聖母マリアが原罪を受け継がずに母の胎内に宿ったとする「無原罪の御宿り」(IMMACULATA CONCEPTIO, l'Immaculee Conception) が、1854年12月8日、教皇ピウス9世により、カトリックの正式な教義として宣言されたことを記念して製作された彫刻。宗教をテーマにした19世紀の浮き彫りのなかでも、特に大きなサイズに属します。
聖母マリアは薔薇の花輪を頭に巻き、蛇を踏みつけて球体の上に立っています。蛇は苦しげに口を開け、舌をだらりと垂らして喘いでいます。薔薇は聖母の象徴であり、聖母の頭を飾る薔薇の花輪「ロサーリウム」(ROSARIUM) は、ロザリオの原型です。星が散りばめられた球体は、グローブス・クルーキゲルの球体と同じく、神のおわす天上界に対する地上の世界、この宇宙を表しています。
蛇は創世記3章においてエヴァを誘惑した悪魔の象徴であり、ひいては罪の象徴でもあります。したがって聖母が蛇を踏み付けているのは、「無原罪の御宿り」であるということ、すなわち聖母が悪魔の支配を受けず、罪をその身に帯びないということを表しています。
聖母の周囲をプッティあるいはケルビムが取り囲んでいます。足下のプッティが持つバンドロール(帯)には、「無原罪の御宿り」が教義宣言された日付、1854年12月8日
(8, Decembre, 1854)、及び彫刻家サルヴァトーレ・マルキ (S. Marchi) の名前が刻まれています。雲の下、彫刻の縁に近い部分には、インクによるサルヴァトーレ・マルキの署名
(Salvatore Marchi) があります。
本品は150年以上も前にフランスで製作された真正のアンティーク美術品ですが、古い年代にもかかわらず、百数十年のあいだ額に密閉されて、製作当時のままの状態で守られてきました。コンディション上の問題はいっさい無く、細部まで完全な状態で残っています。