裏面に 1877年の年号と日付が書き込まれているフランスのカニヴェ。一般的なカニヴェに比べて小さなサイズですが、レース状部分の面積が大きく、カットとエンボスのパターンもたいへん凝っています。
表(おもて)面中央部分に金色の縁取りをし、その中にオー・フォルト(eau forte エッチング)による縦 33ミリメートル、横 22ミリメートルの聖画を貼り付けています。聖画には、1846年9月19日、フレンチ・アルプスの高地の村、ラ・サレット
(La Salette) において、牛飼いの子供二人に出現したノートル=ダム・ド・ラ・サレット(ラ・サレットの聖母)と、出現を受けた子供たちが描かれています。聖母は直前まで岩に腰かけて泣いていましたが、子供たちが近づくと立ちあがり、人々に悔い改めを求めるメッセージを、ふたりの子供に託しています。
聖画の最下部にはフランス語で「ノートル=ダム・ド・ラ・サレット」(Notre-Dame de la Salette ラ・サレットの聖母)と書かれています。また聖画の左横には次の言葉がフランス語で書かれています。
Quatre-temps, vigiles jeuneras. 四季の斎日とその前日には断食をしなさい。
聖画の下には版元の名前が「シャルル・ルタイユ パリ」(Charles Letaille, à Paris) と記されています。シャルル・ルタイユ社
(Charles Letaille Éditeur, 1839 - 1873) はパリのサン・ジャック通50番にあったカトリック関連書籍の出版社で、数多くの小聖画の版元でもありました。
カニヴェの裏面には何も刷られていませんが、インクを使った手書きの文字で次のように書き込まれています。
à Mr. Picard ピカール氏に
Souvenir de ma ___ 私の__の記念に ※
25 mai 1877 1877年5月25日
___________ (名前)より ※
E. T. (?)
上記のうち、※の部分は判読できませんでした。最後の "E. T." も常套的な文言ではなく、何の意味かわかりません。おそらく当事者同士にしかわからない略記でしょう。
上に示した三枚の写真は、本品カニヴェの額装例です。これと同じ棹(縁の素材)を使用した額縁は或る程度の数量が生産されていますが、本品カニヴェは
87 x 55ミリメートルと小さなサイズですので、量産品はサイズが大きすぎます。今回は本品カニヴェに適合する小さめサイズの額を、一点のみ制作してもらいました。この額の本体価格は
11,000円(額、ベロア張りマット、工賃を含む)です。
カニヴェの保存状態は、きわめて良好です。130年以上も前のものにもかかわらず、それほどまでに古いとは俄かに信じがたいほど綺麗な状態です。特筆すべき問題は何もありません。