ラ・サレットの聖母
Our Lady of La Salette





 1846年9月19日、フランス南東部ローヌ=アルプ地域圏イゼール県のコール (Corps) 近郊、ラ・サレット (La Salette) において、牛飼いの子供二人に対し、聖母マリアが出現しました。ラ・サレットは標高 1,000~2400メートルの高地にあり、現在でも人口わずか七十人ほどの小村ですが、ルルドに次ぐフランスの聖母マリア巡礼地となっています。

 ラ・サレットにおける聖母出現は、当時のフランスにおいて、人びとの耳目を集める非常に大きな事件でした。ヴィクトル・ユゴーは 1866年に出版された長編小説「海に働く人びと」("Les Travailleurs de la mer", Albert Lacroix et Cie, 1866)第三部第二編第二章の冒頭で、主人公ジリヤットがドゥーブル暗礁から回収した蒸気船デュランド号のエンジンを見るために、ガーンジー島の港に人々が集まる様子を形容して、「デュランド号の復活は、南フランスのラ・サレットで起きたのと同様の大騒ぎを島に惹き起こした。(広川訳)」(La résurrection de la Durande faisait dans l'île un bruit comparable à celui qu'a fait dans le midi de la France la Salette.)と書いています(註1)。


【聖母出現の経緯】

 1846年9月19日の午後3時頃、当時15歳であった牛飼いの少女メラニー・カルヴァ (Melanie Calvat, 1831 - 1904) と11歳の牛飼いの少年マクシマン・ジロー (Maximin Giraud, 1835 - 1875) が、サレットの山中にある谷間で、見慣れない服装をし、輝く光に包まれた貴婦人に出会いました。貴婦人は岩に腰掛け、顔を手で覆って泣いていました。

 ふたりが近づくと貴婦人は立ち上がり、涙を流しながらフランス語と現地の方言の両方を使って、メラニーとマクシマンに次のように話しました。

・人々が不信心と罪を悔い改めないならば恐ろしい神の裁きに遭うこと
・人々が悪の行いを改めるならば神が憐れみ給うと自分(貴婦人)が約束すること
・もしも人々が悔い改めないならば、自分は息子の腕が振り下ろされるのを止められないこと。息子の腕は強くて重く、自分には支えきれないということ。

 貴婦人はまたそれぞれの子供にも個別に秘密のメッセージを伝えたあと、谷にほど近い開けた場所から天に昇ってゆきました。

 子供たちから話を聞いた雇い主はラ・サレットの教区司祭に、教区司祭はコールの司祭にこの出来事を伝え、コールの司祭は 10月 4日までにグルノーブルの司教に事の次第を報告しました。

 信仰に熱心でなかったマクシマンの父が 11月8日に改心したのを皮切りに、多数の人々が改心を経験し、病気の奇跡的な治癒が続出して、ラ・サレットには巡礼者が集まるようになりました。最初の巡礼はメラニーとマクシマンも参加して 1846年11月24日に行われ、翌年の5月31日には約 5,000人の巡礼者、聖母出現1周年の9月19日には 50,000人以上の巡礼者が集まったといわれます。


【教会の反応】

 ラ・サレットにおける聖母マリア出現に関して、グルノーブル司教は 1847年11月、16人の専門家から成る委員会に詳細な報告書を提出し、8回に亙って議論が重ねられた結果、12人の委員の多数意見によって、この出来事は真正の聖母出現であるという結論に達しました。1848年8月、ローマ教皇ピウス9世 (Pius IX, 1792 - 1878) に報告書が提出され、教皇庁もその内容を承認しました。

 1852年5月25日、グルノーブル司教の決定によって聖母出現の場所に聖堂の建設が始まりました。聖堂は 1865年に完成し、1879年にはバシリカとされて今日に至っています。


【ラ・サレットの聖母の十字架】

 ラ・サレットに出現した聖母は首に鎖を掛けていて、鎖から十字架が下がっていました。十字架には金槌、くぎ抜き、髑髏が取り付けられていました。金槌はイエスを十字架に付けた人間の罪、くぎ抜きは罪と対極にある徳と信仰、髑髏は救いが必要な機会としての死を象徴していると考えられます。



註1 「ラ・デュランド」(la Durande)という船名は、騎士ローランの名剣「デュランダル」(Durandal)を連想させます。南フランスの中央山塊には、船と同じ名前(la Durande)の標高 1299メートルの山があります。



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