繊細かつ緻密な透かし細工が美しい聖母マリアのメダイ。メダイ本体と上部の環が、いずれも四つ葉形をした可愛らしいデザインです。写真ではよくわかりませんが、緻密な銀細工が光を細かく反射して、たいへん美しく輝きます。
表(おもて)面は四つ葉形の画面に聖母マリアの立ち姿を描きます。戴冠した聖母は右腕にロザリオを掛け、胸の前に両手を合わせて天を仰いでいます。これは
1858年3月25日、16度目の出現の際に、少女ベルナデットに名前を問われて、「わたしは無原罪の御宿りです。」(Je suis l'Immaculée Conception.) と答えたルルドの聖母(ノートル=ダム・ド・ルルド)の姿です。
ルルドの聖母の両横には、聖母を象徴する百合が咲いています。百合が聖母を象徴するのは、次に示す「雅歌」2:2のテキストによります。
Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. (Nova Vulgata) おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。(新共同訳)
表(おもて)面中央の四つ葉形は、四つのフルール・ド・リス(fleurs-de-lys 百合文またはアヤメ文)、及び十二輪の薔薇に縁取られています。正典福音書の数が四つであることから、キリスト教図像において「四」は福音を象徴します。実際、聖母の頭上左右及び足下左右に配置された四つのフルール・ド・リスは、ロマネスク教会建築の壁画や壁面彫刻に見られるテトラモルフ(四人の福音記者)を連想させます。フルール・ド・リスがフランスの象徴であることはよく知られていますが、三枚の花弁を有するゆえに、三位一体の象徴でもあります。
このメダイに表された四つのフルール・ド・リスの花弁は合計十二枚であり、薔薇の数も十二輪です。キリスト教の象徴体系において、「十二」という数は使徒たち、ひいては全教会の象徴でもありますから、このメダイは範と仰ぐ聖母を中心に集う全キリスト教徒の教会を表すとともに、教会を導く聖母マリアを表していると解釈することができます。
上部の環に、800シルバー(純度800/1000の銀)を示すフランスのホールマーク、及び銀製品工房のマークが刻印されています。
裏面には、次の言葉がフランス語で刻まれています。
Souvenir de Notre-Dame de Lourdes ルルドの聖母(ノートル=ダム・ド・ルルド)巡礼記念
本品は突出部分の摩耗もごく軽微です。およそ百年も前に制作されたものとは信じがたいほど、非常に良好なコンディションです。