多色刷り石版による小さな聖画。裏面は白紙です。
時刻は昼の12時前です。朝早くから家具作りの仕事をしていた父ヨセフが、おそらく昼食を摂るために、家に戻ってきました。幼子イエズスは編み物をする母に見守られ、猫と一緒にカートで遊んでいたのですが、父が帰って来たことに気付いて、「あっ。パパだ!」と駆け寄っています。ヨセフはわが子を抱きしめようと、両腕を大きく広げています。猫は遊び相手がいきなりいなくなりましたが、今度は毛糸玉で遊び始めました。昼食の準備が整った食卓の方に、毛糸玉が勢いよく転がり始めます。
食卓のところには椅子が三脚あって、背が高い椅子は幼児用です。ヨセフが愛情をこめて作ったのでしょう。おそらく小さなセーターを編んでいる母は、可愛い二人の子供であるイエズスと猫の様子を眼を細めて眺め、優しい微笑みを口許に浮かべています。
この聖画を注意して見れば、おもちゃのカートのハンドルが十字になっており、窓辺に薔薇があり、ママは青い服とマントを着ています。マリアは紫と深紅の糸でエルサレム神殿の垂れ幕を織ったとも伝えられていますが(ヤコブ原福音書 10:2, 12:1)、毛糸の色がこの故事を思い起こさせなくもありません。しかしながら聖画の作者はj時代を現代(20世紀前半)に設定しており、ヨセフの年齢も若く、金色の後光さえなければごく普通の家庭の風景と区別が付きません。聖家族を現代の風景の中に普通の家庭として描いているのは、「現代に生きる信仰」の表現でもあります。
本品は数十年前のフランスで制作されたものですが、あたかもたったいま刷り上がったかのように綺麗な保存状態です。破れ、強い折り目、変色等、特筆すべき問題はありません。紙は中性紙ですので、酸性紙に見られるような劣化は今後も起こりません。
上の写真に写っている額と聖画の合計は 9,600円で、ベルベット代、工賃、税を含みます。額はフランス、ラーソン・ジュール社の木製フレームを使用し、フレームの概寸は縦
17 cm、横 13 cm、厚さ 3.5 cm です。ご希望により他の種類の額、他の色のベルベットに変更承ります。