パドヴァの聖アントニウス 幸運のクープ・パピエ フランス製アンティーク 104 x 11 mm
クープ・パピエ全体の長さ 104 mm 刃身の最大幅 11 mm
聖人像の高さ 31 mm 聖人像の最大幅 11 mm 聖人像の最大の厚さ 7 mm
フランス 19世紀後半から20世紀初頭
四つ葉のクローヴァを刀身にあしらい、幸運をもたらしてくれそうなクープ・パピエ(紙切りナイフ)。新生活を祝福する品と思われます。いまから百年以上前のフランスで作られた品物で、小さな聖人像をそのまま柄とし、像の足下に刃を取り付けています。材質はブロンズに銀めっきを施しています。
像に表された聖人はパドヴァの聖アントニウス (St. Antoine de Padoue, 1195 - 1231) です。パドヴァの聖アントニウスはアッシジの聖フランチェスコ (St. François d'Assise, 1182 - 1226) の弟子で、たいへん優しい心の持ち主でした。
本品に彫られた聖アントニウスは、粗い羊毛で織った茶色の修道服を着ています。修道服のベルトとなる白い縄には三つの結び目があり、「清貧、貞潔、服従」を表しています。腰からは大きなロザリオも下がっています。
聖人の左手には祈祷書が広げられ、その上に幼子イエスが現れています。これはアントニウスが祈りの際に幼子イエスを幻視したことを表しています。聖人は幼子イエスを愛しげに抱き、幼子も聖人を慕うように頬を寄せています。
聖人は右腕に白百合を抱えています。薫り高い白百合が「聖徳」と「純潔」の象徴であることはよく知られていますが、百合は「神に選ばれた身分」と「すべてを神に委ねる信仰」の象徴でもあります。
クレルヴォーの聖ベルナールは、「雅歌」 2章 1 - 2節の「百合」がマリアを表すと考えました。ノヴァ・ヴルガタと新共同訳により、該当箇所を引用します。1節は乙女の歌、2節は若者の歌です。
Ego flos campi et lilium convallium. |
わたしはシャロンのばら、 野のゆり。 |
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Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. |
おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。 |
聖母マリアをはじめとする聖人たちは、図像においてしばしば百合と共に表されます。これは、上に引用した「雅歌」におけるように、百合が「神に選ばれた身分」を象徴するからです。
また「マタイによる福音書」 6章 25節から 34節、及び「ルカによる福音書」 12章 22節から 34節に記録されたたとえ話において、イエスは弟子たちに神の摂理への信頼を説き、百合を引き合いに出しておられます。「ルカによる福音書」
12章 27節には次のように記されています。
Nestle-Aland 26. Auflage | NOVA VULGATA | 新共同訳 | ||||
27 | κατανοήσατε τὰ κρίνα πῶς αὐξάνει: οὐ κοπιᾷ οὐδὲ νήθει: λέγω δὲ ὑμῖν, οὐδὲ Σολομὼν ἐν πάσῃ τῇ δόξῃ αὐτοῦ περιεβάλετο ὡς ἓν τούτων. | Considerate lilia quomodo crescunt: non laborant neque nent; dico autem vobis: Nec Salomon in omni gloria sua vestiebatur sicut unum ex istis. | 野原の花がどのように育つかを考えてみなさい。働きもせず紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。 |
新共同訳が「野原の花」と訳している語は、ギリシア語原文では「クリナ」(κρίνα)、ノヴァ・ヴルガタでは「リーリア」(LILIA) で、「百合」を指しています。
アッシジの聖フランチェスコは、「小さき兄弟たち」が他の多くの修道会のように労働によらず、喜捨のみによって生きることを求めました。世俗の常識で考えれば、これは日々の糧を他人の意思に完全に委ねるということであり、生活基盤としてこれほど不安定なものは無いでしょう。しかしながら「小さき兄弟たち」は、イエスが使徒たちを宣教に遣わされたときと同様に(マタイ
10: 5 - 15、マルコ 6: 6 - 13、ルカ 9: 1 - 6)、神の摂理を信じ、無一文で旅をして福音を宣べ伝えたのでした。
本品はクープ・パピエ(coupe-papier 紙切りナイフ)として作られています。試しに本品を使用し、厚めの紙を実際に切ってみましたが、綺麗に切れて、十分に実用可能です。短い刃が付いて、クリップを兼用しています。
四つ葉のクローヴァを模(かたど)った金具が、短い刃に鑞付け(ろうづけ 溶接)されています。わが国でも良く知られているように、「四つ葉のクローヴァ」は幸運、幸福の印です。本品はフランスにあったものですが、ヨーロッパの人々はパドヴァの聖アントニウスをしばしば「結婚の守護聖人」と考えています。本品もこれから結婚する若者への贈り物であったのかもしれません。
本品は紙切りナイフの形を取ることで、これまでの人生の悪い要素を切り離し、これから始まる新しい生活を象徴しています。幼子イエスと聖アントニウスの優しいまなざしが、新生活に乗り出す人を見守っています。
本品は百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、たいへん良好な保存状態です。聖像の突出部分はめっきがはがれている程度で、磨滅はまったく見られません。刃の数か所に曲がりを修正した跡がありますが、紙はまっすぐ綺麗に切れます。特筆すべき問題は何もありません。
本体価格 11,800円 販売終了 SOLD
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