ルルドの聖母の手彩色カニヴェ 「ベルナデットとひとつになって、心の小さな巡礼を」 (シャルル・ルタイユ 図版番号 417)

Dévotion à N-D de Lourdes, petit pèrelinage de cœur en union à Bernadette, Ch. Letaille, pl. 417


106 x 71 mm

フランス  1876 - 1890年頃



 19世紀後半のフランスで制作されたルルドの聖母の美麗なカニヴェ。小さめのサイズであるだけに、いっそう精緻な表現が為されています。





 カニヴェの表(おもて)面には、金色の枠で囲って、1858年3月25日、16回目に出現したルルドの聖母の姿が描かれています。

 当時14歳であったルルドの少女ベルナデットは、1858年3月2日、後に「ルルドの聖母」と呼ばれることになる女性が13回目に出現した際に、「行列を作ってここに赴き、礼拝堂を建てるように司祭たちに話しなさい」と命じられました。しかしベルナデットは司祭と司教に話を信じてもらうことができず、その女性の名前が分からなければどうすることもできないと言われます。翌日と翌々日の出現のとき、ベルナデットは女性に名前を尋ねますが、女性は微笑むだけで答えませんでした。

 1858年3月25日、不思議な女性が16回目に出現すると、ベルナデットは4回繰り返して名前を尋ねました。これまでは質問を3回しか繰り返していなかったのです。この日も質問を3回繰り返した時点では女性は微笑むだけで答えませんでしたが、ベルナデットが4回目に質問すると、微笑むのを止め、目を天に向け、下ろしていた両手を胸の前で組んで、「私は無原罪の御宿りです。」と答えました。





 カニヴェの聖母は目を天に向け、両手を胸の前で組んでいます。「私は無原罪の御宿りです」(Je suis l'Immaculée Conception.) という聖母の言葉は、聖母の頭上、アーチ状のバンドロールに、イール=ド=フランス方言(標準フランス語)で刻まれています。聖母はヴェールを被って戴冠しており、右腕にロザリオを掛けています。ルルドの聖母が戴冠したのは1876年7月3日です。


【下】 拡大写真 聖母の顔の実寸は、高さ約5ミリメートル。冠の星の直径は 0.3~0.5ミリメートル。星にはひとつひとつ金彩が施されています。




 聖母は、非常に細かいオー・フォルト(エッチング)で描かれています。天上の光に包まれた聖母を明るいトーンで描くために、インク溝はごく浅く細く、グラヴュール(エングレーヴィング)に引けを取らない精緻さを実現しています。実際、私はこのカニヴェを初めて見たとき、聖母の部分はグラヴュールだと思い、念のために高倍率のルーペで精査して、ようやくオー・フォルトであることに気付きました。

 聖母の足許にはが生えています。聖母は裸足ですが茨の棘に傷つくことなく立っています。創世記のエヴァと同じく女性でありながらも、原罪を受け継がずに母アンナの胎内に宿りたもうたマリアは、5世紀のラテン詩人セドゥーリウス (Coelius/Caelius Sedulius, 5th century) によって、棘のある茎の間から生え出でつつも傷を受けない薔薇の花にたとえられました。聖母の足下の薔薇に花が無いのは、聖母自身が薔薇の花であるからです。




【上】 拡大写真 百合の花の実寸は、直径 6~7ミリメートル。


 聖母の両側には白百合が配されています。神に愛され選ばれたマリアは、旧約聖書の恋の歌「雅歌」2:2において「わたしの恋人」と呼ばれ、百合の花に喩えられています。該当箇所を引用いたします。

  Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. (Nova Vulgata)  おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。 (新共同訳


画面下部には次の言葉がフランス語で書かれています。

  DEVOTION A N-D DE LOURDES  ルルドの聖母への崇敬

  Petit pèlerinage de cœur en union à Bernadette  ベルナデットとひとつになって、心の小さな巡礼を


 こなれた日本語に訳しにくいですが、「心の小さな巡礼」(petit ppèlerinage de cœur) とは、実際にルルドを訪れなくても、黙想によってルルドの聖母を崇敬し、祈ることを指しています。カニヴェの最下部、金色の枠の外には、次のように刻まれています。

  Paris, Ch. Letaille  Pl. 417  Éditeur Pontifical  パリ、シャルル・ルタイユ社  417  教皇庁御用達

 シャルル・ルタイユ社 (Charles Letaille Editeur, 1839 - 1873) はパリのサン・ジャック通50番にあったカトリック関連書籍の出版社で、数多くの聖画の版元でもありました。





 カニヴェの裏面は、右上に光に包まれた聖母、左下に聖母に名を訊ねるベルナデットを、いずれもオー・フォルト(エッチング)で描いています。白いヴェールを被ったベルナデットは、左手にろうそく、右手にロザリオを持ち、上方にある岩の窪みに現れた聖母に名前を訊ねています。


【下】 拡大写真 ベルナデットの顔の実寸は、高さ約4ミリメートル。




 画面の右下に、ベルナデットの次の言葉がフランス語で刻まれています。

  Madame, veuillez me dire qui vous êtes, et quel est votre Nom?  あなたはどなたですか。お名前は何とおっしゃるのですか。

 明るい光に包まれて岩の窪み、薔薇の繁みのなかに現れた聖母は長い衣とマントを着け、ヴェールを被ってロザリオを持ち、胸の前に手を合わせています。足は裸足です。





 画面左側にはベルナデットの問いに対する聖母の言葉がフランス語で刻まれています。


Je suis l'Immaculée Conception toute pure et sans tache aux yeux de Dieu.

Si tu veux t'approcher de moi, fuis le monde.

Si tu veux me plaire, domme-moi ton cœur par une confiance d'enfant.

Si tu veux m'imitier, garde l'Iinnocence.

.. 
わたしは神の目から見て汚れも無く罪も無い無原罪の御宿りです。

わたしに近づきたければ、世を避けなさい。

わたしを喜ばせたければ、子供のような信頼を以って心をわたしに預けなさい。

わたしに倣いたければ、純潔を守りなさい。


Je t'ai dit trois fois ce mot mysterieux, PÉNITENCE...

et tu le sais, quoique toute pure, j'ai fait pénitence...

parce que c'est la pénitence qui garde ou rend l'Innocence.

 
わたしは「ペニタンス」という言葉を三度繰り返しましょう。

あなたも知っているように、罪が無いわたしであっても、苦しみに耐えました。

苦しみによってこそ、人は罪無き状態に留まり、また罪無き者とされるからです。



 「ペニタンス」(PÉNITENCE) とはフランス語で「悔悛」のことですが、ここでは贖罪のための「償い」「苦行」、ひいては信仰を以って耐え忍ぶべき「苦しみ」のことを言っています。無原罪の聖母は悔悛すべき罪が無いにもかかわらず、信仰の故に苦しみと悲しみに耐え給いました。

 枠内の最下部には次の言葉がフランス語で刻まれています。

  Bernadette voyant et écoutant Marie  マリアの姿を見、声を聞くベルナデット

 裏面最下部に次の文字があります。

  Ch. Letaille à Paris  パリ、シャルル・ルタイユ


 このカニヴェは130年ないし140年前のものですが、それほどまでに古いものとは俄かに信じがたいほど綺麗な状態です。手彩色は当時のもので、たいへん丁寧に施されています。商品写真は実物の数十倍の面積に拡大していますが、色を置くべき所にはみ出ることなく彩色されているのがわかります。

 カニヴェ上辺のレース状部分の基部が、部分的に破断しています。私は強度の近視で、微細なものが肉眼でも見えますが、マクロレンズで拡大写真を撮影して初めてこの破断に気付きました。この破断による保存上、観賞上の影響はありません。





本体価格 23,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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