19世紀末または20世紀初頭のフランスで作られたブロンズ製メダイ。七つの悲しみの聖母のロザリオに使われるのと同種のメダイですので、もともとロザリオを構成していたメダイを独立させたものかもしれません。
一方の面には、浮き彫りによって悲しみの聖母が表されています。ヴェールを被った聖母は、7つの悲しみを表す7本の剣で汚れ無き御心を刺し貫かれながら、手を組み合わせてじっと耐えています。聖母を囲むように、ラテン語で「マーテル・ドローローサ」(MATER DOLOROSA
悲しみの聖母)と記されています。
もう一方の面にはイエズス・キリストの受難の場面が浮き彫りで描き出されています。十字架上のイエズスを見上げ、手を絞り身をよじって悲嘆にくれる聖母を、使徒ヨハネが後ろから抱き支えています。マグダラのマリアはイエズスの足下で十字架に取りすがって泣いています。
(下・参考画像) Matthias Grünewald, Crucifixion (The Isenheimer Altarpiece), 1510-15, oil on wood, Musée d'Unterlinden, Colmar
この光景を取り囲むように、次の言葉がラテン語で記されています。
SIC DEUS DILEXIT. 神はこれほどまでに(世を)愛したもうた。
これはヨハネによる福音書3章16節からの引用です。したがって、上で仮に「これほどまでに」と訳した "SIC" は、下に示した原テキストの
"UT" 以下の部分を含意します。すなわち原テキストの文脈に即し、"SIC" の指示する内容を明示して訳すならば、「神はその独り子をお与えになったほどに(世を)愛された。」ということになります。原テキストは次の通りです。
Sic enim dilexit Deus mundum, ut Filium suum unigenitum daret, ut omnis,
qui credit in eum, non pereat, sed habeat vitam aeternam. (Nova Vulgata)
神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。(新共同訳)
商品写真は実物のおよそ50倍の面積に拡大していますので、突出部分の摩耗がよく判別できますが、肉眼で見ると十分に美しいコンディションです。稀少性に加えて、真正のアンティーク品ならではの古色が深い趣を醸しています。