P. マテイ作 恩寵の器なる聖母 ふたりの天使によるアヴェ・マリア


額全体のサイズ 23 x 18 cm

フランス  1880年代



 雲の上、天上界から地上のナザレに向かい、受胎告知の挨拶を贈るふたりの天使。直接的には天使を彫刻のテーマとしながらも、表現されている内容を汲んで解釈すれば、むしろ恩寵の器なる聖母マリア、ならびに救い主イエズス・キリストの受難を表した作品となっています。





 天使たちは十字架を挟んで横に並び、「あなたに挨拶を贈ります」(Je vous salue.) とフランス語で書かれた帯を示しています。「あなたに挨拶を贈ります」(Je vous salue.) とは、ラテン語の間投詞「アウェ(アヴェ)」(AVE) をフランス語に訳したもので、天使ガブリエルによる受胎告知の冒頭にある言葉です。受胎告知の言葉はルカによる福音書 1章に記録されていますが、これを元に考案されたのが、ロザリオで唱えられる「天使祝詞」(アウェ・マリア、アヴェ・マリア)です。

 天使たちは清楚で可憐な少女のように、無垢の美しさを見せていますが、その表情には深い悲しみが宿ります。救われるべき罪びと、人間にとっては喜ばしい受胎告知ですが、キリストによる救世は、三位一体の第二のペルソナ、子なる神である救い主が十字架上で刑死するという最も考え難い方法で成し遂げられることになります。肉体と感覚器官を持たない離在知性 (INTELLECTUS SEPARATUS) である天使たちは、神を直観することによって神のご意志、救世の計画を既に知り、悲しんでいるのです。





 右(向かって左)の天使は、聖母の象徴である百合を右手に持ち、キリストの受難を象徴するの冠を持つ左手を胸に当てています。左(向かって右)の天使は、右腕を十字架に絡めています。右手に持っているのは三本の釘で、やはり受難の象徴です。左手にはホスティア(聖体)とカリス(聖杯)を持っています。ホスティアには十字が刻まれています。喜ばしい受胎を告知しつつも、神のひとり子が受けるべき苦しみと死を深く悲しむ天使の表情が、強い印象を与えます。





 天使の足下の雲に、彫刻家P. マテイによる署名があります。このような彫刻作品は鋳型に流し込んで作ることができず、彫刻家が一点一点を手作業で制作しています。カトリック信仰が復興した時代に、「悔悛のガリア」(GALLIA POENITENS) なるフランスが生み出した、優れた芸術作品といえましょう。

 彫刻は額にマウントする必要上、背面が平たく作られてはいますが、ほとんど丸彫りと言ってよいほどの立体性を持っています。ガラスの内側をクリーニングするために額を開封し、褪色したベルベットを貼り替えました。二体の天使は19世紀に製作されたままの状態で、百数十年のあいだ額に密閉されて守られ、コンディション上の問題は一切ありません。





本体価格 158,000円 販売終了 SOLD

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