愛徳姉妹会の聖女、カトリーヌ・ラブレ (Ste. Catherine Labouré, 1806 - 1876) のメダイ。カトリーヌ・ラブレは、1830年、パリ、バック通りの愛徳姉妹会礼拝堂で幻視した聖母から、「不思議のメダイ」の制作を命じられたことで知られています。カトリーヌ・ラブレは1947年7月27日、ピウス12世によりローマで列聖されました。本品はおそらく 1947年の列聖時に制作されたものです。不思議のメダイは数多くの作例がありますが、カトリーヌ・ラブレその人をテーマに取り上げたものは稀少です。
メダイの一方の面には、愛徳姉妹会の修道衣を身に着けたカトリーヌの姿が、立体的な浮き彫りで表されています。愛徳姉妹会の大きなコワフ(coiffe 頭巾)を被り、腰にロザリオを提げたカトリーヌは、胸の少し下あたりに手を組んで、穏やかな表情でこちらを見ています。カトリーヌの半身像を取り巻くように、聖女に執り成しを求める祈りがフランス語で刻まれています。
Sainte Catherine Labouré, priez pour nous. 聖カトリーヌ・ラブレよ、われらのために祈りたまえ。
本品の直径は 16.8ミリメートルと大きくはありませんが、カトリーヌの浮き掘りは立体的で力強く、しっかりと前を見据えて立つカトリーヌの姿に、聖女の魂が持つ信仰の強さ、神に対する感受性の強さが良く表現されています。
もう一方の面は「無原罪の御宿り」なる聖母マリアの横顔が浮き彫りで表されています。目を閉じて神との対話に専心するマリアは、アダムとエヴァ以来、ただひとり自分だけが原罪の継承を免れたことの意味に思いを潜め、神に問いかけているように見えます。この聖母像はもう一方の面のカトリーヌ像と異なる彫刻家の作品で、神秘的な静謐さを感じさせる穏やかな作風に仕上がっています。
マリアの肩あたりに、メダイの製造国を示す「フランス」(FRANCE) の刻印があります。
本品は70年近く前のフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、保存状態は良好です。カトリーヌ像の突出部分であるコワフの左前、及び胸の前に組んだ手にめっきの磨滅がありますが、肉眼で実物を見ても判別はできず、たいへん美しい状態です。一枚のメダイの両面が大きく異なる作風に基づきつつも同等の丁寧さで制作され、どちらを前に向けて着用しても美しいペンダントとなります。