「いやなことをされても、イエスさまのようにゆるしてあげましょう」 パステルカラーのとても小さな聖画

GÉNÉREUX: Comme Jésus... Rendons le bien pour le mal.


聖画のサイズ 60 x 37 mm

商品写真に写っている額のサイズ  138 x 105 mm


フランス   20世紀中頃



 キリスト教において最も重要な徳目である「愛」あるいは「赦し」をテーマにし、幼い子供にも分かり易いやさしい言葉と絵で表した聖画。20世紀中頃にフランスで製作されたもので、縦 60ミリメートル、横 37ミリメートルという可愛らしいサイズです。

 崩れた積み木を前にして、幼稚園児くらいの子供がふたり立っています。向かって右側の子が積み木で大きな家を作っていたところ、左側の子がそれを崩してしまったようです。一生懸命に作った家を壊されて、右側の子はとても悲しいのですが、積み木を崩した子の肩を抱いて、頬に仲直りのキスをしています。左側の子が積み木を崩したのが故意であったかどうかはわかりませんが、幼い子供のことですから、たとえわざと崩したのだとしても、その時限りの衝動的ないたずらだったのでしょう。今は胸に手を当てて、心から「ごめんね」と謝っていて、その表情には赦してもらえた安心と喜びが溢れています。





 聖画の左下に「ゆるす心」(GÉNÉREUX) の文字があり、子供に分かり易いように、具体的な言葉で次のように説明されています。

  Comme Jésus... Rendons le bien pour le mal.  お友だちがいやなことをしても、しかえししてはいけません。イエスさまのようにゆるしてあげましょう。

 ふたりの後ろの壁には聖水入れが掛かっています。 十字架の下部にシャコガイを取り付けた聖水入れは、フランスでよく見かけるタイプですが、不思議なことにこの聖水入れの十字架からは、青々としたふたつの若芽が出ています。

 この十字架はエデンの園にある「生命の木」であり、そこから萌え出たふたつの若芽は、ふたりの子供の心に芽生えた「愛」と「赦し」を象徴します。「愛」と「赦し」が「生命の木」から芽吹いているわけは、「愛」と「赦し」こそが人に救いと生命を与えるものであるからです。



 人の善性を嘉(よみ)し給う神の力により、枯れ木が芽吹く等の奇瑞が起こるのは、世界各地の説話に広く分布する類型のひとつです。「民数記」17章23節では、アロンの杖が一夜にして芽吹き、花を咲かせ、アーモンドの実を結びます。「ヤコブ原福音書」9章1節では、少女マリアの浄配として選ばれた老人ヨセフの杖から鳩が出て、ヨセフの頭に留まります。わが国にも「花咲爺さん」の説話があります。


 ソルボンヌ大学の中世フランス文学者であるアルベール・ポーフィレ教授 (Albert Édouard Auguste Pauphilet, 1884 - 1948) は、「ゴーティエ・マップが作者に擬せられる聖杯探求物語研究」("Études sur la Queste del saint graal attribuée à Gautier Map", Paris, 1949) の付録として、パリのビブリオテーク・ナシオナル・ド・フランス(フランス国立図書館)に収蔵されている「フランス語写本 No. 1036」を収録しています。この写本の物語では、人祖アダムの子のひとりであるセトが、死期が迫った父アダムの求めにより、救いをもたらす聖油を貰うためにエデンの園を訪れ、ケルビムと対話します。ケルビムはセトに「生命の木」と思われる大木を見せますが、大木は枯れたようになっていました。

 「フランス語写本 No. 1036」においてセトが大木を目にする箇所の原テキストは、当ウェブサイトの泉に関する解説ページに示し、日本語訳を付しました。ただし私が訳したのはこの写本のごく一部で、物語は更に続きます。この後のあらすじは次の通りです。


 セトが楽園を訪れたのは、死期が迫った父に与える救いの聖油を手に入れるためであったが、ケルビムは聖油の代わりに、「生命の木」の種を三粒、セトに与えた。セトはこの種を持ち帰り、間もなく亡くなった父の口に含ませて埋葬した。三粒の種からは三本の木が生えて、モーセとダヴィデのもとで数々の奇蹟を惹き起こす。ダヴィデ王の時代、三本の木は互いに癒着して、一本の大木になる。

 ソロモンはこの聖なる木をエルサレム神殿の梁にしようと考えて製材したが、いざ使おうとすると長すぎたり短すぎたりしてうまくいかない。邪悪なユダヤ人たちはこの梁を川に渡して橋にし、罪深い人々の足で踏まれるようにした。

 あるときシバの女王がソロモンの知恵の言葉を聴きにエルサレムを訪れたが、道中の橋で聖なる梁に気付いた女王は、橋を使わず裸足になって川を渡った。女王は跪いて梁を礼拝し、「この木は尊き血によってふたたび緑になるであろう」と言った。

 梁はイエズスの受難のときまで同じ場所に横たわっていた。ユダヤ人たちはこの梁から十字架を作り、イエズスを磔(はりつけ)にした。


【下・参考画像】 ソロモンに会いに行く途中で、聖なる梁を礼拝するシバの女王。イタリア中部アレッツォ(Arezzo トスカナ州アレッツォ県)のサン・フランチェスコ聖堂にあるピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画連作「聖十字架の物語」("Le Storie della Vera Croce", 1452 - 66) より、「十字架の礼拝」。
Piero della Francesca, "Adorazione della Croce" (dettaglio), 1452 - 66, affresco, la cappella maggiore della basilica di San Francesco, Arezzo




 ポーフィレ教授が引用する上記の説話において、シバの女王は「救い主の尊き血により、十字架の材木がふたたび緑になるであろう」と言っています。これは「愛と赦しによって、生命の木がふたたび緑になるであろう」ということです。

 この小さな聖画において、後方の壁に架かっている十字架から萌え出ている緑の葉は、おそらくオリーヴです。十字架から芽生えたこの若芽は、ふたりの子供たちの間に交わされた「愛」と「赦し」によって、生命の木がふたたび緑になったことを表します。「生命の木」は人祖アダムとエヴァの罪によって枯死しましたが、救い主の愛と、それに倣う子供たちの愛によって、木に生命が戻ったのです。







 この聖画は通常の小聖画と比べておよそ四分の一の面積ですので、小さめの額を選び、臙脂色のベルベット張りマットを使用して額装いたしました。聖画の図柄に合わせて、子供が遊ぶ素朴な積み木のように、白木のまま塗装を施さない額を使用しています。額のサイズは縦 13.8センチメートル、横 10.5センチメートルです。ごく可愛らしいサイズですので、置く場所を選びません。この額は自立式です。壁掛け式金具が必要な場合はご用意いたしますので、遠慮なくお申し付けくださいませ。

 本品は数十年前の聖画ですので、多少の経年を感じさせますが、破れや折れ目等、大きな問題は無く、たいへん良好な保存状態です。中性紙に刷られていますので、酸性紙の場合のような変色や、紙質の劣化による崩壊は今後も起こりません。





9,800円 (聖画、額込み) 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




子供の日常生活と信仰をテーマにしたアンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに戻る

カニヴェ、イコン、その他の聖画 一覧表示インデックスに戻る


子供向けのアンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに移動する

キリスト教をテーマにしたアンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに移動する


カニヴェ、イコン、その他の聖画 商品種別表示インデックスに移動する


キリスト教関連品 商品種別表示インデックスに移動する



アンティークアナスタシア ウェブサイトのトップページに移動する




Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS