一方の面に聖心を示すイエズス・キリスト、もう一方の面に幼子イエズスを腕に抱く聖心の聖母を、それぞれ浮き彫りにしたブロンズ製の古いメダイ。19世紀後半にフランスまたはオランダで制作されたもので、オランダ南部、リンブルフ州の町シッタード
(Sittard) にあるウルスラ会の修道女たちにより、イスダンの聖心の聖母会につながる会として、1866年に設立された信心会のメダイと思われます。シッタードには 1868年までにイスダンと同じ聖母像が置かれましたが、巡礼者が増えたために、ネオ・ゴシック式の新しい聖堂が建てられて
1879年に祝別され、1883年には教皇レオ8世によってオランダで最初の小バシリカとされました。
メダイの一方の面にはイエズス・キリストの姿が浅浮き彫りで表されています。イエズスは左手で胸を指さして愛に燃える聖心を示し、掌を前に向けて右手を斜め下に降ろし、罪びとを招いています。イエズスの周囲にはオランダ語で次の言葉が記されています。
Heilig Hart van Jesus, ontferm u onzer. イエズスの聖心よ、我らを憐れみたまえ。
もう一方の面には幼子イエズスを抱く聖母の姿が浅浮き彫りで表されています。聖母は慈愛あふれる仕草で幼子のほうに顔を寄せていますが、母子は互いに見つめ合わずにむしろ視線を前に向けて、聖母子を見る者に語りかけ、睦み合う愛のなかへと招いています。聖母は救いに至る道、すなわちイエズスを胸の前に抱きあげて人々に示しています。聖母子の足下の雲は、ふたりが天上なる栄光の座にいることを表します。聖母はイエズスとともに戴冠し、イエズスの右にいます。聖母の周囲にはオランダ語で次の言葉が書かれています。
Onze Lieve Vrouw van het Heilig Hart, bid voor ons. 聖心の聖母よ、我らのために祈りたまえ。
本品は 100年以上前の真正のアンティーク品であるにもかかわらず、浅浮き彫りの細部も鮮明で、たいへん良好なコンディションです。聖心の聖母のメダイはなかなか目にする機会がありませんが、オランダ語のものはとりわけ稀少です。