稀少品　ルイ・オスカル・ロティ作　「神が私に命じた給うたのです」　ジャンヌ・ダルク列福記念　大型メダイユ　直径 29.0 mm


上部の環を除く直径　29.0 mm

フランス　　1909年

　フランス救国の聖女ジャンヌ・ダルク (Ste. Jeanne d'Arc, 1412 - 1431) は、1909年4月18日、教皇ピウス10世により、パリ司教座聖堂ノートル＝ダム（ノートル＝ダム・ド・パリ）で列福されました。本品は、フランスのメダイユ彫刻界において最も重要な芸術家のひとり、ルイ・オスカル・ロティ (Louis Oscar Roty, 1846 - 1911) が、ジャンヌ列福を記念して制作したもので、巨匠オスカル・ロティの芸術の集大成ともいえる最晩年の傑作です。

　メダイの表（おもて）面には、1431年5月30日、ルーアン司教座聖堂前広場で火刑柱に縛り付けられた聖女ジャンヌが浮き彫りにされています。足下の薪に放たれた火が勢いを増し、渦を巻くようにジャンヌの体に迫ります。下から吹き上げる熱風により、ジャンヌの髪は宙に浮きあがっています。





　恐ろしい苦痛に苛（さいな）まれるジャンヌの視線は真っ直ぐに天を仰いでおり、聖女の魂が既に地上を棄てて、ひたすら天上に焦がれていることがわかります。メダイ右上に微かな浅浮き彫りで表現された鳩は、聖女の許に舞い降りた聖霊と見ることも可能ですが、聖女の視線が鳩に向いていないこと、鳩は上方に向かって飛び立つように見えることからも、むしろ天上に向かうジャンヌの魂と捉えるほうが妥当でしょう。ジャンヌの周囲には、火刑の際にジャンヌが発した最後の言葉が刻まれています。

　　Ma mission était de Dieu.　　神が私に命じ給うたのです。

　画面の左下付近に、ロティの署名 (O. Roty) が刻まれています。





　メダイのもう一方の面には、ドンレミの村で神の啓示を受ける少女ジャンヌが刻まれています。ジャンヌは12歳の頃以来、天からの声を聞き幻視を体験することがたびたびありました。ジャンヌはそれらの声や姿を大天使ミカエル、 305年頃に殉教したアレクサンドリアの聖カタリナ、310年頃に殉教したアンティオキアの聖マルガリータからの啓示であると考えていました。

　本品において、ジャンヌは羊飼いの少女として表されています。ジャンヌの後ろには台が見えます。ジャンヌは羊の番をしながらここに腰掛けて糸を紡いでいましたが、天使の出現に驚いて思わず立ち上がったようです。ジャンヌの足下には、ジャンヌが取り落とした糸巻き棒が見えます。

　ジャンヌの周囲に咲く白百合は、少女ジャンヌの純潔を象徴しています。またジャンヌを慕って寄り添う子羊は、優しいジャンヌの人柄をうかがわせるとともに、ジャンヌに導かれるべきフランスをも象徴しています。啓示を受けるジャンヌは両腕を広げ、真っ直ぐに天を見上げて天使の言葉に耳を傾けています。雲間から出現したミカエルは、ジャンヌに剣を差し出しつつ、次の言葉を発しています。

　　Va, fille au grand coeur.　　娘よ、大いなる勇気をもって行け。

　メダイユの下方、ジャンヌの腰掛けに、オスカル・ロティのサイン (O. Roty) が刻まれています。ルイ・オスカル・ロティは、ジュール＝クレマン・シャプラン (Jules-Clement Chaplain, 1839 - 1909)、アレクサンドル・シャルパンティエ (Alexandre Louis Marie Charpentier, 1856 - 1909) とともにフランス、メダイユ彫刻界の重鎮として活躍し、1880年代から1890年代にかけて数々の美しい作品を製作しました。しかしロティは20世紀に入った頃から体調を崩して新しい作品をほとんど製作できなくなり、このメダイユを製作したおよそ二年後、1911年3月23日にパリで亡くなります。シャプランとシャルパンティエはいずれもロティよりも先に亡くなっており、ロティの死は、三人の巨匠が並び立ったフランス、メダイユ彫刻の黄金時代に終止符を打つ出来事となりました。


　ルイ・オスカル・ロティ　1897年頃の写真


　本品が制作された1909年は、シャプランとシャルパンティエの没年であり、ロティの最晩年にあたります。フランス救国の聖女ジャンヌの悲劇的な死を描いた本品は、巨匠ロティの白鳥の歌であり、19世紀フランスに花開いたメダイユ芸術の到達点ということができます。





　本品は113年前のフランスで制作された古いメダイであり、突出部分に銀めっきの剥がれと軽度の磨滅が見られますが、表（おもて）面に彫られたジャンヌの髪や衣の襞、裏面の白百合や天使から発する光など、細部までよく残っており、十分に良好な保存状態です。この程度の磨滅は、真正のアンティーク工芸品ならではの古色、趣（おもむき）としてお楽しみください。

　拡大写真では実物の金属光沢が再現できず、磨滅した箇所も目立ちますが、肉眼で実物を見ると美しく、銀の金属光沢とブロンズの金属光沢が交り合って、逆巻く炎の反映がゆらめき躍るようにも見えます。普通のメダイにくらべてかなり大きなサイズであるゆえに、厚み、重みもあり、重厚な工芸品に仕上がっています。

本体価格　38,800円　販売終了　SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール（procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp）にてご注文くださいませ。




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