細密彫刻によるとても小さなメダイ 「ベルナデットとひとつになって、心の小さな巡礼を」 直径 8.5 mm


突出部分を除く直径 8.5 mm

フランス  1933年頃



 表(おもて)面に修道女姿のベルナデット・スビルー、裏面にルルドにおける聖母出現を刻んだメダイ。世界のどこにいてもルルドの聖母に心を奉献することを、敬虔なベルナデットの姿を通して促しています。

 ルルドの聖母を目撃した少女ベルナデット・スビルーは 1933年12月8日、無原罪の御宿りの祝日にローマで列聖されました。本品はベルナデットの列聖時、あるいは列聖からあまり時間が経たない時に、フランスで制作されたメダイです。直径 8.5ミリメートルという極小サイズながら、打刻ではなく鋳造で制作されており、彫刻技術及び鋳造技術の点でも目を瞠らせる作例です。





 表(おもて)面は、愛徳女子修道会の修道衣を着た聖ベルナデットの肖像を浮き彫りにしています。聖女に執り成しを願うフランス語の祈りが、周囲を取り巻くように刻まれています。

  Sainte Bernadette, priez pour nous.  聖ベルナデットよ、我らのために祈りたまえ。

 1858年にルルドで聖母を幻視したベルナデットは、1866年、フランス中部ヌヴェール(Nevers ブルゴーニュ地域圏ニエーヴル県)にある愛徳女子修道会 (Les Sœurs de la Charité de Nevers) の修道女となりました。この頃ルルドでは、出現した聖母が命じ給うたとおりに聖堂を建設する資金集めが計画されていました。ベルナデットはルルドでも写真撮影に応じていましたが、今度は修道女姿のベルナデットを撮影し、その写真の販売による収益を聖堂建設の資金に加えることになりました。撮影は 1866年2月4日、トゥールーズの写真家ジョセフ・プロヴォ (Joseph Provost, ? - 1889) により、ヌヴェールの修道院で行われました。このときは修道女姿の写真八枚と、修道衣の上からピレネーの民族衣装を着けた写真一枚が撮影されています。

 本品の浮き彫りはこのときに撮影された八枚目の写真を元に制作されたもので、ヌヴェールの愛徳女子修道会本部が使用を許可した数点のうちのひとつです。プロヴォが撮影した写真のベルナデットは両手を腰のあたりに下ろしていますが、プロヴォの写真を元にして、ベルナデットがロザリオを手にした聖画が多く刷られました。本品に浮き彫りにされたベルナデット像は、ロザリオを手にした聖画に基づいています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。突出部分に軽い磨滅が見られますが、高さ 2ミリメートルに満たないベルナデットの顔や手が、大型彫刻に劣らない正確さで再現されていることがわかります。





 裏面にはルルドにおける聖母出現の場面を浮き彫りにしています。ベルナデットはヴェールを被り、聖母の前に跪いて、両手を合わせています。聖母は両手を胸の前に合わせ、天を見上げて「われは無原罪の御宿りなり」と名乗っています。



(上) ルルドの聖母の手彩色カニヴェ 「ベルナデットとひとつになって、心の小さな巡礼を」 (シャルル・ルタイユ 図版番号 417) 106 x 71 mm フランス 1876 - 1890年頃 当店の商品です。


 ベルナデットの後ろにはガラス張りの蝋燭立てが見えます。これはルルドを訪れた巡礼者たちが、ノートル=ダム・ド・ルルドに奉献する蝋燭を立てるところです。ベルナデットが聖母を目撃したときのルルドは聖地でも何でもなく、聖母が出現した岩場には、当然のことながら蝋燭立てなどありませんでした。メダイユ彫刻家は聖母を幻視するベルナデットの後ろに蝋燭立てを彫ることで、メダイを持つ人の信仰をベルナデットに仮託し、世界のどこにいてもルルドの聖母に心を奉献するように、視覚を通して促しているのです。上に示したカニヴェは 1880年代頃にパリのシャルル・ルタイユが刷ったものですが、「ルルドの聖母への信心 ― ベルナデットとひとつになって、心の小さな巡礼を」(Dévotion à N-D de Lourdes, petit pèrelinage de cœur en union à Bernadette) と書かれていて、このメダイと同様の信心を促しています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。聖母とベルナデットの顔の高さは 1ミリメートルに満ちません。聖母は右腕に、ベルナデットは左腕に、ロザリオを掛けているのがわかります。ベルナデットの薄いヴェールが透けている様子も分かります。このような細密彫刻の技術は驚嘆に値します。本品は打刻ではなく鋳造によって制作されていますが、鋳造の技術にも目を見張らせるものがあります。顔やヴェール、ロザリオのような細部に鬆(す)が入らず、綺麗に型抜きできているのは、メダイユの国フランスが有する極めて優れた鋳造技術の賜物です。





 本品はおよそ八十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は良好です。商品写真は実物の面積を数十倍ないし数百倍に拡大しているため、突出部分の磨滅が判別できますが、肉眼で実物を見るとたいへん綺麗です。





本体価格 5,800円 販売終了 SOLD

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