バック通の聖母　数知れぬ祈りを呼吸した小さなメダイ　フランス製アンティーク　14.0 x 8.0 mm


突出部分を含むサイズ　縦 14.0 x 横 8.0 mm

フランス　　1910 - 20年代

　ごく小さなサイズの不思議のメダイ。ブロンズに銀めっきを掛けてありますが、めっきはほとんど残っていません。上部の環にあった「フランス」(FRANCE) の文字も、磨滅してほとんど消えかけています。





　メダイの表（おもて）面には球体の上で蛇を踏みつける無原罪の御宿り（聖母マリア）が浮き彫りにされています。罪人を招くように前方に向けられた聖母の両手からは、恩寵の光が地上に降り注いでいます。聖母に執り成しを求めるフランス語の祈りが、極小の文字により、聖母の周囲に刻まれています。

　　Ô Marie conçue sans péché, priez pour nous qui avons recours à vous.　　罪無くして宿りたまえるマリアよ、御身に頼るわれらがために祈りたまえ。





　メダイの裏面には「マリ・イマキュレ」（Marie Immaculée　フランス語で「無原罪のマリア」）の頭文字 "M I" と十字架のモノグラム（組み合わせ文字）、左下にイエズスの聖心、右下にマリアの聖心を浮き彫りにし、十二個の星で囲んでいます。十二個の星の冠は「ヨハネの黙示録」12章1節において女が被っているものです。

　また、天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。（「ヨハネの黙示録」12章1節　新共同訳）


　本品の保存状態は決して良いとは言えませんが、筆者（広川）はこのように磨滅したメダイに、歴史と共に歩んだ物にしかない魅力を感じます。

　奈良や京都の古刹に安置された仏像は、制作された当時には、あるいは鍍金されて光り輝き、あるいは極彩色に彩られていました。ミロのヴィーナスには両腕があり、サモトラケのニケには両腕と頭部があって、おそらくいずれも彩色されていました。それゆえこれらの文化財の現状は、良くない保存状態であるといえます。しかしながら、破損し、めっきが剥がれ、色彩が褪色した像を見ても、われわれは美しいと感じ、ときには神々しさに打たれて手を合わせたくなります。それとは逆に、これらの像を制作された当時の状態にもしも復元するならば、われわれは大きな違和感を覚えるに違いありません。


　Νίκη της Σαμοθράκης


　古い美術品や工芸品は時代を経て独自の古色を獲得し、その古色が品物の個性となって、「置き換えの効かないもの」「掛け替え（代替品）の無いもの」「何物にも替え難いもの」となります。古い美術工芸品を原状に復元すれば違和感が生じるのは、その品物が持つ「何物にも替え難い個性」が払拭されてしまうからでしょう。





　このように磨滅したメダイには、新品やデッドストック品には無い個性、同じ種類の他の品物で置き換えることが出来ない独自の魅力があります。古い物を愛する筆者は、このようなメダイを眺めていて飽きません。掌に載せて優しい丸みと温もりを感じ、時が経つのを忘れて愛惜します。

本体価格　3,200円　販売終了　SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール（procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp）にてご注文くださいませ。




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