありません。他の額を希望される場合はご相談に応じます。

 本品の石版画は十九世紀後半のフランスで刷られたアンティーク版画です。十九世紀のフランスでは、カニヴェをはじめ、小さなサイズのアンティーク版画が多く制作されました。しかしながらこのように大きなサイズの作品はたいへん珍しく、筆者自身、ほとんど目にすることがありません。

 本品は第二帝政期(1852 - 1870年)頃のものと思われます。絵が上品で美しいことに加え、丁寧に曲げた薄い木片を一つずつ手作業で聖画の周囲に縫い付けた「アール・ポピュレール」(art populaire 民衆芸術)の作品でもあり、カトリック信仰が復興したフランスで、神とキリスト、聖母に頼る人々の心を映す鏡となっています。





48,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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