幼子イエスと聖母マリアを良く守り、その功によりイエズスから薔薇の冠を受ける聖ヨセフの像。聖ヨセフは指物師であったので、背景に大工道具が置かれています。
薔薇は「愛」の象徴であるゆえに、幼子からヨセフに渡される薔薇は、ヨセフに対するイエスの愛を表しています。膝の上の幼子を左腕でしっかりと抱きとめる聖人の姿勢は、イエスへの愛を表しています。それゆえ、聖母子像が聖母子に通い合う愛を表すのと同様に、この作品は聖父子に通い合う愛を表していることがわかります。
聖ヨセフが右手に持つ百合は「貞潔」及び「神に選ばれた地位」を象徴するとともに、聖母マリアの象徴でもあります。したがってこの像はマリアとイエズスの守護者としての聖ヨセフを表していると見ることもできます。
キリスト教図像の伝統において、聖ヨセフは老人として描かれることが多いですが、この作品のヨセフは豊かな髪の若々しい姿で表されています。放縦を戒め貞潔を勧めるこの作品は、ヨセフが若々しいだけにいっそう強いメッセージ性を持っています。
この彫刻は大型かつ立体的で、たいへん見ごたえのある立派な作品です。ガラスの内側をクリーンングするために開封しましたが、百数十年のあいだ額に密閉されていたために、彫られた当時のままの完璧な保存状態です。額縁はオリジナルで、木製です。経年により乾燥・収縮して亀裂を生じていますが、実用上の問題はありません。