「健康と美」 グスタフ・リヒター作「ルイーゼ王妃」に基づくスティール・エングレーヴィング
Health and Beauty
スティール・エングレーヴィング 1887年
原画の作者 グスタフ・リヒター (Gustav Karl Ludwig Richter, 1823 - 1884)
版の作者 イルマン・ブラザーズ (Illman Brothers, Philadelphia)
画面サイズ 189 x 125 mm
フィラデルフィアの版元、イルマン・ブラザーズ (Illman Brothers) が 1887年に製作したスティール・エングレーヴィング。背景の暗色とドレスの白のコントラストによって、健康な女性の輝くような美しさがいっそう際立っています。
この作品の原画は、グスタフ・リヒター (Gustav Karl Ludwig Richter, 1823-1884) による有名な作品で、美貌の王妃として知られたルイーゼ・ヴォン・プロイセン (Luise von Preussen, 1776 - 1810) を描いたものです。ルイーゼの名前は版画のどこにも記されていませんが、当時は誰もがこの絵のモデル「ルイーゼ王妃」を知っていました。
当時の絵葉書
このエングレーヴィングにおいて、ルイーゼ妃が羽織るマントの縁取り部分、及び背景の樹木、階段の一部はエッチングで製作されていますが、妃の顔と髪をはじめ、白いドレス、緋色のマントといった主要部分はエングレーヴィングで製作され、当時の写真をはるかに凌(しの)ぐ精緻さを実現しています。
下の写真は実物を40倍の面積に拡大したもので、右端の一目盛は1ミリメートルです。暗色の背景はエングレーヴィングで描かれ、溝の本数は1ミリメートルあたり5,
6本です。王妃の肌は明るいので、溝ではなくスティプル(点)で描かれています。点の数は1ミリメートル四方に40個ほどでしょうか。王妃の眼、鼻、口はそれぞれおよそ1ミリメートルのサイズで製作されていることがお分かりいただけます。
王妃の眼、鼻、口は、当然のことながら肉眼で見える大きさに製作されていますが、肌のスティプルや背景に刻まれた溝は、肉眼で識別できない方が多いことと思います。
19世紀の版画は中性紙に刷られているため、酸性紙におけるような劣化がありません。この作品はとくに良い保存状態です。特筆すべき問題は何もありません。
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