愛と義のミステリウム 百合とあざみの十字架 19世紀フランスの銀無垢クルシフィクス 45.6 x 27.8 mm


突出部分を含む縦横のサイズ 45.6 x 27.8 mm

フランス  19世紀半ばから後半



 19世紀半ばから後半のフランスで制作された美麗なクルシフィクス。信心具の素材として最も高級な800シルバーを用いて非常に凝った細工の十字架を制作し、別作のコルプス(キリスト)を溶接しています。フランスにおいて800シルバーを示す「蟹」のポワンソン(ホールマーク)が、上部の環の裏側に刻印されています。





 本品はあざみ、あるいはアカンサスでフルール・ド・リスを模(かたど)り、これを四つ集めて十字架としています。

 アカンサスは古代ギリシア以来地中海沿岸を中心とするヨーロッパにおいて多用されてきたモティーフですが、十字架そのものをアカンサスで構成するのは伝統的美術に見られない意匠です。本品が作られるよりも数十年前、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパは、植物文を多用する日本美術、及びその影響を受けて誕生したアール・ヌーヴォー様式に席捲されました。十字架そのものをアカンサスで構成した本品の意匠には、日本美術及びアール・ヌーヴォーの強い影響が感じられます。

 ただし本品は純粋な美術品ではなく信心具ですので、美的効果のみを狙ってアカンサスを多用しているのではなく、あざみあるいはアカンサスで十字架を模ることにより、救世主がアダムの罪ゆえに受難し給うたことを表しています。


 本品のコルプス(キリスト)は「クリストゥス・ドレーンス」(CHRISTUS DOLENS ラテン語で「苦しむキリスト」の意)という様式で、キリストは頭部を肩の上に傾け、苦痛に身をよじっています。キリストの顔には苦悶の表情が表れています。

 「クリストゥス・ドレーンス」以外の磔刑像の類型には、キリストの表情に肉体的苦痛を表現しない「クリストゥス・トリウンファーンス」(CHRISTUS TRIUMPHANS ラテン語で「勝利するキリスト」の意)、及び絶命後のキリストを表した「クリストゥス・パティエーンス」(CHRISTUS PATIENS ラテン語で「(死に)屈するキリスト」の意)がありますが、本品が採用する「クリストゥス・ドレーンス」は救い主の苦しみを最もよく感じさせる様式であり、救い主に愛と感謝を捧げる気持ちを、見る者の心から最もよく引き出す様式であるといえます。


 本品において、あざみは十字架の末端にフルール・ド・リスを形作っています。その内側にも小さなフルール・ド・リスが彫刻されています。

 フルール・ド・リスは百合と同様に「罪の無さ」と「神にすべてを委ねる信仰」の象徴であり、それとともに「三位一体」及び「三位一体の各位格に関係が深い徳」(父なる神の義、子なる神の智慧、聖霊の愛)をも表します。本品においてアカンサスが形作るフルール・ド・リスは、罪なき救い主が父なる神の意思に従って受難し給うたことを表すとともに、「罪びとを裁く義」と「罪びとをかばう愛」がイエズスの受難において一つとなった、というこの上なく神秘的な智、最大のミステリウムをも表しています。





 十字架の交差部に表された救い主の後光は、顕示台に入れられたホスチア(聖体)のようにも、太陽のようにも見えます。これをホスチアと見れば、キリストがいまもミサのたびごとに受難しておられることを思い起こさせる意匠と解釈できます。一方、これを太陽と見れば、「ソール・ユースティティアエ」(SOL JUSTITIAE ラテン語で「義の太陽」)、あるいは「ソール・インウィクトゥス」(SOL INVICTUS ラテン語で「不敗の太陽」)なるキリストを表していると考えられます。





 本品は銀無垢の高級品でありながらも大きめのサイズです。しかしながらたいへん華やかな細工ゆえに、女性が使用されても大きすぎる感じは受けません。また美麗な意匠のなかに深い象徴性を秘めている点も魅力的です。いまから百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず保存状態は良好です。コルプスの溶接に緩みはなく、その他の点でも特筆すべき問題はありません。





16,800円 販売終了 SOLD

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