青のシンボリズム
symbolique du bleu

 blue zircon, 4.43 cts, 9.8 x 7.3 mm 当店の商品


 「青」に限らず、あらゆる色に共通して言えることですが、それぞれの色が有する象徴性(象徴的機能)は決して自然本性的に備わったものではなく、全面的に文化に依存します。たとえば西ヨーロッパにおいて、「青」は最初、全く無意味な色であり、この色を身に着けたいと考える人もありませんでした。しかし十二世紀以降、青はステンドグラスやエマイユに使われるようになり、十三世紀には衣服の流行色となりました。したがってある色が有する象徴性を理解するには、文化史のコンテクストにおいてその色が果たした役割を知る必要があります。

 このページではキリスト教美術において「青」が有する二つの意味、すなわち「智」と「天上界」についてのみ、実例とともに簡略に示しました。西ヨーロッパ文明における「青」の歴史は、こちらのリンク先に詳しく論じました。


【智を象徴する青、愛を象徴する赤】

 伝統的キリスト教図像において、赤が愛の象徴であるのに対し、青は智の象徴です。下に示したのはライヒェナウ派による10世紀末のイザヤ書挿絵で、愛(赤)の光と智(青)の光が神から発出しています。




 セラフィム(熾天使)が赤、ケルビム(智天使)が青で表されるのも、この理由によります。下に示すのはラヴェンナ、サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂の身廊北壁にある「最後の審判」のモザイク画で、中央に座したキリストが、羊を右(向かって左)に、山羊を左に分けています(マタイ 25: 31ff)。キリストの右にいるのは愛を司るセラフで、赤で表されています。キリストの左にいるのは智を司るケルブで、青で表されています。





【天を象徴する青と白、地を象徴する緑と赤】

 天空の色である青は、無垢の白とともに天上界、天国を表します。これに対する地上界は赤または緑で表されます。

 下に示したのは初期ルネサンスの画家パオロ・ウッチェッロ (Paolo Uccello, 1397 - 1475) の作品で、竜を退治する聖ゲオルギウスを描いています。この作品においてもそうですが、聖ゲオルギウスの鎧は、多くの作例において天上界の色である青で描かれます。馬は白馬です。これに対して竜は地上界の色である緑あるいは赤で描かれます。


(下) Paolo Uccello, "San Giorgio e il drago", c. 1459, olio su tela, 90 x 52 cm, le Musée Jacquemart-André, Paris




 「青の歴史」の解説ページで論じたように、十四世紀になると、勇敢で忠実な「青の騎士」が騎士物語に登場します。ウッチェロが描く聖ゲオルギウスの鎧には、騎士物語に登場する「青の騎士」も影響しているでしょう。



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