リュドヴィク・ペナン作 「人を愛する神の愛」「神を愛する人の愛」 ふたつの聖心のクルシフィクス 43.8 x 25.8 mm
突出部分を含むサイズ 縦 43.8 x 横 25.8 mm
フランス 1860 - 70年代
19世紀半ばのフランスで制作されたブロンズ製クルシフィクス。リヨンのメダイ彫刻家リュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) の作品です。クロスはシンプルなラテン十字で、透かし彫り等、手の込んだ装飾はありません。十字の先端が少し広がり、視覚的安定感を増しています。
コルプス(キリスト像)は打刻による浅浮き彫りで表されています。背景からの突出は数分の一ミリメートルに過ぎませんが、受難し給う救い主を眼前に見るかのような迫力に驚かされます。キリストの足下にはメダイユ彫刻家リュドヴィク・ペナンのサイン
(L. PENIN) があります。
イタリアのピザネッロ (Pisanello, Antonio di Puccio Pisano ou Antonio di Puccio da Cereto, c. 1395 - c. 1455) が創始したメダイユ芸術は、フランスで開花しました。ピザネッロ自身の作品もそうですが、19世紀半ばまでのメダイユ彫刻は、主題となる人物像を背景から大きく突出させることで三次元性を表現していました。しかるに19世紀半ば以降のフランスでは、物理的な突出に頼らずに三次元性を表現するメダイユ彫刻家が次々に現れました。本品のキリスト像も物理的な突出はほとんど無いにもかかわらず、生身の救い主を眼前に見るかのように優れた立体性を表現しており、フランスのメダイならではの芸術的水準に到達しています。
わが国で「メダイ」と呼ばれている信心具のメダイユは、フランスのものが特に優れたできばえを示すことが多くあります。本格的な美術品であるフランスのメダイユの芸術性と制作技術が、信心具の小さなメダイユにも影響を及ぼしていることが、それらの事例からもよくわかります。本品を制作したリュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) も本格的な芸術メダイユを制作する彫刻家のひとりであり、美術品水準のクルシフィクスとなっています。
裏面の縦木にはフランス語で「我はキリスト者なり」(Je suis chretien.) の言葉とリュドヴィク・ペナンの名前を打刻しています。交差部にはキリストの聖心と聖母の聖心が彫られています。上部に十字架を突き立てられ、茨の冠に取り巻かれたキリストの聖心は、罪びとを愛する激しい愛ゆえに炎を噴き上げて燃えています。悲しみの剣に刺し貫かれた聖母の聖心は、神による選びを表す白百合を咲かせ、神とキリストへの愛に燃えています。ふたつの聖心は重なり合い、十字架上で強烈な光輝を放っています。
本品は浅浮き彫りによる作品にも関わらず、きわめて良好な保存状態です。百数十年前、「悔悛のガリア」時代のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、細部まで良く保存されています。
本体価格 12,800円 販売終了 SOLD
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