ピレネー山中の黒い聖母 《ノートル=ダム・ド・ロカマドゥール》 手作業でカットしたクリスタル・ガラスのブレスレット 美しい古色のアンティーク品 有効長 19 cm フランス 1900 - 30年代


ブレスレットを閉じたときのサイズ 19 cm

全長 22 cm


メダイの直径 11.2 mm (突出部分を除く)

ビーズの直径 6 mm



 紫色の透明ガラスをファセット・カットし、ビーズとして用いたブレスレット。初聖体の少女が使用したもので、シャプレ(ロザリオ)を兼ねています。ブレスレット型シャプレ(ロザリオ)には一連のものと二連のものがありますが、本品は二連のタイプで、一枚のメダイと二十二個のビーズで構成されています。





 フランス本土の南西端にはピレネー山脈が聳えています。イベリア半島の付け根に当たるピレネー山脈はスペインとの境界になっており、地質学や動植物学のみならず、民族学やフォークロア、宗教学、言語学等の他分野に亙って興味深いフィールドを形成しています。たとえば世界最大の巡礼地ルルドはピレネー山中にありますし、ルルドよりもはるかに古い聖地としてはロカマドゥールが良く知られています。

 ロカマドゥール(Rocamadour)とは「聖アマドゥールの岩」という意味で、半ば伝説の聖人アマドゥール(St. Amadour)を開山の祖と伝えます。ロカマドゥールはサンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路に位置しています。ロカマドゥールには八つの教会乃至は礼拝堂、及び一か所の小修道院があって、「宗教都市ロカマドゥール」(仏 la Cité religieuse de Rocamadour)と呼ばれる聖地の複合体を形成し、ルルドを除けばフランス最大の聖母マリアの巡礼地となっています。ロカマドゥールへの巡礼は、十二世紀以来、中世を通じて盛んでしたが、1562年にプロテスタントによる破壊行為で大きな損害を蒙り、その後長らく下火となっていました。ロカマドゥールの聖地はフランス革命の際にも損害を蒙りましたが、十九世紀半ばに大規模な修復が行われて、昔日の繁栄を取り戻しました。




 本品メダイの一方の面には、ロカマドゥールの黒い聖母子像を浮き彫りにしています。聖母子はともに戴冠し、聖母子の一体性を強調する衣に包まれて盛装しています。聖母子に執り成しを求めるフランス語の祈りが、浮き彫りを取り囲んでいます。

  Notre-Damede Rocamadour, priez pour nous.  ロカマドゥールの聖母よ、我等のために祈り給え。


 本品の聖母子像は高さ八ミリメートル、顔の直径一ミリメートル未満という極小サイズにかかわらず、ロカマドゥールにある実物の聖母子像を正確に写しており、優れたミニアチュール彫刻となっています。聖母の姿はメダイ中央の天地いっぱいに表されていますが、これは聖母マリアが救い主の受胎を受け容れて、天と地をつなぐ恩寵の器となったことを表しています。幼子イエスは聖母の左ひざに乗っているため、体の位置が中央から向かって右に少しずれています。これは被昇天の聖母が天においてイエスの右の座にいることを表しています。





 メダイのもう一方の面には、ラ・シテ・ルリジューズ・ド・ロカマドゥール(仏 la Cité religieuse de Rocamadour 宗教都市ロカマドゥール)の全景が、巧みな浮き彫り技術により、直径
十一ミリメートルの円形空間に再現されています。

 本品メダイはいずれの面も突出部分の銀色のめっきが剥がれて、温かみのある真鍮の色が露出しています。本品は初聖体またはコミュニオン・ソラネル用のブレスレットですが、儀式の日だけではなく、その後も数年間にわたって愛用された品物であることがわかります。





 本品が数年後に使われなくなったのは、元々のサイズが短かく、少女の成長につれて手首周りが合わなくなったためです。すぐ上の写真は本品の元の状態で、有効長は十五センチメートル足らずでした。十五センチメートルの有効長は、昔の十二歳の少女にはちょうどよいサイズだったでしょうが、現代の大人の女性には短すぎるので、両端にチェーンを継ぎ足して十九センチメートルに延長しました。

 本品の現状の有効長は十九センチメートルと表示していますが、これよりも長くすることも短くすることも可能です。遠慮なくご相談ください。





 すぐ上の写真も、ブレスレットを延長していない状態で撮影しています。

 上で説明したように、本品メダイの突出部分は温かみのある真鍮の金色が露出して、歳月を経た作品のみが備える重厚な古色を獲得しています。その一方でガラス製ビーズは瑕(きず)が無く、きらきらと輝いています。ブレスレット両端にある二個のビーズには、金属製キャップが取り付けられています。


 本品のビーズには多数のファセット(仏 facettes 切子面)がカットされています。切り子のガラス製ビーズには型で成形したものもありますし、現代の品物であれば機械が自動でカットしますが、本品は百年近く前に制作されていますので、宝石職人の手作業により、手間を厭わず一つずつカットが行われています。

 シャプレ(ロザリオ)のビーズは鉛ガラス(クリスタル・ガラス)が多く使われます。クリスタル・ガラスは屈折率が大きく、キラキラとよく輝きます。カットも容易です。しかしその反面、クリスタル・ガラスの硬度は鉛の含有率によって異なりますが、鉛の含有量が増えるとモース硬度(引っかき硬度)が落ちて、瑕がつきやすいくなります。衝撃にも弱いので、カット・クリスタル製ビーズの表面には細かい瑕やフリーバイト(英 fleabites 微小な断口)が生じがちです。クリスタル・ガラスの表面が多数の小きずに覆われると透明度が落ち、せっかくのきらめきが失われます。

 しかるに本品のビーズはたいへん美しい状態です。これは本品が大切に着用されてきたことを示すとともに、使用されているクリスタル・ガラスに関しても加工のし易さより使い勝手の良さを優先し、比較的高硬度のガラスが選ばれていることを示しています。現在の状態から判断して、本品は今後も安心して長くご愛用いただけます。





 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。





 本品は小さくとも丁寧に制作されたアンティーク工芸品であり、大人の女性が身に着けるにふさわしい上質の出来栄えは、現代の量産品と一線を画します。古い品物にもかかわらず、保存状態は良好です。メダイの古色と突出部分の摩滅は、受け継がれる品物のみが備える歴史性の証であり、レプリカには真似ができない特性です。ガラス製ビーズはすべて揃っています。チェーンの強度も問題ありません。チェーンの長さはお買い上げ時に調整可能です。引き環のバネも弱っておらず、スムーズに開閉します。特筆すべき問題は何もありません。下記は本体価格です。





本体価格 14,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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