エッチング　etching

　蝋で覆って保護した金属板の表面を引っ掻くと、その部分の蝋がはがれます。次にこの金属板の表面を強い酸にさらすと、蝋がはがれた部分が腐食され、金属板に溝が刻まれます。このようにして版を製作する技法をエッチングと呼びます。



上の版画は、エッチングのさまざまな工程を表しています。右から左に

・版となるべき金属板の表面を調える。

・版の裏側を叩いて修正する。

・金属板に煤を付けて、絵の下地を作る。

・蝋で画面の一部を囲み、腐食させた後で腐食液を除去する。

・前に立てた鏡を見ながら、蝋を塗った金属板の上に左右を反転させた絵を描く。

・絵を描いた金属板の表面に腐食液を流し掛け、あるいは金属板の表面に溜めた腐食液を揺らし、

金属板を腐食させて版を作成する。

・要所にエングレーヴィングを施して版を完成させる。

窓際に大きなスクリーンを設置しているのは、光を拡散させるためです。


　溝に入ったインクが紙に転写される凹版（インタリオ）であるという点で、エッチングと金属版エングレーヴィングは共通しています。ただしエッチングはスティール・エングレーヴィングのように人間の力で金属板を彫るわけではなく、紙にスケッチするときのような通常の筆圧で金属板表面の蝋を引っ掻いて製作できますから、エングレーヴィングよりもやわらかい表現が可能です。

　凹版用印刷機

【上】 エッチングの作例。ペンを使って紙に直接スケッチしたような線には、エッチング特有の伸びやかさと温かみがあります。硬質の表現を得意とするエングレーヴィングでは、このような表現はできません。




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