「マリアよ、地上の悲しみを忘れたまわざれ」 エティエンヌ・アザンブルによる無原罪の御宿り 初聖体記念の聖画


多色エリオグラヴュールをヴェラム紙に貼り付け

120 x 60 mm

フランス  1949年



 エリオグラヴュールによる多彩色の聖画を、硫酸紙あるいはヴェラム紙と思われる上質紙に貼り付けたもの。エリオグラヴュール héliogravure (英語では「ロトグラヴュア」 rotogravure)は、絵画の転写に適した高品位の印刷技術で、日本語で「グラビア印刷」と呼んでいるものにあたります。

 この聖画において、純白の衣と青のマントを身に着けた無原罪の御宿りなる聖母は、夜空を背景に下弦の月の上に立ち、右手を胸に当てて天を仰いでいます。聖母の頭を飾る光輪の前面には、あたかも王冠正面に嵌め込まれる宝石のように、美しい星がひときわ強い光を発して輝いています。

 聖画の画面内、左下の隅に "E. AZAMBRE" とあるのは、フランスの画家エティエンヌ・アザンブル (Étienne Azambre, 1859 - 1935) の署名です。エティエンヌ・アザンブルは宗教画と風俗画を得意とし、女性や子供を活き活きと描いた作品群で知られています。アザンブルによるいくつかの作品を、参考画像として下に示します。


(下) 「10人の乙女の譬え話」(部分) マタイによる福音書 25:1 - 13

 

(下左) 「ラ・サレットの聖母の出現」 L'Apparition de la Notre-Dame de la Salette  (下右) 「聖母の午睡」 Le Sommeil de la Vierge



 「エマオのキリスト」 当店の商品 (販売済)

 子供(部分)

(下) 「読書する母と子」 1890年頃 カンヴァスに油彩 63 x 53 センチメートル




 エリオグラヴュールによるこの聖画は手彩色の金の枠に縁取られ、その下に美しい字体でフランス語の祈りが書き記されています。内容は次の通りです。

  O Marie, n'oubliez pas les tristesses de cette terre.  マリアよ、地上の悲しみを忘れたまわざれ。

 この聖画が1940年代のものであることを考えるとき、"tristesses de cette terre"(トリステス・ド・セ・テール 「この地のさまざまな悲しみ」)という言葉は、この国、すなわち国土が戦場となり、どの家庭からも戦死者や戦災死者が出、戦災孤児が溢れるフランスで、第二次世界大戦を生き延びた人たちひとりひとりの胸を満たすさまざまな悲しみを、具体性を以って指し示していることが分かります。裏面には次の言葉が記されています。

  souvenir de ma communion sorennelle, Église de St-Just, 26 mai 1949, Christiane Douspy  コミュニオン・ソラネル記念 サン=ジュスト教会にて 1949年5月26日 クリスティアーヌ・ドゥスピ

 物心ついて以来の幼時期を戦時下のフランスで過ごし、戦後の混乱の中でようやく思春期を迎えようとする少女のコミュニオン・ソラネルを記念する聖画であることがわかります。少女クリスティアーヌの両親や兄弟たちは無事だったのでしょうか。少女はその後どのような人生を歩んだのでしょうか。


 本品は60年以上前に製作された真正のヴィンテージ品ですが、特筆すべき問題はありません。数箇所に小さな折れ跡がある程度で、十分に良好な保存状態です。ヴェラム紙、聖画の紙とも中性の良質紙ですので、酸性紙のような変色、崩壊は今後も起こりません。

 なお、別料金にて額装が可能です。下の写真に写っている額は現在在庫していませんので、他の額をご用意いたします。ベルベットはお好きな色をご指定いただけます。





聖画の価格 3,800円 (税込、額装別) 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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