イポリト=ジュール・ルフェーヴル作 勝利と豊穣の前に、法を示すアルヘンティナ アルゼンチン独立百周年記念 戦いと平和のメダイユ


直径 52.4 mm  厚さ 最大 4.5 mm  重量 82.1 g

フランス  1910年



 アルゼンチン独立百周年を記念する美麗なメダイユ。フランスのメダイユ彫刻家イポリト=ジュール・ルフェーヴル (Hippolyte-Jules Lefèbvre, 1863 - 1935) による 1910年の作品で、ブロンズに銀めっきを施しています。





 一方の面には、日の出の海岸を駆けるアマゾンのような女性像が浮き彫りで表され、上部にスペイン語で「レプブリカ・アルヘンティナ」(Republica Argentina アルゼンチン共和国)の文字、その下に「1810年5月25日」(25 de Mayo, 1810) の日付が書かれています。女性像はアルヘンティナ (la Argentina)、すなわちアルゼンチンを擬人化したもので、フリジア帽を被り、高く挙げた右手にちぎれた鎖を持ち、左わきには剣と新しい独立国の旗を抱えています。

 フリジア帽(gorro frigio ゴロ・フリヒオ)は解放奴隷が被る帽子で、隷属からの解放を象徴します。19世紀において、フリジア帽は多数の国で愛用された解放のシンボルでした。下の写真はアルフェ・デュボワによるメダイユで、向かって左の女性はフランス共和国を象徴するマリアンヌです。マリアンヌもフリジア帽を被っています。





 下の画像の左側で握手をする女性は、向かって左がアルヘンティナ、右がブラジルで、それぞれ旧宗主国スペイン、ポルトガルからの解放を表すフリジア帽を被っています。握手する手に握られた細い棒は、ラテン語で「ウィンディクタ」(VINDICTA) と呼ばれる儀礼上の杖です。主人がウィンディクタで触れた奴隷は解放されるゆえに、ウィンディクタも解放の象徴です。右側に示したカラーの図像は、アルゼンチンの国章です。握手する手が持つウィンディクタには、フリジア帽が懸かっています。





 メダイユのこの面において、アルヘンティナは剣を持ち、アマゾン(女戦士)のように猛々しい表情ですが、これは植民地の独立が戦いの末に勝ち取られたことを表します。1810年当時、アルゼンチンはスペインの植民地であり、スペイン国王の代理である副王によって統治されていました。しかしナポレオン戦争においてスペインがフランスに敗北し、国王が退位すると、スペイン国王の代理である副王も権威の正統性を主張する根拠を失い、当時「リオ・デ・ラ・プラタ副王領」(Virreinato del Río de la Plata) と呼ばれていた植民地では、独立の機運が高まります。





 このメダイユに書かれている日付、「1810年5月25日」(25 de Mayo, 1810) は、リオ・デ・ラ・プラタの第11代副王であったバルタサール・イダルゴ・デ・シスネロス (Baltasar Hidalgo de Cisneros, 1756 - 1829) が失脚した日です。「リオ・デ・ラ・プラタ副王領」は、現在のアルゼンチンの北半分から、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイに及びますが、「リオ・デ・ラ・プラタ副王領」の首都は、現アルゼンチンの首都ブエノスアイレスであったことから、アルゼンチンでは副王が失脚した 1810年5月25日を宗主国から独立した日と考え、毎年5月25日を独立記念日として祝っています。

 メダイユの右下に、イポリト=ジュール・ルフェーヴルのサイン (HIPPOLYTE LEFEBVRE) が刻まれています。イポリト=ジュール・ルフェーヴル (Hippolyte-Jules Lefebvre, 1863 - 1935) はフランスの彫刻家で、モンマルトルのサクレ・クール教会入り口にあるジャンヌ・ダルクルイ9世の騎馬像をはじめ、大型の丸彫り像から小型のメダイユまで、さまざまな作品で知られています。





 メダイユの裏面は典雅なアール・ヌーヴォー様式で、古代風の衣装を身に着けた三人の女性を浮き彫りにします。向かって右にひときわ大きく描かれた女性はアルヘンティナです。アルヘンティナはフリジア帽を被っていますが、もう一方の面に描かれた女戦士の姿とは打って変わって、その姿勢は優雅、その表情は穏やかです。フリジア帽には平和の象徴オリーヴが飾られています。このオリーヴは、女戦士の髪には飾られていませんでした。

 新国家アルゼンチンの独立と統一の過程では多くの血が流されましたが、全てが達成された今、誇り高いアルヘンティナの姿勢と表情は穏やかに落ち着いています。アルヘンティナの背もたれとなっている石材がわずかに右に傾斜しているせいで、アルヘンティナの姿勢はいっそう優雅に見えます。





 アルヘンティナの前に立つ女性は、手前が「ビクトリア」(la victoria スペイン語で「勝利」)、奥が「アブンダンシア」(la abundancia スペイン語で「豊穣」)です。ビクトリアはラウレル(el laurel 月桂樹)の冠を被り、オリーヴの小枝を持っています。ラウレルとオリーヴは、ともに勝利の象徴です。アブンダンシアは農作物があふれる籠を抱えています。この籠はコルヌ・コーピアエ(CORNU COPIAE ラテン語で「豊穣の角」)の形をしています。アブンダンシアの足下には葡萄が生(な)り、背後には小麦が実っています。また左下に垣間見える遠景は牧草地になっていて、柵の向こうではたくさんの牛が草を食んでいます。

 アルヘンティナは右手を本の上に置き、教え諭すようにふたりの女性を見ています。アルヘンティナの左手は、大石に刻まれた「レックス」(LEX ラテン語で「法」)の文字を指さしています。したがって、アルヘンティナが右手を置いている本は、法律の寓意であることが分かります。メダイユ裏面のこの浮き彫りによって、イポリト=ジュール・ルフェーヴルは、独立と統一のための戦いが終わり、平和な法治国家アルゼンチンが誕生したこと、法と秩序の下でこそアルゼンチンは勝利し続け、豊かな実りを得ることを表現しているのです。

 画面の下部には、1910年の年号とともに、スペイン語で「独立百周年」(PRIMER CENTENARIO DE LA INDEPENDENCIA) と記されています。画面の左下には彫刻家のサイン (HIPPOLYTE LEFEBVRE) が刻まれています。メダイユの縁には「ブロンズ」(BRONZE) の文字、及びブロンズ製を表す三角形のマークが刻印されています。





 本品は 1910年にフランスで鋳造された真正のアンティーク・メダイユですが、古い年代に関わらず、保存状態はきわめて良好です。アルヘンティナが女戦士として表された面の突出部分、すなわちフリジア帽の側頭部、左乳房、左手にめっきの剥がれがありますが、肉眼で見ると気になりません。写真では分かりませんが、メダイユの実物は金属光沢があり、アンティーク品ならではの美しいパティナ(古色)が全体を均一に被っています。

 ご希望により、別料金にてメダイユを額装いたします。額装料金は使用する額によって異なります。





メダイユの価格 58,000円 (税込・額装別)

電話 (078-855-2502) またはメールにてご注文くださいませ。




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