高さ3センチメートル足らずと愛らしいサイズのクロワ・ジャネット。
十字架の表(おもて)面は縦部分の縁に波状の装飾がありますが、その他の点は表裏とも同一のデザインに基づき、同様の丁寧さで制作されています。中央交差部は菱形で、細粒を敷き詰めたかのような彫金細工を背景に、四弁の花が浮き出しています。末端に近く楕円形に広がった部分には、やはり細粒状の彫金を背景に簡略な唐草文が打ち出され、球状装飾を挟んで、先端部が細い棒状に突き出ています。本品を制作した工房の刻印が、吊り輪を通す孔の上部に見られます。
本品は中央交差部、楕円部分、及び球状部分の比率が全体に対して大きいために、可愛らしい印象を与える半面、十字架の幅が末端に向かって細くなる洗練されたデザインゆえに、優雅さをも兼ね備えています。
19世紀の金めっきは、金の板を熱で圧着する「ロールド・ゴールド・プレート」で、現代の「エレクトロプレート」よりもはるかに分厚く、耐久性に優れます。本品も実物は金色ですが、部分的にブロンズが露出し、シャンパン・ゴールドのように淡く上品な金色に十字架全体が被われています。
アンティークのクロワ・ジャネットは入手が難しく、いずれも稀少品です。本品は19世紀のフランスで製作された真正のアンティーク品で、重厚で美しい古色に、現代の複製品とは一線を画した趣があります。