福者マルグリット=マリ・アラコック 慈しみと愛に満てるイエズスの聖心よ、われらを憐れみたまえ 多色刷り石版による小聖画 L. ブーレ 図版番号 94


中性紙のカルトンにクロモリトグラフィ

109 x 73 mm

フランス  1860 - 80年代



 19世紀後半のフランスでは、1864年9月18日、ピウス9世によりマルグリット=マリ・アラコック (Ste. Marguerite-Marie Alacoque, 1647 - 1690) が列福されたことをきっかけに、キリストの聖心にフランスを奉献する「悔悛のガリア」(Gallia poenitens) の運動が国民的規模で展開されました。本品は19世紀後半、マルグリット=マリの列福からあまり時間が経たない時代に制作された小聖画を額装したもので、木製額とベルベット張りマットを使用しています。





 表(おもて)面には、下部手前に祭壇を描き、上部がアーチになったルタブル(retable 祭壇画)形の画面に、クロモリトグラフィ(多色刷り石版画)によって聖画を描きます。19世紀の聖画ですので、現在とは違って祭壇とルタブルが接しており、司祭は信徒席に背を向けてミサを挙げる形式です。

 1674年のいずれかの月の第一金曜日、マルグリット=マリがパレ=ル=モニアルの聖母訪問会修道院付属礼拝堂の聖体顕示台に向かって跪いているときに、キリストが現れました。本品に描かれているのはこの時の光景で、出現したキリストは五つの傷口から太陽のようにまばゆい光を発し、愛の炎が噴き出る聖心を聖女に示しています。マルグリット=マリは両腕を広げてキリストを受け容れ、その魂はキリストの聖心という無限の愛のうちに沈潜しています。

 マルグリット=マリが列聖されるのは1920年5月13日のことです。本品は19世紀の聖画ですので、聖女にはまだ後光が付けられていません。





 ルタブル上部の外側には、聖女の名前であるマルグリット(マーガレット)の花々が描かれています。フランス語のマルグリット、ラテン語のマルガリータは古代の聖女アンティオキアの聖マルガリータの名前で、もともとはギリシア語でマルガリーテース・リトス、すなわち「真珠」を意味します。画面下部には18世紀風ロカイユ(縁が貝殻状になった装飾)の銘板が描かれ、次の祈りがラテン語で記されています。

  COR JESU BONITATE ET AMORE PLENUM, MISERERE NOBIS.  慈しみと愛に満てるイエズスの聖心よ、われらを憐れみたまえ。

 表(おもて)面の最下部、縁の余白部分には、パリの版元L. ブーレ (L. Boulet, Paris) の名前と図版番号 (série A, No. 94) が記されています。「デポゼ」(déposé 登録済)とあるのは、図柄の知的所有権が登録・保護されているという意味です。






 裏面には、イエズス・キリストの聖心に対する祈りがフランス語で記されています。内容は次の通りです。


    PRIÈRE AU SACRÉ CŒUR DE JÉSUS   イエズス・キリストの聖心に対する祈り
       
     Voilà donc, ô mon aimable Sauveur, quel a été l'exès de votre amour pour moi. O Jésus! vous m'avez préparé une table divine où vous avez voulu que votre corps fût ma nourriture et votre sang mon breuvage, afin de vous donner à moi tout entier.    愛する救い主よ。御身はいかに大きな愛を以って私を愛し給うたことでしょう。イエズスよ。わが神よ。御身は私のために神の食卓を用意して、御身の御体を私の食物とし、御身の御血を私の飲み物とし、御身のすべてを私に与えることを望み給いました。
     Qui a donc pu vous inspirer un tel exès d'amour, sinon la charité immense de votre Coeur divin!    かくまで大きな愛を御身が示し給うたのは、神なる御身の聖心の、測ることもできない愛ゆえに他なりません。
     O Coeur adorable de Jésus, fournaise ardente du saint amour, daignez admettre mon âme dans votre plaie sacreé.    イエズスの崇むべき聖心よ。燃え盛る聖なる愛よ。御身の聖なる御傷のうちに、わが魂を受け容れ給え。
     C'est dans cette école de charité que je veux apprendre à aimer de plus en plus un Dieu qui m'a donné des preuves si touchantes de son amour.    神は愛の御しるしをさまざまな形で与え給う。私の心はそれらの御しるしに震えます。私が神をますます愛せるようになるために、聖心をわが学びの場とさせ給え。
    Ainsi soit-il.   アーメン。
       
         
    Indulgence de 100 jours chaque fois qu'on récite la prière ci-dessus. Cette indulgence est applicable aux âmes du purgatoire. (Pie VII, 9 février, 1848)   上の祈りを唱える者には、そのたびごとに百日の免償を与える。この免償は煉獄の魂にも有効である。(ピウス7世 1848年2月9日)



 聖画に取り上げられるテーマと図像表現、裏面に書かれる祈りの内容は、多くの場合、その聖画が制作された時代に固有のものです。この聖画が制作された19世紀後半から20世紀初頭頃までは、フランスにおいて聖心への信心が盛んになった「悔悛のガリア」(Gallia poenitens) の時代です。

 表(おもて)面に描かれたマルグリット=マリ・アラコックが、パレ=ル=モニアルの聖母訪問会修道院長に宛てた1689年6月17日付第98書簡によると、聖女に出現したキリストは、当時のフランス国王ルイ14世を「わが聖心の長子」と呼び、王が聖心を崇敬するならば、「王はすべての敵に勝利し、驕り高ぶる覇者たちの頭をその足下へと打ち倒し、聖なる教会のすべての敵を征服するであろう。」と語りました。しかしながら王は啓示に従わず、その後のフランスは革命や内乱、戦争に引き裂かれます。

 マルグリット=マリの第98書簡は修道院の書庫に埋没し、その後長らく知られていませんでしたが、
1864年、教皇ピウス9世がマルグリット=マリを列福したことをきっかけに聖女の著作に関心が高まり、1867年になって初めて第98書簡が公開されました。この書簡が伝えるキリストの言葉を知り、その後の自国の歴史を振り返ったフランス人たちは、不信心と神への反逆を悔いて、「フランスをキリストの聖心に奉献する」信仰の運動を国民的規模で推し進め、モンマルトルをはじめとする各地に聖心教会(サクレ=クール教会)を建造したのでした。

 したがって聖心への祈りを勧めるこの聖画は、マルグリット=マリ列福後のフランスにおける聖心への信心の興隆を、端的に示す作例となっています。


 本品の聖画は百年以上前に制作された真正のアンティーク品ですが、保存状態はきわめて良好です。良質な中性紙に刷られていますので、特筆すべき変色等の問題はありません。また紙自体が劣化することは今後もありません。額のサイズは縦 20センチメートル、横 15センチメートルの自立式です。ご希望により、壁掛け用金具を無料で取り付けます。サンプル写真では赤のベルベットを使っていますが、ベルベットの色は無料で変更できます。ご注文時において写真の額が手に入らない場合は、同等クラスの額をご用意いたします。





本体価格 11,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。



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