リヨンの聖母、ノートル=ダム・ド・フルヴィエールを高浮き彫りで表した作品。ノートル=ダム・ド・フルヴィエールはロマネスクの聖母子像で、リヨン市街を一望するフルヴィエールの丘に建つバシリカに安置されています。聖母子像は首に聖心を掛け、天上にあって戴冠しています。足下の雲と天使は、聖母子が天上にあることの表現です。衣は聖母子の一体性を強調するタイプで、刺繍と房で飾られています。聖母は十字架も身に着けており、その下には星が見えます。
聖母の名前マリアはヘブライ語のミリアムをギリシア語で表記したものですが、ミリアムという名前の解釈から、聖母は「海の星」(MARIS STELLA)と呼ばれています。さらに聖母は「ヤコブの星」(STELLA JACOBI)、「明けの星」(STELLA MATUTINA)、「迷わざる星」(STELLA
NON ERRATICA) 等とも呼ばれることから、星は聖母マリアの象徴となっています。衣の下方には正面に聖心があり、頭上のアーチにも七つの聖心が並んでいます。
このような彫刻作品は鋳型に流し込んで作ることができず、彫刻家が一点一点を手作業で製作しています。第二帝政期、カトリック信仰が復興した時代に、「悔悛のガリア」(GALLIA POENITENS) なるフランスが生み出した、優れた芸術作品といえましょう。